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第二話 怖過ぎません?

まぁ、早い話が、転生しました。

苦しいなぁ、暗いなぁ、早くここから出たいなぁとか色々思ってたら、目が覚めまして。

やっと息が出来たと思ったら、何か無性に泣きたくなって全力で泣いた。

「奥様。とても元気なお嬢様でございますわ」

「…そう。女の子なのね…」

おや?女の子が生まれるのはご不満で?

と、ちょっと不貞腐れたくなってしまったけれど。

「……嬉しいわっ。無事に、産まれて来てくれた。それだけで、私は嬉しいわ」

全ッ然不貞腐れる必要なかったっ!

や、優しいぃーっ!

なぁんだっ!優しいじゃんっ!私の新しいお母さんっ!!

いやぁ、今回のお母さんとても優しくて安心ーっ!


………ちょい待てぃ。


騙されると思うなよ?

何で私に前世の記憶があんねーんっ!?

おぉいっ!神、この野郎っ!!

記憶消すって、私にとって良い様にしてくれるって、言うてたやんけーっ!!

記憶はバリあるわ、何か知らないけど転生した衝撃か何かで死んだ瞬間をしっかりと思い出して、堆肥に刺さっていた感触まで思い出してしまったわっ!

全然私に優しくしてくれてなーいっ!!

なんだ、これーっ!?

今度の人生では幸せにって言ってたじゃーんっ!本当に幸せになれんのぉーっ!?

これステータス画面とかあったら、運のパラメータ底辺だよ、絶対っ!酷ぇー…。

…文句言いたい。滅茶苦茶文句言いたいっ!!クレーム言いたいっ!!

アイツ、あの、リア充社畜なあの男!!確か神だって言ってたよねっ!?どうやったら文句言えるっ!?神に会える場所、…神…神社っ!?神社よねっ!?よしっ!!神社へ行こうっ!!

「では、お嬢様。綺麗になりましょうね。アゲット。ドレスの用意を」

「かしこまりました」

はーいっ!日本らしさ欠片もねーっ!神社なさそーっ!!ってか絶対ないーっ!!何の負けるかっ!

だとしたら教会じゃっ!!教会へ行くぞーっ!!

駄目だーっ!私まだ赤ん坊だったーっ!おぎゃついてて行ける訳ねぇーっ!!

くっそー…成長したら絶対教会に行って文句言ってやるっ!!覚えてろよーっ!!

ぜーはー…。

まぁ、文句は後で耳揃えて叩きつけるのは決定事項だとして。

これ以上文句を言ってても始まらないし、ちゃんと現状を把握しないとね。

今は、お母さんの顔をちゃんと確かめるのが大事。それによって私の今の顔がどんなか想像つくじゃない?

お母さ~ん、お顔見~せて~。

手、動かせるかな。

あぶあぶと言葉にならない赤ちゃん言語を発しながら、頑張って手を動かそうとしたら。

「あらあら。とってもお転婆さんね」

と微笑みながら私の手を大きな手が触れた。

お?お母さんが私を覗いてくれる?

顔を見るチャ~ンスっ!!

こぉーんな綺麗な声の女性。綺麗に決まってる。

お顔はー……ッ!?


「おぎゃああああああっ!!」


ぎゃん泣きした…。

超怖いぃぃぃぃっ!!

お母さんのお顔が、お顔がああああっ!!

が、い、や、む、あ、すぅ~っ!?

私の語彙力が死亡された。言葉にならない単語を脳内で叫んでいた。

それと同時に発した産まれたばかりの赤ん坊の全力おぎゃあは体力を奪い、私の意識をも華麗に回収していったのだった。


そんな感じに意識を失ってから、早三年が経過しました。

やっと…やっと色々慣れて落ち着いてきたので、改めて説明しようと思う。

まず当然だけど私に名前が付いた。

私の名前はフローライト。フローライト・リヴィローズ。

お父さんが命名してくれた。

でもって、どうやら私の父は国で結構上位貴族…公爵だったらしく私は所謂公爵令嬢、って立場らしい。

前世で生きてきた日本に比べたら文明レベルが圧倒的に劣るとしても、私自体は結構裕福な生活をおくっている。

現代日本で丁度流行っていた転生系のアニメやラノベ等で、転生した先で戦争があったり、断罪されたりとあるが…そう言うのは全くないっ!

とーっても平和なのだ。

私が第一希望した平和な世界。そこはちゃんと汲んでくれたいたみたいで。

それは良かったなぁとは思ったものの…私は未だに気になっているのよね。あの転生間際の『それじゃ全部逆っ…』って言ってたあの神の言葉。

教会に行ってクレームを入れるってあの誓いは三年経った今でも忘れていない。

……そうそう。クレームで思い出したわ。

産まれたばかりの私がぎゃん泣きして、意識失った理由を語ってなかったわ。これを語らないときっと話は始まらないと思うのよ。でね?

私がぎゃん泣きした理由はね?。

「フローラ様。準備が整いましたわ」

「ありがちょう。しょれでは、わちゃくしはちょちゃいにいってまいりましゅわ」

……口が回らないのは三歳児だから多めに見て貰うとして。

私は椅子から降りて、姿見鏡で自分の姿をチラッと横目に確認した。

真正面から確認する度胸はない。私が意識を失った理由、それはこれだ。

三年かかってこの現実を受け入れてきたが、正直今でもちょっと見えるその姿に心臓がバクバクする。

実は、この世界…。


―――顔がスク○ームなのだっ!


言っている意味が解らない?

よろしい。詳しく説明しようじゃないか。

私は今まで屋敷の外に出た事はないが、どうやらこの世界の人間は…みんなスクリー○顔らしいのだ。

この世に産まれ落ちて母親の顔がス○リームで、私は驚きのあまり意識を失ったのである。

いやだって、目の前に突然○クリームのアップってビビるでしょうっ!?

スクリ○ム解らない人がいるかもしれないから、もっと言うなら、あれよ。ムンクの『叫び』って言う有名な絵画あるでしょ?

それの顔みたいな感じ。

ハロウィンとかで見た時ない?あの白くてひょろ~っとした感じのお面。あれよ、あれ。

目は窪んで眼球が全く見えない、鼻はペタンコむしろ骨、頬はべっこり凹んでるし、口は何故かどう頑張っても閉じようとしてもO型になっていて舌が見えない。代わりに笑ったりした時に綺麗に揃った歯がたまに見えて、むしろ怖ぇ。

私の髪はお母さん…っと、言い方改めるね。母様とお揃いのピンクゴールドの髪をしている。ストレートのサラサラヘア。

体は細い。滅茶苦茶細い。全ッ然太くならない。筋肉なんて夢のまた夢。ガリッガリを安定キープ。なんだこれ。

でも母様も父様もビックリする位細いから、本当にびっくりする程細いから、ガリッガリ再びな位細いから、これはきっと遺伝。そう、遺伝。遺伝なのよ、い、で、んっ!じゃないと我が家に仕えてくれている皆もほっそい理由が説明出来ないとか思い始めちゃうからねっ!

下手すると歩く時にカシャカシャとか音がしそうとか言わない、思わない、絶対。

たまに庭で風に乗って高く舞い上がる母様を見るけどそれも絶対に気のせい。窓が開いてたら紙と一緒に父様が飛ぶとか気の所為だよ。気の所為、うん、気の所為。

……………うん。

気を取り直して、ちょっとドレスの重さに潰されそうだけど、書斎に行こうではないか。

ふらら~…ふらら~…。

体が重くて右、左と左右に揺れる。

あ、大丈夫っす。慣れてるんで。

ちょっと見守ってて。

大丈夫、大丈夫っす。ちゃんと到着するんで。

ふらついて歩くこと30分。やっと書斎に到達した。

これがね。体が重くて進むのに大分時間はかかるんだけど、体力はあるのよ。疲れてはいないんだ。

本当にね。真っ直ぐ歩けないだけで、体が細いだけで歩く分には体力は減らないのよ。

ただちょっとね?換気のために開けた窓とか、ホント風強いからね?一々壁に体が追いやられて張り付いたみたいになって動けないってだけだからさ。全然疲れてはいないの。ほんとほんと。

抗えば抗う程現実が刺さってくるって何なのかな、これ。

いや、抑えろ、私。今は辿り着いた書斎に喜ぶべきだ。

書斎~。知識の宝庫~。

本を読むのよ~。読むんだよ~。この世界で本は貴重なの~。

って言うか紙が貴重なんだよね。大事な事が書かれている書類以外はいまだに羊皮紙使ってるくらいだしね。

本がどれだけあるかってのが財力の差を表してる、って言われてる位だし。

そんな家に産まれて来れたのは正直助かったな、って思ってる。かなり立派な書斎だから読み切るなんて結構時間がかかるだろうし。知識があるにこした事はないじゃない?

ただねー、その本を読むのにもちょっと問題があるんですよ、私。私ねー、体力はあるけど腕力がないのよ。や、脚力もないけどね?要は圧倒的に【力】が足りない。って言うかむしろ皆無。だから。

「ほんがもちぇにゃいのよね~…」

でも、毎日一冊は私専属の侍女のアゲットが取ってくれる。今日もまたとって貰えたので、私はその一冊をふかふかの絨毯が敷かれた床の上でちょこんと足を伸ばしながら座り膝の上に本を広げて読む。

何で毎日本を読んでいるのかって?いや、成長するには、まず文字の把握でしょ。文字を覚えないと何も出来ないよ?何かしでかした時にフォロー出来るのは自分の語彙力でしょっ!なんでしでかすの前提なんだと言うなかれ。転生者なんて何も起こさずに過ごせる訳ないじゃん?小さくても大きくても必ず時代の何かしらを変えてしまうんだから。

あーだこーだと理由は付けたけれど、何にしてもまず文字を覚えたいんだよー。アゲットが取ってくれたのは、分かりやすい小さい子向けの文字を覚えるにはうってつけの本、絵本だから順調に読み進める事が出来る。…と言いたい所なんだけど…この世界の絵本だからかなー?とーーっても…ホラー。

ねぇー。なぁーんで絵本の中でくらいキャラクターを可愛く出来ないのぉー?

主人公の女の子がムンクさんの叫び状態。女の子のお気に入りの牛さんのぬいぐるみの顔もス○リーム。勿論女の子のお父さんとお母さんもスクリー○だし。どんなに微笑ましい内容を書いてても見た目がとぉってもホラーなんだけど…。

花畑でお手て繋いでスキップしてる女の子とその後ろでお母さんが忘れものよーと籠を持ちあげるシーンなんて、もはや女の子の背後から迫るスク○ームの図だよ。

………微笑ましいがゲシュタルト崩壊しそうだわ…。

あぁ、でも、知識を頭に入れるのは楽しいなぁ~。

なんも知らない状態より言葉や知識を得た上で周囲を見た方がより深い理解を得られるじゃない?

まだ文章の接続詞がーとかは解らないけど、物を見てこれは花、これは空って単語は話せるようになったんだよ。……この世界の発音難しくて、まだちゃんととは言えないかもだけど…。

前世の知識がある分だけ同じ年齢の子達よりは物覚えは早いと思う。

「まぢゅははちゅおんをぢょうにかしないちょ…」

日本語で言う所の【た行】が苦手。【さ行】もちょい苦手。そこさえちゃんと発音出来ればバッチリ話せるようになるんだけどな…。もう少し練習が必要だわ。

「ちゃーちぃーちゅー……ちゃきしぃーぢょ…ぢょれす…」

「ふふっ。お嬢様。今日も練習中ですか?」

「アゲッチョ」

「なんか、テンション高そうな名前になっちゃいましたねぇ。はい。アゲットですよ~」

いつも私が書斎にいる時、アゲットは違うお仕事をしている事が多い。

前はずっと付いて来てくれていたんだけど、私がここに来る時は静かに本を読んでいる事が主だから、それに気付いたアゲットはこっそりと抜けて自分の仕事をする様になったんだ。

幼い子から目を離すなんて、と言いたいと思うけど、ほら、中身がこれじゃん?誘拐とか大きい事件は余程の事じゃない限り起きないし、父様曰くこの屋敷の警備は都一らしいからここに入れる強者は早々いないだろうし、色んな意味で安全なんです。

話はそれたけど、そんなお仕事に行っている筈のアゲットがここにいるって事は私に何か用があるって事だと思うの。

本を気合で閉じて、立ち上がるとアゲットが私の方へ歩いて来てくれた。

とてもにこやかに微笑んでくれてるのは解るんだけど…ス○リームの笑顔は怖いー。い、いや駄目だ。アゲットは優しい人。アゲットは優しい人。…良し、自己暗示完了っ!

「アゲッチョ。何かありましぃちゃか?」

「旦那様と奥様がお呼びですよ」

「あい。わかりまちちゃ。いしょぎぢぇしゅか?」

「はい。そのようです。なので申し訳ございませんが」

「あい。わかっちぇましゅ」

私は素直にアゲットに向かって手を伸ばした。

するとアゲットはにっこりと(…笑っても窪んだ目が変形するだけなんだけど)微笑んで私を抱き上げてくれた。

アゲットが私の置いた本を回収し棚へと戻して、私を抱っこしたまま書斎を後にした。

30分かけて辿り着いたのになぁ~…。急ぎの用って何だろう?

連れて行かれたのは、父様の執務室だった。

アゲットがノックをして中からの返事を聞いてドアを開けると、そこには父様と母様が商談用に使われるソファに腰かけて向かい合い座っていた。

アゲットに床に降ろして貰い、スカートを持って母様がやって見せたカーテシーと同じ礼をした。

「おまちゃしぇしましちゃ。ちょうしゃま、かあしゃま」

「あら。あらあらあら~っ。フローラちゃんったら、すっかり綺麗な礼を見せるようになったわねぇ」

「流石私達の子だ。天才かも知れんな」

父様と母様が嬉しそうに笑う。…うぅ。褒めてくれてるんだろうけど、顔が…スクリー○だからホラーにしか感じないんだってば。

でも、でもですよ?褒めてくれてるのは嬉しいし、父様も母様もこの世界に生まれたからこの顔な訳で。そこに文句を言っても仕方ないもんねっ。

喜びましょうっ。父様も母様も心から褒めてくれたんだからっ。

「ありがちょうごじゃいましゅ。うれしいでしゅ。ちょうしゃまもかあしゃまもぢゃいしゅきでしゅ」

にっこり私も微笑む。……ふふふ。ほんっと早く言葉覚えよう。全くもって私の溢れんばかりの家族愛が伝わらないじゃないか。くそぅ。

「アゲット。話が済んだら呼ぶ」

「かしこまりました」

アゲットが執務室を静かに退出した。

私はどうしようかな?

母様の横に座ろうかな。

母様の側へ行き、隣にちょこんと座る。

「さて、家族が揃った所で、本題に移るが。フローラ」

「あい」

「君に、弟か妹が出来るぞ」

「ッ!!」

私は喜びに無言で両手を上げた。万歳。やったーーーーっ!!

「ほんちょうでしゅかっ!?」

「えぇ。お母様のお腹に一つの命が宿ったんですよ」

「しゅごーいっ!!」

ガチで喜ぶ私に、スクリー○が笑った。…もとい、両親が笑った。

「あぁ、こんなに喜んでくれるのなら、心配はいらなかったな」

「だから言ったではありませんか。フローラちゃんならちゃ~んと喜んでくれるって」

んあ?

もしかして、父様母様幼児返りの心配してました?

大丈夫ですっ!中身は幼児じゃないんでっ!全ッ然問題なしですっ!!

「ちょうしゃまっ!わちゃし、いっぱいいっぱいべんきょうしちぇっ、りっぱなおねえしゃまになりましゅっ!」

あ、あれ?

手を上げて宣言したのに、父様が驚いた顔して止まっちゃった。静止されると、立派なムンク様の叫びになっちゃうから出来ればあまり止まらないで欲しいんだけど。

私なんか可笑しな事言った?

良いお姉ちゃんになるよって宣言しただけだよ?

「………カナリー。うちの娘は、天才かも知れない。いや、むしろ天使か」

どちらかと言えば、地獄の使者な見た目かと思われます。

「スファル様。フローラちゃんは天使じゃなくて、可愛い可愛い私達のむ・す・めっ♪間違っちゃダメよ~」

可愛いかどうかは置いといて。

母様のなでなでは嬉しい。

「そうだな」

「ちょうしゃま。ようけんはしょれぢゃけでしゅか?」

これだけなら私書斎に戻って、良いお姉ちゃんになる為に勉強したいんだけど。

「あぁ、いや。そっちが本題じゃないんだよ」

本題じゃない?

じゃあ、なんでっしゃろ?

私は首を傾げると、父様も首を傾げた。

……はたから見るとこれホラーな図…い、いや考えない。考えないんだからっ。

「フローラはもうすぐ4歳になるね?」

「あい」

「では、そろそろ、教会に行って自分の加護属性の開示を受けに行こうか」

「かごじょくしぇい?」

「あぁ、そうだよ」

かごぞくせい…?籠…じゃないよね?となると加護?ぞくせいは属性?【加護属性】とはなんぞや?

まぁ、属性ってのを前世の知識を踏まえて普通に考えるなら、地水火風?ちょっと捻って考えるなら木火土水金って所?他にも聖と魔の二つだけ、とか光と闇が地水火風に足されてたりとか色々あるよね?

「ふむ。その表情を見る限りだと、言葉の意味を教える必要はなさそうだね。本当に私達の娘は賢い。一体誰に似たんだ?」

「勿論スファル様ですわ~」

「カナリー…」

ちょいちょいお待ちよ。

娘放って二人の世界に入らないで。お腹に子がいるなら尚更今は二人の世界に入らないで欲しい。

「わちゃしは、ふちゃりのむしゅめでしゅっ」

どやっ!

意味もなく胸を張ると、二人は私の存在を思い出したのか嬉しそうに頭を撫でてくれた。

父様が母様の側に来たくなったのか、私を抱き上げてお膝に乗せて、母様の隣に座った。

「私達が暮らしているこの世界には四つの属性がある」

「よっちゅ…ちしゅいかふうでしゅか?」

「ちしゅい?…あぁ、もしかして地水火風の事かい?フローラはそんな事も知っているのか。凄いな。でも残念ながら違うよ」

「ちがうんぢぇしゅか?」

違うのかー。え?でも四つあるのにその属性じゃないって言うと何だろう?

「この世界には、【動】【静】【現】【失】の四属性がある」

「………ほえ?」

全く聞いた事のない属性にアホな声を出してしまった。

えっと、なんだって?【動】【静】【現】【失】の四つって言ってた?

「一つ一つ説明して行くが、まず大前提として【動】と【静】はこの世界の一般的な属性だ」

「あい」

「【動】は物事の動きを補助する属性で、【動】属性を持つ者は身体強化の力を持つ者が多い。続いて【静】は物事の動きを鎮める属性で、【静】属性を持つ者は、そうだな…。例えば病の侵攻を遅らせたり、怒る魔物を抑えたり出来たりする」

ほえ~…。

まとめると、【動】属性を持つ人は、騎士とか傭兵とかが向いてるのかな?逆に【静】属性を持つ人はお医者様とか司令官とか、そのあたりに向いているのかもしれない。もっと簡単に今風に言えば動属性が体育会系、静属性が勉学系、って感じかも。

「次に【現】と【失】だが、この属性を持つ人間は殆どいないと言われている」

「しょうなんぢぇしゅか?」

「あぁ。【現】属性を持つ者は、無から物を作りだす事が出来る。この国だと…確か現王がそうだったか?」

「正しくは現王と第一王子が【現】属性の持ち主ですわ」

「この属性を持つ者はまずいないと言われている」

「なじぇでしゅか?」

「無から物を作りだすなんて不可能だからだよ」

「???」

「人は必ず何かを使わなければ物を作りだす事は出来ない。空中に突然飴が現れる、なんてことは普通は”あり得ない”だろう?」

成程、確かに。理解した。しっかりと頷いて理解した事を伝えておく。

「では、いまのおうしゃまはしょれがかのうぢゃと?」

「可能ではあるけれど、使う事はしないだろうね」

「???」

「私達は今この世にあるものを、改良して生きている。逆に言えば今あるものを進化させさえすれば生きて行くことに不自由を感じない。ならばその属性を使う意味は何処にある?自分達の進化を止める事に意味はないだろう?」

「ふむ…」

物は考えようって事かな?

確かに今あるもので暮らしを豊かにしていくってのは大事な事だと思うの。そこに唐突に想像したものを何でも作りだせますと言ってしまえば人は考える事を止めてしまい、堕落していく一方だもの。

「ちょはいえ、しょのじょくしぇいはおしょろしいちゅかいみちがありましゅ」

「うん。そうだ。良く気が付いたね、フローラ。その通りだ。【現】属性は無から物を作りだせる者。それは、この世界の現状において作る事が不可能だとしてもその素材さえ存在してしまえば作りだせてしまう。それが例え【武器】だとしても」

「ぶき、かぁ…ちゃしかに。ぶきは、あらそいをうみましゅ。でも、ぢょうじにひちょはあらしょいからしんかもしましゅ」

「フローラ。間違ってはいけないよ。争いは確かに進化を促すかもしれない。だが、その進化は本当に必要な物かい?」

「…ちゃしかに」

「争いはこの国、いや、世界において一番の禁忌だ」

「きんき…。しょれはこのしぇかいぢゃけぢぇはありましぇんね」

「そうだな。これは理性を持つ生き物の無くしてはならない義務だよ」

父様、カッコいいな。

顔がスク○ームだから決まらないけど、でも言っている事は至極真っ当で正しい。

「さて。残る属性は【失】の属性だな。これは、【現】属性と真逆にあるものだ。この属性はこの世にあるものを失わせる事が出来る。要は消す事が出来るんだ」

「なんぢぇもぢぇしゅか?」

「いや。何でもと言う訳ではない。制限がある」

「しぇいげん…ちゃちょえば?」

「そうだな。小さいものではそこにある羽ペンとかだな。【失】属性の人間が触るとこの羽ペンは生まれなかった事になる」

「………うん?…けっこうおおごちょ?」

「怖い能力だよ。【失】属性の人間はな。その力を使う度、その物は存在を失う事になるからね」

なんと…。

かなりヤバい能力のようだ。

「因みにこの【失】属性は、命あるものには通用しない。だから人は勿論、動物や植物なんかにも使う事は不可能」

「しょれはあんしんぢぇしゅ。ぢぇもなんぢぇ?」

「何で、か…。これはね、フローラ。実は父様にも解らないんだよ。国の研究施設もずっと調査を続けているけれど未だ解明されていないんだ」

ほお?

解明されていない?

………なーんか、あのふざけた神様が関わってそうだなぁ…。

【失】属性の裏とか言ってるけど、ただ単に【現】属性で作られた物を消す人間が必要だったから、って説もありそうだし、はたまた無駄な殺生は自分の仕事を増やすのみだからーって説もありそうだしなぁ。

っつーか、あの神様なら何でも有り得そうだわ。

「と言う訳で。話を戻すけれど、近い内に加護属性を開示しに行こうね」

「はい」

「フローラちゃんは何属性かしらねぇ~」

「どんな属性になったとしてもこの賢さだ。才能を芽吹かせるに違いない」

「あらまぁ~。スファル様ったら。親ばかなんですから~。おほほほほほ」

皆で笑い合う。

とっても素敵な家族団らん。

この数日後にとんでもない衝撃が私を待ち受けているとは知らず。

私は弟が出来る事と加護属性がつくことに浮かれていた。


なろうさんのシステムはまだ慣れない…。

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