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国王は憤っていた。民からの信頼は離れてゆき、魔王へ忠誠を誓うものまで出始めたからだ。このままでは魔王に国を乗っ取られると思った。
「新たな勇者はまだ見つからんのか!」
「それが、まだのようで、募集はかけているんですけど……」
「早くしなければ民衆の心が離れてゆく。騎士団長でも呼んで戦わせにいけ!」
「はい。」
魔王の人気が日に日に増すに連れて国王への不満が増えていった。魔王側の情報統制の結果でもあるのだが、実際に国王は私服を肥やし、民には貧しい暮らしをさせ、自分は豪華な金の杯で酒を呑む 。自分の城の警備は強いものを侍らせているのに勇者として……戦いには行かせない。誰しもが暗君だと囁き始めた。やむを得ないと思った国王はついに騎士団長を呼び出す。
「いいか!必ず魔王を仕留めるのだ!」
「…………」
「どうした?返事は?」
ザクッ。
「?!?!な、ぜ……」
騎士団長は国王を殺した。理由はひとつだ。魔王討伐を何度も何度も進言したのに無視して自分の城の警備に当たれなんて言われてずっと我慢してきた。だが、先日弟が死んだ。魔王に殺られたのでは無い。城に使える弟は、うっかり国王のお気に入りの瑠璃硝子の椀を割ってしまったからだ。国王によって殺されていた。それを知ったのが、今日。騎士団長は我慢ならなかった。
「これよりこの国は魔王の傘下に入る!皆!魔王陛下に尽くすように!」
「な、何を言って?!」
「そうだ、魔王なんかに……」
城はざわついた。何故、魔王の傘下に入ろうと言うのか。その理由はポーションだった。1度だけ蘇る事ができるポーションがあるそうだと聞いたからだ。魔王は国王を殺して国を渡せば与えてやると言った。だからそれを信じるしか無かった。両親の他界後、たった1人の家族を失うわけにはいかなかった。城に魔王が入城する。
「ご苦労。騎士団長レーベ。」
「あ、あの、本当に、本当に弟は?!」
「ああ、エメ、例の新作は完成しているな?」
「はい!」
「?」
「エメが作った死者を蘇らせる薬だ。受けとるといい。」
そうしてレーベはその薬を持って弟の死体へと走っていった。
「そなたの力は素晴らしいな。エメ。死者すら蘇らせるとは。」
「…………本当は、仲間を蘇がえらせたくて作ったのですが、既に灰になったあとでして……相叶いませんでした。」
苦しげな声でそう言ったエメの頬を涙が伝う。
「…………泣くな。そなたは最善を尽くした。そして、今助かる命がある。」
そう言ってルアは優しくエメの頬を伝う涙を拭った。
「あ、ありがとうございます。」
ん?あれ?ポーションいつ飲んだっけ?忙しくて忘れていた。まさか……
「エメ、ポーション、切れているぞ。飲んでおけよ。」
「え?は、はい!?」
ポーション飲んでないのに魔王が優しい?!
え?え?なんで?!
エメはプチパニックになった。




