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第二十五話  あら熊さん、ありがとう。なのですっ!!


「アレク様ぁぁぁっ!!」

両手を広げて待っててくれたアレク様。嬉しくて、バイクから飛び降りてアレク様の胸にダイブした。

王林様の自室の窓ガラスを突き破って入って来たから、多少大きな音がでたけれど、気にしない。

アレク様も気にした様子はないから問題なし。

「フローラ、お帰り。怪我はしてないか?」

「大丈夫ですっ!」

「良かった。思いの外帰ってくるのが遅かったから心配した」

頭に頬を擦り付ける様に抱きしめてくれるアレク様。

「うあああっ…最高のご褒美ぃぃぃっ」

私も負けじとアレク様の胸に額を擦り寄せていると。

「く、苦しい、ですの…」

フードから息絶え絶えの声が聞こえる。

アレク様を見たらすっかり忘れてたけどフードに白藤ちゃんが入ってたんだった。

…………アレク様の抱擁と白藤ちゃん、どちらを取るか…抱擁一択で。

ぎゅーっとしがみついたんだけど、アレク様が白藤ちゃんの存在に気付いて少し力を抜いてしまった。残念。

「ぷはっ。く、苦しかったですの…。フローラお姉様。私がいたこと忘れてたですのっ!」

「うんっ、ごめんねっ!」

「即答…いっそ清々しいですの…」

フードから顔を出して、かくんと頭を落とした。

「藤っ!」

アレク様の奥から声が聞こえ、駆け寄ってきたかと思うと王林様は私のフードに手を突っ込んで白藤ちゃんを取り出して、手の平に乗せた。

「ごめんっ、ごめんよっ。僕の所為でっ」

白藤ちゃんごと手の平を自分の肩より上にあげて、頭を下げて王林様は必死に謝る。

「…私も、ごめんなさい、ですの…。色々ちゃんと知っていれば、学んでいればこんな事には…」

「藤…。ううん。やっぱり僕が悪いんだ。ごめん。嫌な思いさせて。怖い思いさせて、ごめんね」

泣きそうな声を我慢している王林様に、白藤ちゃんは困惑しつつも、その手を叩いて下に降ろすようにいった。

王林様はそれに従い、自分と同じ目線になるように手の平を降ろすと、白藤ちゃんは両足で立って前足を彼の頬へと伸ばして触れた。

「フローラお姉様に聞いたんですの。私は色々誤解をしていたのかもしれないと思ったんですの。だから、教えて欲しいですの。…林は、私のこと、どう思ってるんですの?」

「好きだよ。僕は藤。白家の里で一緒に桜を見た時から…ううん、君のイヤーカフを拾った時から藤一筋だよ」

「嬉しいっ…」

ポムッと彼女はウサギから人型へと姿を変えて王林様に抱き付いた。

「やっと、やっとあの口づけの意味が聞けました。嬉しい、林っ」

「藤っ…う、嬉しいけど、その、裸っ」

王林様が真っ赤な顔で自分の来ていた着物の上着を脱いで白藤ちゃんにかけた。抱きしめた腕を離されないように器用に脱ぐ当たり、男だなとも思う。

「あ、そうだ。アレク様」

「?、どうした?フローラ」

「雑色の親玉と今回の件に加担していたナンエゴの偉い人がバイクに」

「ん?」

にっこり笑って指さすとアレク様は私の指からバイクの方へと視線を動かして、苦笑した。

「あー…とりあえず」

そう言って私の体を離して、バイクに近寄りナンエゴ人の前で屈み込んだ。

「無事か?ウーゾ」

「ぶ、じに、みえる、か…?アレク…」

「あぁ、話せるなら大丈夫だろ。俺の嫁は強いだろ?」

「つよい、じゃなくて、ありゃ、ひじょうしき、って言うんだ」

「お前がフローラに喧嘩売ったんだろ?フローラは俺の事以外で自分から戦い仕掛ける様な奴じゃない」

「アレク様、好きぃぃぃぃっ!!」

私の愛を信じてくれるアレク様に悶え苦しむ。

「……あれ、誰…?」

「俺の嫁」

「………」

なんでポカン顔なのよ。しばくわよ。

「……相手は選んだ方が良いと思うぞ」

「選ぶまでもなく惚れたのが俺なんだよ」

アレク様っ!私も、私も好きですぅっ!!

アレク様の言葉が嬉し過ぎてプルプルしちゃうっ!!

「骸骨の目がハートマーク…きも」

「あ、そっか。アンタ、足失くしたいんだったよね?」

「い、いやいやいやっ!!何も、何も言ってないっ!!」

ちっ、折角チェンソー唸らせようと思ったのに…。…ん?骸骨顔にチェンソー…何か似たようなホラー映画があったような…忘れよう。

「ウーゾ。俺の嫁だからな?」

「なっ、どう言う意味だよ、それはっ。俺が手を出す訳ないだろっ」

「そうそう。アンタが惚れたのはリアンだもんねぇ」

言った瞬間ナンエゴ人は顔を真っ赤に染めた。純情かっ。

遊んでる癖してそんな反応すんなやっ。

「フローラ?」

「はいっ!アレク様っ!」

呼ばれたら瞬時に駆けつける。これ、大事っ。

アレク様の真横に立って、言いつけを待つ。

「雑色の親玉、ってのはどこに?」

「え?あ、それはですね」

座席を開けてリュックを取り出して蓋を開ける。

アレク様は中を覗き込んで、それから手を突っ込んでそいつを取り出した。

「やっぱり、秋映だったのか…」

ぐったりして目を回している秋映さんに王林様は悲しそうに呟いた。

「上に立つ人間である限り覚悟して通らねばならない道だ」

「確かに、そうね。だからこそ自分の目を養う必要がある」

サルの言葉に私は深く頷く。

私達の言葉を聞いたアレク様に王林様、そして何故かナンエゴ人まで真剣な表情をして聞いていた。

「って言うか、サル。あんた随分大層な入れ物に入ってるじゃない」

「だろー?この水槽マジで過ごしやすいんだよ」

「あ、じゃあじゃあ、私も用意してあげるわ、水槽」

「お前が言う水槽はな。世間一般じゃ鍋、もしくはフライパンって言うんだよ」

「ちっ」

これだから幼馴染って奴は。思考を先に読まれるのはつまらない。

「伝説の魚とあのやりとり…お前の嫁規格外過ぎ」

「可愛いだろ。取るなよ?」

「いらねーよ」

それにしてもあのナンエゴ人。アレク様とちょっと親しく話し過ぎじゃない?粛清するよ?

じとーっと睨んでいると視線を逸らされた。

「…林?」

「ん?どうしたの?藤」

「これから、どうするですの?」

白藤ちゃんの言葉に私達の視線は一斉に王林様に注がれた。

「…まずは琳五家の頭首を招集した。そして、今までの流れを全て説明後、処断する」

心配と不安が入り混じった表情で見つめられている王林様は、白藤ちゃんを安心させるように微笑んだ。

「大丈夫。治めてみせるよ。僕はこれでもこの国の皇だからね。大切な藤と解ってくれる友と最強の後ろ盾がいてくれるから」

「…ですのっ」

白藤ちゃんの満面の笑み。可愛いなぁ…。

「集まり次第、会議を行う。その場には令嬢達や東光も呼ぶ。彩来、斜子、準備」

「「ハッ」」

…あの二人は秋映さんと距離を置いていたし、この状況であの二人を使うと言う事は、関係は無かったって事なんだろうけど…。

二人のアレク様の手に捕獲された秋映さんを見る目が切なげに揺れていた。…仲は良かったのかもしれないね。

「…どう、結果を出すと思う?」

「まぁ、ここまでなってしまえば、弟の継承権剥奪は確実だろうな」

「子供が難しい所よね」

「男児がいなかったのが救いだろうが、それでも皇族の血を引くって言うのはなぁ」

「利用されてまた問題になってもだしね」

「それなぁ…。けど、産まれてくる子供に罪はないんだよな」

「そうね。…これからどんな扱いを受けるか…。それこそ王林様次第だわ」

「だな。俺思うんだけどよ…」

ヒソヒソとサルと部屋の中で行われている事を見ながら会話をする。

それはアレク様が秋映さんを兵に受け渡すまで続いた。


二日後。

城に琳五家の頭首が到着し、広い和室にて会議は行われた。

一番奥に王林様。王林様の左手側に紅家頭首、赤家頭首、黄家頭首が座っており、左側に青家頭首、白家頭首が座っている。それぞれ斜め後ろに令嬢達が控えていた。

末席に白熊姿の東光様とその横に白兎姿の秋映さんの姿があった。

私達は他国の王族貴族なので、離れた所に座り様子を見守っている。

……正直、畳の部屋が懐かし過ぎて大の字になって寝転びたい衝動を抑えている。あー、いぐさの匂いが前世を思い出させるわー。

結局この大陸って着物着てたり畳があったりと日本風ではあるんだけど、どっか中華風も混じっていると言うか…あくまでも日本【風】なんだよね。

そう言えば城下町端の方に赤い鳥居があったなぁ。あそこに何かあるのかな?

あ、それはそれとして皆さん、聞いて下さい。私のアレク様が御着物を着てらっしゃいます。灰色の御着物に高級感のある黒い帯。濃紺の羽織がまた色っぽい…。堪らない。

心の中で叫ばせて貰おう。

アレク様かっこいいぃぃぃぃぃっ!!

「…アレク様カッコいいとか思ってんだろ?」

「当り前の事聞かないでくれる?」

隣にいるナンエゴ人の言葉を叩き切り、ついでに我に返った私は王林様に視線を移す。

王林様はコクリと頷き、言葉を発した。

「まず、この度の招集について話そうと思う。事の発端はそこにいる秋映が雑色の反乱を利用し、草色の独立を企てる所にあった」

順に王林様は起きた事を説明していく。

最初は黙って聞いていた琳五家の頭首達は前皇帝陛下が亡くなっている事が解った辺りから顔色が変わっていった。

「今回の事件、雑色の遺恨、部下の暴走、全てにおいて現皇帝である僕の責任だ」

そう言って頭を下げようとした王林様に急ぎ駆け寄って、その手を握った人がいた。白藤ちゃんだった。

「いいえ。陛下。陛下だけの責任ではございませんわ。この件は琳五家…いいえ、この国の民全員に責任がございます。私達は、知らずに済ませていた事が多過ぎたのです。本来ならば私達が陛下を支えなければいけなかったのに。全てを陛下達皇族に押し付けてしまった。そうでしょう?お父様」

「白藤…だが、皇族と言うのはそういう物で」

「お父様…?」

ギロリ。

あ、娘が黙って頷いとけって目で言ってる。

ドコの家も娘は強いものだよねぇ。

「…陛下。今の話が本当ならば、私達の子はどうなるのでしょうか?皇弟殿下の御子、女児と言えど継承権がございます」

青家の令嬢が陛下を見た。

一番難しい所だよね。どう沙汰を下すのか。

私とアレク様は成り行きを見守る。

「残念ながら、君の子達に継承権はない」

「詳しくお聞きしても宜しいでしょうか」

「あぁ。まずは今回の事件の責任を取らせる為に、東光の継承権は剥奪する。そして次に、そもそもの話になるが、皇位を継ぐには【熊】の肉色の姿と僕が今なっているこの副色の姿。そして静属性の力で【姿固定】の能力がある【男】であることが条件だからだ」

初めて提示された皇族の事情にその場にいた者達は全員口をぽっかりと開けて唖然としていた。

「父の代まで秘されていたこと。知らずとも無理はない。とは言え、頭首達は多少なりとも気付いてはいただろう?」

王林様の言葉に頭首達がじわーっと視線を逸らしていく。気付かなかったんかいっ!

突っ込みたい心を抑えた私は偉い。きっと偉い。

「ほら、お父様。そういうお父様方の無関心がこの状況を生んだんですわ。勿論、それは私達もです」

そう言って白藤ちゃんが周囲を睨みつけた。…うん?白藤ちゃんがちょっと強くなった?

「話を戻すが、君達の子に継承権はない。その理由は今言った通りだ。だがそれだけで皇族の血が効力を失う訳ではない。そして子に罪は無い。だが、親にも罪が無い訳ではない」

令嬢達がビクリと肩を震わせた。

知らなかったとは言え、皇弟の子を産んだのだ。正式な婚姻を交わさずに。本当の皇帝陛下ならばそれを子を盾に取る事も出来る。だが皇帝陛下が知らずに増やした場合は罪になる。皇族の血を増やすと言うのはそれだけリスクのある行為なのだ。

「追放や牢に入れたりはしない。これは皇族の責任でもあるからな。しかし、子供達の為にも皇族の血が入っている事を周りには隠していた方がいいだろう。幸い、僕達は産まれ落ちてある程度の年齢になるまでは獣型の姿で成長する。子らと令嬢達には申し訳ないが【獣の姿の固定化】か、もしくは【東光と共に大陸端にある屋敷で生涯を過ごす】との二択となるだろう」

「そんなっ」

「恐れながら陛下。私達も被害者ですわっ!」

まぁ、そりゃそうだろうけどねぇ。

相手が弟皇子って知らずにいたんだから。でもねぇ?子供が出来た時点で責任が生じるんだよねぇ…。皇族の血を引く子を産むってそう言う事なんだよね。うん。

それを理解しているから各家の頭首達は何も言わないんだよね。

それにこのまま東光様と一緒に令嬢や子達を屋敷に押し込めたとしても今度はその子供達が酷い目に合わされたりしそうだし…。

うーん。…ここは。

「はーい」

私は手を上げた。ちょっと気の抜けた声になったのはご愛嬌って事で。

上げた事で私に視線が集まる。今日はヴェールを被ってるから問題なし。

「三つめの選択肢として、東光様の御子達を全員オーマに留学として出すのは如何ですかー?」

「え?」

皆キョトンとしながらこちらを見た。

「分別がつくまではどうしても獣の姿で過ごす事になりますが、それまでの間にきちんとこのトゥーティスの事を客観的に見れるように育てますよ?そこら辺は王と交渉する事も可能です」

まぁ、交渉なんてしなくても拒否はさせないけどもね。ふふふっ。

「…アレク」

アレク様に不安気な顔を向ける一同。どゆこった。

でもアレク様は堂々とその視線を受けて頷いた。

「まぁ、問題はないだろう。父上には私から話を通して置くし、公爵家の力もフローラが言えばどうにか貸して貰えるだろう。それにこうなったのもきっと」

アレク様がちらりと私を見た。その通りだろうと私は頷く。

「今回私達がこの国に来たのはその説明をする為でもある。今この国の首脳陣が揃っているし説明には調度いい」

「ですね。王林様。そしてそこのナンエゴの人。国のトップに立つ人達には聞いて頂きたい事がございます。【ムラサキノツキ】について」

正しくは私達が消した【紫の月】について。

私とアレク様は二人でその存在について説明をした。出来得る限り詳しく。本来は知っていない筈がない話。

けれど、私とアレク様が存在を消してしまったが為に事情が変わってしまった。だから私はこの国に来た。

私が詳細を説明していく内に、その場にいた人達は皆困惑しだした。

それを代表するようにぼそりと王林様が呟いた。

「……思い当たる節はある…」

「私もです…」

「感情が爆発するような、どうしようもない衝動に駆られるような事があった…」

「感情の暴走…」

「良くも悪くも、なんだね」

神妙に二人が頷き合う。

間違いじゃない。間違いじゃないけど私が伝えたいのはそうじゃない。

「えーっと…ごめんね?皆神妙になってる所悪いんだけど」

私は再び手を上げた。


「それ、普通の事だから」


そしてハッキリと言い切る。

中途半端な同意とか共感はしない。こう言う時はハッキリと言い切る方がいいのだ。

これからはその自分ではどうにもならない感情を、操作出来ない感情を、受け入れて行かなければならないのだ。

「感情が制御出来ない事なんて人として多々ある事を、特別な事の様に思ったらダメ。本来自分の中にある自分で管理しなければならない感情を、奪い取られていたと言う形とは言え他に預けて楽をしていたんだから。今までの分もそのどうにもならない衝動的感情を受け入れなければ」

「感情を受け入れる、か…」

「後は抑え込む方法もね」

「それは、きつい、な」

「だけど、それは人として当然の事だもの。そのキツさもまた飲みこまなければならないもの。…これはね。上に立つ人間ならば絶対に必要なモノよ」

その場にシンと音もない沈黙が訪れた。

それぞれがきっと自分の心と向き合い考えているんだろう。

そんな中、今の言葉を理解していない幼子が声を上げたが…。

「あ、あれ…?じゃあ、じゃあじゃあ、それが本当の話ならっ。僕、悪くないって事じゃない?」

「…あの怖い姉ちゃんに去勢されたくなければ黙っとけ、坊ちゃん」

ナンエゴ人がどしんっと体重をかけて幼子を抑え込んだ。

体を紐で縛られてるってのに器用だね。

「……そうだな。…上に立つのであれば…国を導く立場にある僕達はこの感情を受け入れなければならないんだな。僕は国のトップとして感情を受け入れてみせよう。お前達も里を率いる者としてその覚悟を持て。いいな」

「はい。陛下」

白藤ちゃんが真っ先に頷き、釣られるように皆頷き返す。

良い方向に進んでくれそうでほっとした。来たかいがあるってもんだね。

っと、そうだった。サルとも話してた事もここに首脳陣がいる内に話しておこう。

「突然話し変えるんだけどね。私今日までこの国を観察していて思った事が一つあるんだけど」

「?、思った事?」

唐突に変わった話に王林様が首を傾げる。そらそうだ。でも私は気にせず話を進めた。

「この国の人達は試練をないがしろにし過ぎです。試練をクリアして本当の姿を取り戻した方がいいです」

「…何故?」

本気で首を傾げている王林様達。でも自分の本当の姿を知るって大事だと思うんだよね。

サルとも言ってたんだけど、今回の件はその所為が一番の原因だと思うのよ。

「本当の姿を取り戻さないから、本当の姿を意識しないから今回の様な事件が起きたんだと私は思うんです」

見た目、って大事よ?

「ちょっと失礼しますねー」

私は現魔法を駆使して、とある道具を作りだした。

パッと見ただのスイッチだ。でもこのスイッチを押すと。

「わっ!?」

「なんだっ!?」

皆の姿が本来の、祝福を返上した姿になった。

これはオーマの城でもあった、あの部屋と同じ祝福を遮断する装置。いや同じだけど、私の作りだした空間の方がちょっと遮断力が強い。

…はっ!?今はそんな事よりも、大事な事があるわっ!

バッと横を見るとアレク様が、麗しのアレク様に戻っていてしかも私に向かって微笑んでくれているっ!

そんなアレク様の胸にこれ幸いとぎゅっと抱きつくと、アレク様も嬉しそうに抱きしめてくれる。

「が、骸骨顔…本当の姿そんなに可愛かったのかよ」

何か不愉快な声が聞こえ…って、ナンエゴ人よ。何その衝撃がデカすぎる見たいな顔は…。

どいつもこいつも…人の顔見て一時停止しやがって…。

いいもんね。アレク様が微笑んでくれてるし、頭を撫でてくれてるしっ、それだけで幸せ一杯だしっ!

「…ナンエゴ人って亜人姿が人の姿になるだけなんだね。変化があんまりない」

それはそれとして言い返しはするよ。ムカつくからねっ!

「お前らみたいにデカい変化があってたまるか」

何か滅茶苦茶失礼な事言われてる気がする。するんだけど、そんなの私達のやりとりが可愛く感じる位、私達以外の所では阿鼻叫喚の図が出来上がっていた。

王林様の姿が細身の可愛らしい青年だったとか、白藤ちゃんがおっそろしく妖艶な大人な美女だったり。他にも紅家の高嶺様が私の年齢の倍はありそうな恰幅のいいおばちゃん姿だったり、白家の頭首、白藤ちゃんの父ががっつり筋骨隆々のおじさんだったりと。

互いに互いを指さして驚いてたり、何故か顔を青白くさせていたりと様々な反応を示している。

えーっと、一先ず落ち着かせますか。何故、こうなったのかを説明しよう。

「…今一時的に祝福の効果を遮ってます。ね?本来の姿が解れば、皆互いの見方が変わるでしょう?【年相応】って結構大事なんですよね」

ほら、よくさ?

アルバイトとかしててさ。互いに制服を着てて仕事内容も処理スピードもほぼほぼ同程度できっと相手も同年齢だろうと思って会話をしていて。同じ定時時間で上がろうとしてロッカールームで着替えていると互いに私服姿を見て、【あ、年上だっ】【あっ、年下だっ】と互いに年齢を察してそこから会話がどぎまぎしてしまう、なーんて状況にあったことない?あるよねー?

その後普通に帰宅して次回のアルバイト出勤の気まずさときたら…ねっ!?

まぁ、極端な例だけどさ。

でも【年相応に見える】って結構大事な事だと思うんですよ。

今回の東光様の件だって、今の幼過ぎる姿を令嬢達が知る事が出来ていたら起きなかったと思うんだよね。

そもそも東光様が女を抱く事だって流石にまだ無理だったと思うし。

って私結構良い事言ってると思ったんだけど…。


「林…、本来の林はこんなに綺麗だったんですの…?」

「そ、それは僕のセリフだよ、藤。こ、こんな、綺麗、で色っぽい、なんて…」

「林…?」

「うぅぅ…」


ピタッと白藤ちゃんが王林様の腕にくっついている。

副色姿なら女児が成人男性の腕にじゃれているで済むのに、白藤ちゃんの色っぽいボンキュッボンな体と舌っ足らずな話し方を口の側にあるほくろの相乗効果で色気が倍増している本来の姿で同じようにくっついていると、なんか…年齢制限つけたくなるというか…立派なおねショタが出来上がると言うか…。

少年の顔が少し残った美青年の王林様と妖艶な白藤ちゃん。…うん、やっぱり年齢制限いれよっかっ。

いや、スイッチを切ったらいいのか?いやいや、今切ったらダメでしょ。

……良く考えたら、会議進めたらいいじゃんって話よ。

まだ決まってない事があるじゃないの。

「この部屋に、この装置は置いておくので活用して下さい。どうです?本当の姿を見たら、気持ちの持ち様、変わるでしょう?」

私の言葉に我に返った皆が視線を交わして、王林様はその視線を受けて、そして私を見て大きく頷いた。

「一回皆この姿で会議をしてみたら良いと思います。例えば、秋映さんの罰をどうするか、とかね」

本来の姿に戻ったやんちゃしてそうな顔の青年姿の秋映さんがビクリと体を震わせた。

「そうだね。もう一度、皆で考えてみよう。今のこの状況を、この国をどうしていくべきかを」

その時の会議の空気は、それまでのどこか緩い空気ではなくピリッとした緊張感に包まれていた。

書いてはいないけれど、一度東光は白藤の後を追い掛けて部屋の前で様子を見てた事があります。

一応未来の自分の姉であるって自覚はあったんです。

自覚があるのと自分の行動を把握するは同義ではないの。

結果東光は馬鹿な子ってことになります(*´ω`)

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