表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/42

第三十七話 死神でもなんでも好きに呼んだらいいんですっ!!

「リゼっ!!来いっ!!」

「ヴィアっ!!」

ナンエゴの姫と若の熱い抱擁。…ベッドシーンといい私は毎度何を見せられているのだろうか。

思わず遠い目をしたくなるのだけど、仕方ない事だと思う。

でもまぁ、リゼ様が幸せならこれでもいいかな?

と言う訳でフローラです。

外郭の若は色々あったと思うけど私達は到着してから数日しか経過していないのです。

「フローラ。どうした?」

アレク様に顔を覗かれて、私はアレク様の麗しいお顔が近くにある事に歓喜しつつも冷静な笑顔で「何でもないですよ」と答えた。

そんな中、今まで沈黙を保っていたウバ様が声を上げた。

「リゼ…。説明をしろ」

そう言いながらもウバ様の視線は真っ直ぐに私に向いていた。

二人に何を言っても今は無駄と言う事を理解しているんだろう。

かと言って私が説明するのも可笑しい気がするけどね。

横をチラッと見ると二人は抱き付いたまま、幸せを満喫している。

…あー、説明してあげようかな。

そう思って口を開きかけたけれど、若がそれを制した。

「説明なら俺がする。座ってもいいだろうか?」

ウバ様は頷き、椅子へ促された。勿論私達も座った。

奥のお誕生日席にリゼ様が座り、そこから時計回りにアレク様、私、ウーゾ、若、トカイ、白藤ちゃん、ウバ様が座っている。

リゼの真正面に若が来る形だ。

「まず書面で伝えたとは思うが、そちらの竜の姫であるリゼを嫁にしたい」

「ヴィア…」

「だが俺もリゼもそれぞれ国を治める立場にある。婚姻関係は同時に二つの国を結びつけることになる。だが俺は…恐らくリゼも国を見捨てる事は出来ないだろう。だから、交渉をしに来たんだ」

「……私と結婚する為に?交渉を…?」

リゼ様が感極まって目を潤ませる。それに若は柔らかく微笑んだ。

「ここからは交渉の詳細となるんだが、トカイ」

「かしこまりました」

トカイが懐から書類を取り出した。何時も思うんだけど秘書の方々の懐ってどうなってんだろう?書類が折れないのはなんで?

ついまじまじと見てしまったらトカイが不愉快そうな目をこちらに見せた。

何よ、その目は。こっちだって不愉快全開で返してやろうか。

にーっこり。

私の全開の笑みを見て顔を青くしてそっぽ向くとは…許せん。

それはそれとして書類はリゼ様の手へと渡り、リゼ様はそれにざっと目を通してウバ様へと回した。

ウバ様はそれに目を通し、にやりと笑う。

「へぇ。面白そうじゃないですか」

「ウバは賛成?」

「勿論。ですが、多少の手直しは必要ですね」

「まぁ、それはこれから話し合えばどうにでもなるでしょう」

二人の返答に私と白藤ちゃんは納得していたが、男達は皆揃って目を点にして驚いている。

「…リゼ。一つ確認していいか?」

「え?うん、勿論っ。なぁに、ヴィア」

「そっちのウバって奴は、その、リゼの婚約者とかでは?」

「え?ウバがっ!?ないない、あり得ない。こんなチャラい男死んでもごめんだよ」

「チャラ、え?」

「それはこっちのセリフです。ヴィアを嫁になんて、こんなじゃじゃ馬絶対に無理ですよ」

「は?」

おおー。若の目が増々点に。

私と白藤ちゃんは視線を合せて噴き出してしまった。

笑い出した私達に若は増々首を傾げる。ウーゾとトカイも解っていない様子だ。

それを憐れに思ったのか、アレク様の前に置かれていた金魚鉢からサルが顔を出し説明をする。

「えーっと、聞いとけ、男共。カコがヴィアに用いたあの道具はな。【被せた対象を強制的に眠りにつかせ夢を見させ、更にその夢の内容を操作する事が出来る】だ。これは前に話したな?」

愛しいアレク様を含め男達が深く頷く。

「それをカコはヴィアに被せて、ヴィアは【夢】を見た。そしてカコはその【ヴィアが見た夢】を操作した。即ち、ヴィアが夢で見ていたリゼやそこにいる男はあくまでもヴィアが感じた人物像、な訳だ」

「だ、だが、内容を操作する事が出来るんだろう?なら死神が変えた可能性も」

「それはない。この道具はあくまでも夢の内容を操作する物。夢に出てくる人物の性格や性別を操作する事は出来ない」

「死神の存在はどうなる?俺はこいつを知らなかった。なのにこいつは俺の夢の中で自由気ままに動いてたじゃないか」

「今自分で言ってるじゃないか」

「どう言う事だ?」

「カコは公爵令嬢としてではなく、死神として動いていただろう?」

「…それはつまり、たまに現れる【謎な存在】として俺の脳内にいた誰かの姿を借りた、ってことか?」

「そう言う事だな」

「死神…、てめぇ、手の込んだ事しやがってっ」

あら睨まれてるわ?

へっ、怖くもなんともないわっ!

ふんっ、と鼻で笑ってやると、若の額にぴきっと血管が浮いた。

「……フローラ。気のせいか?なんだかヴィア殿と随分仲良くなったように見えるんだが…」

「えっ!?そんなことないですよっ!!私はアレク様一筋ですっ!!」

「そう、か」

「えっ!?えっ!?アレク様っ!?」

なんでっ!?なんでそんな悲しそうな顔してるのっ!?

今すぐアレク様の隣に行かなければっ!

しゅばっと光の速さで席を立ってアレク様の側に行き、その横に正座する。

途中、何人か弾き飛ばした気もするけど、気にならない。

そっとアレク様の足に手を伸ばすと、その手をガシッと握られて持ちあげられて、アレク様のお膝の上に着地した。

「うん。これでいい」

ちゅっと額にキスされ、アレク様の顔を覗くと幸せそうに微笑んでいる。

私、今世において一片の悔いなし…。

うぐぅっ…。

「アレク様、好きぃぃ…」

すりすりと胸に擦り付いて更に抱き付く。

「それだけ好きだと言われると男冥利に尽きますねぇ」

ウバ様が何か言ってる気がする。うん。聞こえない。

「フローラ様、幸せそうで何よりです。確か白藤様も王林様と和解したとか聞きましたが」

「ですのっ。色々行き違いがあっただけですのっ」

「まぁ、それは良かった。ですが、白藤様は何故フローラ様とご一緒に?」

「お姉様を見習う為ですのっ!」

「「「「「それは止めとけ」」」」」

「…デジャヴ、ですの?」

前回もつい私は自分から突っ込みを入れてしまったけれど。

私を見習っても立派な淑女にはなれないと思うんです。

とは言え、流石にその通りだとは言え。

「サルに言われるのはムカつくんだけど。水、お湯に変えて良い?」

「良い訳ねーだろっ!!」

いやでもこれは実行すべきでしょう。私にもプライドっちゅーもんが。

現魔法で熱湯の入った薬缶を作りだして…。

なんてしようとしたけれど。

「…あー、もう、兎に角話を元に戻す。リゼ。お前は俺に嫁に来るって事でいいんだよな?」

「勿論よっ。私はヴィアの事を愛しているんだから」

「リゼ…。ありがとう。だがそうなるとここ、中央都市のトップをどうするかと言う事になる。俺はさっきの渡した書面の通りリゼが続けてトップに立ち管理をするのがいいと思うんだが」

「それなんだけど。私は竜の姫と言われてはいるけれど、実質この都市を統治している訳ではないのよ」

「どう言う事だ?」

「私はお飾りってこと。私がいなくなればまた新しい竜の姫が作られる。事実上のこの都市を取りしきっているのはさっきいた爺共。賢竜院けんりゅういんの連中なのよ」

そう言えばリゼ様の手紙に度々書かれていたなぁ。賢竜院の爺共が邪魔だしセクハラしてくるしマジうぜぇって。

「正直に言えば中央都市の人間の大多数が外郭都市アルクフォールとの外交を希望しています」

「そうなのか?」

「そりゃそうでしょ。こんな国、遊び場も何もない上に、規則規則規則規則っ、息が詰まるっ」

「う、ウバ殿?」

「リゼが外郭へお忍びで遊びに行ったって話を聞いて、私も直ぐに遊びに行きましたね。俺が外交の役職に付いている理由は他国へ遊びに行けるって特典があるからですよ。じゃなきゃなんであんな頭のかったい爺共の相手をしなければならないんですか」

「いや、ですか、と俺に言われてもな…」

きっと若のウバ様に対する印象は今高速で更新されている事でしょう。ウバ様の事を多少聞いていた私ですらちょっと驚いている。

「どうにかして、この中央都市ディリンカを解放された都市にしたいのです。その為にそちらのトカイとやりとりをさせて頂いていたのですが」

「はっ!?」

若の視線が一気にトカイへと向けられた。

「だから、言ったではありませんか。【ディリンカに先手をうちませんか?】と」

「だって、お前、それは…」

「ディリンカの竜の姫と若が惹かれ合っていたのは知っていました。だからこそディリンカに先手をうって、賢竜院にばれないように、そして竜の姫が若に求婚する前に求婚したらどうだと」

「……」

あ、完全にポカーンだ。

だよねぇ。ウーゾもそうだけどあの言葉だけでは、増して罪人の子孫として産まれ育って来た身としては求婚とイコールにはならない言葉だよねぇ。

これもまた若の夢では違う言葉として捕らえられていたし、ウーゾも若の思想に引っ張られていた感はあるけれど、実際は和平の意味だった訳だ。

「トカイ…」

「はい。なんでしょう、若」

「後で、ゆーっくりと話をするか」

「あぁ、はい。勿論です」

トカイさん。それ、そんなにニッコリ笑って答えて平気?

ウーゾは青い顔でガタガタしてるけど。絶対気付いてないよね?若から後から雷が何発も落ちるであろうってこと。

「…もういい。それで?賢竜院をどうするんだ?追い出すのか?」

「それが手っ取り早いと私は思ってるんだけど、ウバが」

「その方法だと色々面倒なんですよ。なんだかんだあの人達は竜の祝福持ちなんで。強いんです。発言力もね。古い人間ってのは言葉を巧みに操りますから。年の功って奴です」

「なるほど。それで?」

「色々考えたんですけどね。逆に言えばその祝福の力がなければただの爺連合ってことな訳で」

「あぁ、理解した。試練の書をクリアさせる訳だな?」

「ご名答。しっかりと試練の書をこなし、本来の姿を取り戻して頂いて、ご隠居願おうかなーって」

…結構腹黒い事考えるのね、ウバ様。

「だが試練は自分の手で行わなければならないだろ?そこの問題は?」

「そんなの簡単に情報操作で出来ますよ。私の得意とする所です」

「なら、その後は?結局この国は誰が統治するんだ?」

「そんなの当然貴方ですよ」

「んっ?」

「外郭都市アルクフォールを一人でそこまで維持している貴方なら出来るでしょう。リゼと力を合わせてどちらも管理して下さい。そうしてくれたら私の仕事は減り、もっと遊べる」

キョトンとした若の顔。

そんな顔をした若に私はにやりと笑いかけた。

「ほら。全部手に入ったじゃない」

私が言うと、我に返った若はじわりじわりと手に入ったと言う事実が体に染み渡ったのか、口角を上げて笑みを浮かべた。

「何から何までお前の予想通りか?死神」

「そんな訳ないじゃない。でも、ま、こっからの頑張り次第で見事なハッピーエンドじゃない?出来るかどうかは知らないけど」

「…ハッ、この俺を誰と思っている」

胸を張って言うから、私はしっかりと言ってやった。

「へたれ」

と。その一言に笑ったのはリゼ様だった。いや、貴女一番笑っちゃ駄目な人。

「さて。なら早速作戦を練るか。あとディリンカの詳しい実情と…」

若がリゼ様とこれからの事を話し始める。

これは今はちょっと席を外した方が良さそうだ。

私はアレク様と白藤ちゃんを伴い外に部屋の外に出る事にした。

すると何故かウーゾが付いてくる。

「話し合いに参加しなくていいの?」

聞くと。

「俺には向いてない」

と納得の一言が返された。実行班なんだろうなぁと素直に納得した。

「そう言えばフローラ」

「はい、なんでしょうっ。アレク様っ」

「さっきマサル様と何か話していただろう?女神像の前で。あれは何を話していたんだ?」

「あぁ、あれですか」

「あれはなぁ…」

私達は足を女神像の前に向けて進み、女神像の前に立った。

「これ、酷いよなぁ」

「酷いよねぇ」

「んな訳ねーだろ。ディリンカの職人が作り上げた最高級の女神像だぞ?」

ウーゾはそう言うけれど、そうじゃない。

そうじゃないのよ。

私とサルは静かに頭を振った。

「だってさー」

「だなー」

「これど―見ても」

「忘年会、もしくは新年会の飲んだくれた女」

「だよねぇ」

ここの女神像は額にネクタイを巻き、右手にはビールジョッキ、左手にはワイン樽を抱えて、台の上に片足を上げて、顔はビール最高ーっ!!って叫んでいるかのような像だったのだ。

「いやマジでこれはないでしょ」

「一体何考えてこれ作ったんだ?」

「そもそもなんでネクタイ巻いてるの?」

「信仰している人間もいるんだろうから声高には言えないけどよ」

「でも」

「でもな」

「「これは酷い」」

教会の像って清廉さとか必要な筈でしょ?

全く感じられないよ?

「なんでこんな像になったんだろう…?」

「昔、この教会を管理していた神父様が女神様がこうしてお酒を飲んでいる姿を夢で見て感銘を受けたとか何とか」

「受けんなよ、感銘」

「絶対、それ、どっかの会社の忘年会だろ」

「隣にリーマン置いたら完璧でしょ」

うんうんとサルと頷き合う。

「トゥーティスの女神像とは随分違うですの」

「確かにトゥーティスやオーマの像とは随分違うな」

アレク様と白藤ちゃんが言う。

あっちはまだ荘厳さがあった気がするよ。

「土地の特色って事で片付けていいのかなー…」

私が遠い目で言うと。

「良いって事にしとけ…」

隣でサルも遠い目をして呟いた。


あけましておめでとうございます(*´ω`)

今年も良い一年でありますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ