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だるまの目  作者: zeroread
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知らない駅

列車は海に架かる鉄橋を走っていた。

本土から抜けたようで、ここは瀬戸内海だろうか?

3~40mほどの高さの岩山が100メートル間隔で海面から点々と突き出し、砂漠色の岩肌にはカモメが2、3匹止まっている。

波が岩山に当たっても飛沫が上がることはなく、風に揺れるだけの大きな水たまりのような海だった。

私は車窓から上半身を乗り出してみた。

列車の側面を沿うように流れる風は顔にかかる鬱陶しい髪を払って、後方へさらっていく。

海藻を天日干ししたような匂いと、海面の照り返しに目をくらませて、季節が夏であることを実感した。

海上に何キロも渡る鉄橋は不気味なくらい見通しがいい。

私が先頭車両に乗ったせいもあるが、空と海の境界線はなく、一面の青さと影の少なさが余計に視界を開けさせた。


この開けた見通しならば魚の群れや、運が良ければイルカの背びれくらいは見付けられるかもしれないと、車窓から更に身を乗り出してみれば、途端に足がすくんだ。

私は高所恐怖症なのだ。

鉄橋の高さは30メートルくらいありそうだ。

一車線しかない簡素な鉄橋は、その細く錆びた骨組みの上で列車を滑らせている。なんとも頼りない。

私は車窓から好奇心と体を引っ込めて座席に身を押し込めた。


全く関係ないのだが私はクロスシートを採用している列車が好きだ。個室感が味わえるからだ。私が通勤で使うほとんどの列車はロングシート採用で体面座席なのだ。知らない人が乗り降りする公共な乗り物にいい加減慣れなければとは思っているのだが、いざ乗客と対面すると窓の外が見たいだけなのに目のやり場に困るのが正直なところだ。

ほとんどの乗客が移動中にスマホを見てるから体面座席だとしても変に視線が合ってしまうこともないのだが、乗り物酔いが著しい私は下を向いてのスマホ操作が出来ない。なので列車の中では窓の外を見るか、狸寝入りをするしかない。

それに比べて私が身を引っ込めた座席はクロスシートで恐怖心を隠すのにはこの個室感がしっくりくる。





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