表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/42

第二十話 ○○さんに出会った。

「え?なに、そのクソ野郎?えー、びっくりするくらい屑なんだけど」

私の想像以上に凄い反応が返って来て、私の涙はぴったりと止まってしまった。

彼女に陛下と言う相手の立場は伏せて、あらかたを話しつくすとこんな反応が返って来たのだ。

「……スゴイ、辛そうだし…消そうか?」

ビクゥッ!!

とっても優しい声で言っている事が超怖いですのっ!?

「ってのは、流石に冗談だとして。貴女は、その相手をこう…恋愛的な意味で好きな訳ではないんだよね?」

「……幼い時に会ったあの人はとても素敵な人で…。あの人が、あの人のままなら好きになれたかもしれない。でも…」

「あー…うん。そっか。そうだよね。まずは、草色の立場の改善だよね。それから…身の安全の確保も必要かぁ~。その男の本心も探りたいし…まぁ、男に至ってはいざとなったら消せばいいしねっ☆」

最後の言葉が物騒ですのっ!!

と口に出して言えたらどれだけいいだろう…。

「1つ1つやって行けば、色々状況改善出来るかもしれないよ?」

「えっ!?それは本当ですのっ!?」

「うん。本当。…そう言えば、貴女は試練の書って持ってるの?」

「試練の書?勿論あるですの。と言うか、ない人間はこの世界にいないですの」

「その試練の書には何が書いてたの?」

「?、不思議な事を聞くですの。この大陸の人間の試練は皆一緒ですの。試練の【書】とは口ばかりの紙が一枚教会から渡されるだけですの」

「えっ?そうなのっ!?ち、因みにどんなこと書かれてるの?」

「?、やっぱり不思議な事を聞くですの。試練の書に書かれているのは【運命の人と一緒に一つの聖樹の実を食べろ】ですの」

「【運命の人】?、それって恋人とかそう言う?」

「それだけではないですの。友でも家族でも、神が認める【運命】の人ですの」

「へぇ。神が認める、かぁ~…。あれが認める?わー、うざ」

?、なんか今うざって聞こえたような気がするですの…?神をうざって言う人いるんですの…?

……きっと私の聞き間違いですの…。

「この大陸の人間は試練を乗り越えようとあんまり思ってないですの。獣の姿と人の姿。この二つに慣れてしまっているので本来の姿に戻る意味があんまりないですの」

「成程…。でも、大好きな人の本当の姿、自分だけは知っておきたいって思わないのかなぁ」

「ふふっ。そんな風に考えたことなかったですの。でも、それは素敵ですの」

「やっと笑ってくれたね」

「え?」

その後、彼女は当たり障りのない話をしては、私を笑わせてくれた。

こんなに楽しい夜は随分久しぶりだった。

そろそろ空が明らんでくる頃だ。

「私、そろそろ戻らないと」

「私もですの」

「そっか。じゃあ、頑張ってる貴女に、これあげる」

ポンッと肩に何かを置かれて、私は真っ直ぐ前を見たまま受け取った。

「じゃねっ」

木から飛び降りて走り去る足音が聞こえる。

私も降りなければ…でも渡されたこれは一体?

形からすると本、なんだろうけど…。部屋に戻ってからゆっくり見てみよう。

取りあえず木から降りて、私はゆっくりと枯れ井戸へと向かう。

枯れ井戸に飛び込んで横穴を進み枯れ井戸の梯子を登る。

誰もいない。大丈夫。

気付かれない内に自室へと戻る。

鍵は開いていて、警戒しつつそっと中を覗くとそこには既に小蜜達の姿があり、安堵して部屋に戻った。

「お嬢様っ。良かった、ご無事でっ!」

「皆も無事で良かった」

私は自室の中で変わった所が無いか、キョロキョロと見回す。

うん。人が入った形跡はなさそうだ。変に荒らされたりもしてないし、ホッと一安心。

三つ子達も何もなかったようで、被害ゼロだった事実に昨日の判断は正しかったと安堵した。

「所でお嬢様?その手に持っている物は?」

言われて、そうだったと思い出す。私は椅子に座って小蜜にさっきまで話していた顔も名前も知らない女性についての話をした。

そして、別れ際にこの本を渡されたのだと。

「本当ならば知らない人間と話したら危ないと言う所ですが、今回に限っては返って安心します。お嬢様を一人にする事がなかったってことですし。それで、その本は何て本なんですか?」

「そう言えば、そうね。えーっと…」

胸に抱きしめていた本を改めて見てみる事にする。

「……【悪役令嬢マニュアル2】…こ、これはっ」

「お嬢様が見本にしていた本の2巻じゃありませんかっ」

そう。私は草色の民を救う為に我儘な自分を演じる為に手本が欲しくて、文通相手のオーマの公爵令嬢様に相談したら、この本の一巻を進められて小蜜に探して貰って購入したのだ。

知ってる?高笑いって難しいんですのよ。

「2巻出たんですね~。それで前回は悪役令嬢の言葉遣いでしたけど、今回は何に焦点を当ててるんです?」

「えっと待ってね」

ペラペラと本を開いてみると、目次に【華麗なる悪役令嬢の行動】と書かれていて、章タイトルには華麗なる断罪のされ方、華麗なる国外追放のされ方、華麗なる目上男子の落とし方等々が記されていた。

「はえ~…不思議な内容と言うか項目が多いですね~」

「でも、小蜜。この国外追放のされ方。これ、使えるですの」

「え?」

「これを真似て、色々事件を起こして華麗に国外追放されたら、草色の民を引き連れて他の令嬢達の出産を待つ事なく出て行くことが出来るですの」

「…確かに」

「とっても良い物を頂いたですのっ。私これからこれを読み込むですのっ。小蜜、お茶をお願いですのっ」

現状の解決の糸口が見えて、私の機嫌は一気に上がった。

早速私は本を読み進めた。

一通りその日の内に読み終え、たっぷりと睡眠をとった、その日の午後。

小蜜と作戦を練っていると、津軽が部屋に飛び込んで来た。

あまりの慌てっぷりにこっちも焦ってしまいそうになる。

「一体どうしたの?」

小蜜が問うと、津軽は私に向かって文を差し出して来た。

一体なんだと開いてみると、そこには【君に謝りたい。だから、明日の昼、食事を一緒にどうかな?本宮東屋で待つ】と言う文章と熊と聖樹の花の模様があった。

「これ、皇帝家の家紋ですの…」

「…お嬢様、信用して大丈夫ですか?」

正直信用は出来ない。信用は出来ないけれど…。

「行かないと言う選択肢はない、ですの」

「皇帝直々の呼び出しですものね」

「……今度は一体何を聞かされるんですの…?」

今から呼び出しが憂鬱で仕方ない。東屋で即襲われるって事はないと思うんだけど…。

「お嬢様。私達もついていきますっ!」

「ありがとう。心強いわ」

付いて来てくれるなら何かあっても対処出来る…と思いたい。逆に相手に付け入る隙を与える可能性もあるから、一概に安心とも言えないんだけど。

それでも一人で行くのはやっぱり怖いので、付いて来てくれるのは有難い。それと同時に草色の民は私が守らないとと決意も強くなる。

「とにかく行ってみないと解りませんし、謝りたいって言う言葉を一応信用してみましょう」

小蜜の辛辣過ぎる言葉に笑いながら頷き、私は貰った本をぎゅっと胸に抱いた。

時間が過ぎて。

約束の時間になった。

しずしずと約束の本宮の東屋へと向かう。

「お嬢様、東屋ってどこにあるんでしょう?」

「確か、こちらだったと思うのだけれど」

兵に案内させても良いんだけど、私は草色の民を助ける為に肉色への扱いを雑にしているから、肉色の兵士が多いと言うかむしろ肉色の兵士しかいないこの城では頼み辛い。

となれば、もう自分の足で探すしかない。

暫く本宮の庭を歩いていると

「もう、陛下ってば、ここじゃ人が来ますよぉ」

「見せつけてやればいい」

……何か今ちょっと鼻につく声が聞こえたような…。

はぁ。これからあの姿を見なきゃいけないってことですの?

何が悲しくて人の情事の最中に踏み込まなきゃいけないんですの…。

けれど呼び出されたのなら行かなければいけない。

私はわざと足音を立てて一歩踏み入れた。

その足音に気付いた二人がこっちを見る。陛下の上に乗っかる様にしている雑色の令嬢はこちらを睨み付け、ベンチに寝そべりながら令嬢の胸元に顔を埋めていた陛下は…何故か焦ったような顔をしてこちらを見ていた。

「食事を一緒にとのことでしたが…そちらの雑色のご令嬢と食事をなさるのであれば私はいりませんわね?」

「ちょ、ちょっと待てっ。これはっ」

「謝りたいと書いているから一体何の事かと思えば…本当に、貴方は嘘ばかりっ」

ダンッ。

無意識に足を鳴らしていた。

「きゃっ。こ、怖いですわ…。あんな風に足を鳴らすなんて…」

雑色の令嬢が陛下の胸に抱き付いた。

「ちょ、ちょっと離れろっ」

「離さなくて結構ですわ。好きに子作りしたら宜しいのです」

「いや、これはっ、違う、そうではなくてっ」

何を焦っているのだろう?全て今更だ。陛下のその態度も姿も全て想定内のこと。

あぁ、でも、悔しい…。こんな風に皇帝としての名を使って呼び出して、草色を馬鹿にして。

…そうだ。あの本に書いてあったことを、実践してみようか。

そうすれば、私達はさっさとここから立ち去る事が出来る。この窮屈な城と言う檻から。

「あぁ、でも一つだけ言わせて貰うのであれば」

私は懐から扇子を取り出し広げ、口を隠して、二人を蔑む様に見降ろしつつ言った。

「雑色の子でも何でも構わないので早く、一日でも早く男児を成して下さいませ。いい加減待ち疲れて来ましたわ。それでは」

パンッと扇子を畳み、一礼をして私は引き返す。その後を小蜜が続いた。

「待てと言っているっ!」

追い掛けてくる気配を感じて、でも無視をしていると肩を掴まれた。

不愉快で、気色悪くて、私は持っていた扇子でその手を叩き払った。

「触らないで。汚らしい」

「貴様っ」

「何か」

顔だけ振り返り、肩越しに見える歪んだ顔でこちらを睨みつける陛下を負けじと睨みつけた。

怯んだのを幸いに私はさっさとその場を後にした。

自室に戻って来てホッと緊張を解いた私は一気にリラックスモードに入ったのだが…。

「…ひっく…くっ…」

背後からの嗚咽に驚きそちらを向くと小蜜が泣いている。

「えっ!?えっ!?どうかしたですのっ!?小蜜、何処か痛いですのっ!?お腹ですのっ!?それとも耳ですのっ!?尻尾っ!?どこですのっ!?」

慌てて小蜜の体に触れて確かめる。けれど小蜜は何も反応せず私を抱きしめた。

「あん、なっ、あんなのにっ、耐えてて、下さったの、ですねっ!?白藤、ちゃんっ、ご、めんっ、ごめんねっ!一人で向かわせてっ、うえええんっ!!」

「うええんって…ふふっ、小蜜ってば昔から泣き方が変わってないですの…」

「白藤ちゃああんっ!!」

私に抱き付き泣いている声が多分外に漏れていたんだろう。慌てたように三つ子が戻って来て、急ぎ鍵を閉めてお茶を用意してハンカチを用意してくれた。

「大丈夫ですの。もう、慣れっこですの…。だから、小蜜は泣かなくて良いですの。…泣かないで、ね?」

貰い泣きしそうになるけれど、唇を噛んでぐっと堪える。

私の代わりに小蜜が泣いてくれた。それだけで私は救われている。

「今日の分の私の役割は果たしたから、もう休みましょう。皆、今日は少しだけ美味しいモノ、食べましょう?果物とか…ね?小蜜。一杯美味しいもの食べてまた明日に備えるですの」

彼女を抱きしめてそう囁くと、首がもげるのではないかと心配になるくらい上下に振って頷いた。

「今日は私が厨房に取りに行くですの。小蜜は、ここで待っていてですの」

「ひっく、だ、だめですっ、お嬢様っ、ひっくっ、行くなら、私が」

「ふふ。その目で?ウサギみたいに真っ赤な目ですの。大丈夫。むしろ今日は私が行った方が皆が安全ですの。津軽、信濃、秋田、小蜜をお願いですの」

「「「はいっ」」」

私は行ってくると告げて、部屋を出た。

そのまま厨房へと向かって歩きだす。

(…小蜜はきっと気付いていたですの。私が…幼い時に会った陛下に小さな恋心を抱いていた事に。…会えば会う度にその恋心はガリガリと削られて今はもう微かにしか残っていないけれど…)

でも小蜜が、私の変わりに盛大に涙を流してくれたから。

(そろそろ、私も切り替えなくては、ですの。心に何処かと期待を残しているから悲しいんですの。だったら、もう―――この気持ちは捨てよう)

真っ直ぐ前を向いて、足に力を込めた。

極力人に合わない様に厨房へ行くと、そこには何故か人の姿がない。料理人すらいない。どうしようですの。流石に勝手に持って行くのは…。

「果物を頂きたいのですが、誰かいますか?…誰もいないのですか?」

声をかけて中に入ると、「うぅ…」と小さな呻き声が聞こえた。

慌ててそちらへ向かうと、料理長が倒れている。

「大丈夫ですのっ!?」

料理長は副色が美少年で、見た目年齢十歳のオレンジピンクの髪色をしている。

小さいおかげで私の力でも抱き起す事が出来た。右腕に頭を乗せる様に抱えて、何故倒れているのか原因を探す。

外傷はない。かと言ってこの場所に毒が撒かれたような臭いもしない。

なら何かを摂取した?

口に目をやっても泡を噴いてもないし…一体何を…ん?これは…?

小さな爪紅でも入っていそうな瓶が落ちている。蓋が開いてるし…もしかして、これ?

何にしても、何か飲んだとしたなら水をっ。

「誰か、いるのですか…?」

足音と同時に声がした。

助かった。一先ず彼女に知らせればっ。

そして、数歩近づいて来た彼女に声をかけようとした、その時。

やってきた女性…雑色の令嬢は、美丘様は私の姿を確認した途端に小さく口元を歪ませ笑ったかと思うと、


「きゃああああああああっ!!」


大声で叫び声を上げた。

びっくりして私は思わず腕の中の彼の頭をぎゅっと抱いてしまった。

しまったと彼の頭を見ると、怪我はしていなかったみたいで何より。

いや、今はそこじゃないっ。

美丘様の叫び声で人が集まって来てしまった。

「どうなさいましたっ!?」

「そ、そちらの草色のご令嬢が、料理人の彼に毒をっ」

「えっ!?」

えっ!?って私が言いたい。

飲ませた覚えないし、来た時にはもう倒れてたしっ。って言うか、手当てしないと本当に死んじゃうかもしれないですのっ!

「参太郎っ!」

また誰かがやってきた。私が抱きかかえている彼を見て、顔から血の気を引かせた。

「参太郎っ!い、一体どうしてっ!?」

私から彼を奪い取り、泣きながらその体を抱きしめた。

灰色の大きな三つ編みを振りながら、一頻り抱きしめると彼女は私を睨み付ける。

……ちらりと彼女の三つ編みのリボンを見ると、小熊猫レッサーパンダと花蘇芳の家紋があった。そっと倒れている料理人の襟元と美丘様の首にある帯を見た。予想通り同じ家紋がある。

(やられた、ですの…)

はぁと溜息しか出ない。

彼はきっと気を失っている演技をしているだけだ。雑色の令嬢にどうやら私は嵌められたらしい。

「何事だ」

「陛下っ!」

どうやら陛下まで登場したみたい。

これでは、もう、私は完全に犯罪者だ。

だったらそれでももういいかもしれない。いっそ投獄されて、小蜜達の解放を嘆願した方が早いとまで思ってしまう。

「……藤?」

「陛下…」

私の姿を見た陛下は目を大きくさせて驚き、けれど直ぐに周囲を見回してスッと目をすぼめた。

次に来るのは私への沙汰だろう。

目を閉じてグッと覚悟を決めて次の言葉を待っていると。

「…この惨状はなんだ?何故、料理人が倒れている?そして、雑色の令嬢と白藤は何故ここにいる?説明せよ」

「え?説明?」

私に説明の機会を与えると言うの?何故?

今度は私が目を丸くして驚く番だった。そんな私を見て陛下は一瞬だけ目元を和らげふっと微笑むと直ぐに厳しい顔で美丘様の方を見た。

「そこの料理人と女はどうやらお前の所の人間のようだ。まずは、美丘、だったな。先に説明しろ」

「は、はい…。実は彼は私の専属料理人で。私はいつも彼にしか作れないお菓子をこの時間に作る様にお願いしているんです。でも、いつまでも戻って来ないし、探しに来たら…草色の、彼女が彼に毒をっ」

…当然、こう言う説明になるですの。

心の中で盛大に溜息をついて、私は二人から視線を逸らした。

だって陛下が私を信じる訳がないもの。

そう言えば、こう言う時どうしたら良いってあの本に書いてたかな?

えっと、確か…【主人公は自分の事をさも当然かのように説明をするので、それをひっくり返せない状況であれば余計な事は口に出さず、静かに立ち去るべし。主張をすると後でそれを盾に取られる可能性が高い】だったはずですの。

じゃあ、私は何も主張せずに、じっとしていれば良いんですの。

「成程。それがお前の主張か。それで、藤。君の説明を聞いても良いかな?」

「え?」

まさか、本当に私にも説明する機会を?

「そんなっ、私嘘なんて言ってないですわっ。陛下っ」

美丘様が涙を流して陛下に抱き付いた。

…あぁ、これで聞く気はなくなるですの。

私は知らず陛下と美丘様をまるで遠くから無関係な人間のように眺めていた。

「…誰の許可を得て世に触れている。立場を弁えよ」

「え…?」

「えっ?」

私と美丘様の驚きの声が重なった。

まさか陛下がそんな事を言うなんて思わなかったから。

「…藤。何故、君はここに?」

美丘様を引き離し、一歩、また一歩と歩みよる陛下に私は説明しようと思った。

けれど、ふと思い付く。陛下が何故こんな風に言うのかを。

だって東屋に呼び出したのは陛下だ。そしてその場にいたのは陛下と美丘様。謝りたいって言葉は嘘で、昼食を私に食べさせない様にして、ここに来るように誘導して草色に罪を被せて、何かしらの罰を与えようとしているんだ、と。

「……回りくどいですの」

「え?」

「陛下。私達草色を追い出したいのなら、そんな回りくどい事をせずに直接命令を出せば宜しいのですわ。一体何処までが陛下の作戦なのです?もしかしたら初めから?」

「藤…?」

「だとしたらとんだ策士ですわね、陛下。…草色がそこまで憎いのであれば、私達は独立致しましょうか?」

「何を、言っている?」

「私達にだって、戦う術はございます。草色を、私達を馬鹿にするのもいい加減になさいませっ!」

やってしまった、と後悔した。でも、口から出てしまった言葉は撤回出来ない。

私はこんなに怒りやすい性格だっただろうか?

けれど、もう、抑えられない。

ゆっくりと立ち上がり、私は真正面から陛下と対峙した。

「藤。落ち着いて。僕に教えて、何があったのか。僕もちゃんと藤に説明するから」

「いりません。もう、何も聞きたくないし、言いたくない。部屋に、戻ります。陛下が判決を下したのであれば私は檻の中にでも、国外追放でもお受けしましょう。ただし、それは私だけ。草色の民に手を出したなら、その時は…」

私は陛下を睨みつけた。

先程は怯んだ陛下が、今は私の視線を真っ直ぐに受け止めている。

「…僕は、片方の意見にだけ耳を傾けて決を下さない。そんな事は絶対にしない」

「…どうだか。陛下の言葉に、真実味はとうに無くなりました」

陛下の横を通り過ぎ、私は真っ直ぐ自室へと戻った。

出迎えてくれた小蜜達が私が手ぶらだったのに気付き、何かあったと察してくれたが私は何も言わずにただ謝った。

数分後、私達の部屋に沢山の果物が届けられる。

草色の民が届けてくれた果物。何故草色の民がここにと問うと、幸徳から頼まれたのだと言う。

私達は幸徳の優しさに心の底から感謝し、念の為に毒がないかチェックをしてから、その果物を美味しく頂いた。

その日から私達は陛下の呼び出しを全て無視して籠城する事にした。

食材だって幸徳に仕入れて貰えば問題は無い。けれど籠り過ぎも良くないし、いつ陛下が突撃してくるか解らないから。

交代でこっそり夜に外に出る事に決めた。

そして暫くして私の番がやってきた。

もう行く場所は決めている。この前と同じ木の上だ。

枯れ井戸を潜り、花畑に出て木の上へと登る。

会えるかな?って思ったのだ。

ぼんやりと空に浮かぶ月を眺めて彼女を待っていると、トンッと背中に振動を感じた。

「久しぶりだねー」

彼女の明るさが私を安堵させる。

「どう?最近」

「……ちょっと疲れたですの」

「何なに?どうしたの?ちょっとこのがいこ…骨ガラ…いや、ムンク……いいや、この私に話てみてよっ!」

がいこ?骨ガラ?

良く解らない言葉が並べられたけれど、それは気にしない事にして、私はあの後に起きた事を話してみた。

すると彼女はただ相槌を売って黙って聞いていてくれた。

そして、全て聞き終わった後の第一声は。

「やっぱり、消そうか?」

と、恐ろしい一言だった。

流石にその選択は出来なくて話を変えようと、以前に貰った本について話す事にした。

「上手く、役に立たせられなくてごめんなさいですの」

「えー?いや、あれは読み物として書いてるからその通りに出来なくて当然でしょ。それよりも、良く頑張ったね、白藤ちゃん」

「えっ?私の名前、なんで…?」

「うん?それはねー…ごめん、ちょっと待って」

急に声が顰められて、彼女は息を潜めた。

きっと誰かがこっちに来たんだと、私も声を出さずにあたりを見渡す。


オォォォォンッ!!


遠吠えっ!?

野良だっ!!

「ヤバそうな雰囲気だね。…白藤ちゃん、逃げるよっ!」

彼女が私に手を伸ばす。咄嗟に私も手を伸ばした…けれど。

寸での所で掴み損ね、私はバランスを崩して…。

「白藤ちゃんっ!」

彼女の手が伸ばされるが、そのまま掴むことなく背中に衝撃が走る。

カハッと呼吸が一瞬だけ止まり、背中を強打した衝撃で視界が真っ白に染まり、そのまま意識を手放した。

少しでも楽しみにして貰えてるなら、この上ない喜び(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ