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第十八話 熊さんに、出会った。

「本当に、来てしまいましたですの…」

勅命書が届いたからには来ない訳にはいかない。

城門の前で立ち尽くす私達。中々入る勇気がでない。

その所為で門衛に睨まれている。けれど、どうしても足を進める気にならず、門の奥に見える大きな城を遠目に眺めた。

そもそもなんで私の所に勅命書が届くんですの?全く解せないですの。

「…お嬢様。本当に大丈夫ですか?」

「私も心配です。後宮ですから私はご一緒出来ませんし。かと言って、正直小蜜だけだと不安で」

「兄さん。それは一体どう言う意味?」

「言葉のままだ」

私の後ろで小蜜と幸徳が何やら喧嘩をしているけれど、正直今の私はそれ所ではない。

本当に私はここに来るような立場ではないのだ。

琳五家の令嬢が全員招集されると言われたからには来ない訳にはいかないのだけれど。

琳五家とはトゥーティス大陸の五大名家と言われており、他国で言う所の貴族と同じようなもの。高位順にこうおうせいせきはくとなっていて、私は白家の一人娘。

なのだけど、白家は琳五家の中唯一の草色で。こう言う時の集まりも呼ばれる事がなかったりする。やっぱり肉色の方が強いし国を守れる者が多いし、何より美形が多い。

先代の皇帝陛下の時もこうして招集はあったけれど、白家は呼ばれる事はなかったのだ。なのに、

「なんで今回は呼ばれるんですの…」

溜息と共に出た本音。隣で盛大に小蜜が頷いていた。

「…お嬢様。やはり帰りませんか?何か裏がある気がしてならないんです」

「幸徳?」

「最近都周辺では食糧難と聞きます。それに野良が活発化しているとか。そんな時に急な呼び出し。裏が無い訳がない」

「…それはそうかもしれないですの。けれど、皇帝陛下勅命ですの。断る訳にはいかないですの」

「そ、れは…」

「ここまで来てしまったし、皇帝の勅命。一先ず失礼にならない程度に早めに帰還出来る様に頑張るですの」

「お嬢様…」

「片が付いたら直ぐ連絡するですの。早めに迎えに来て下さいですの」

「…畏まりましたっ。お嬢様、ご武運をっ」

幸徳が膝をつき、頭を垂れた。頷いて、歩きだす。その後ろを小蜜がついてきた。

緊張しない訳がない。

けれどここで帰れないのであれば進むしかない。

「白家の白藤と申します。入城の許可を頂けますか?」

門衛に声をかけると、門衛の彼は直ぐに証明書の提示を求めて来た。

私は勅命書の入った封筒と白家の家紋である桜とウサギの文様の入った指輪を見せた。

「御案内致します。こちらへ」

納得してくれたらしい門衛が人を呼び、自分の代わりに立つように言うと案内をしてくれる。

彼にしずしずと付いて行く。

正直あまりに豪華な城だから、つい周囲をキョロキョロと見渡したくなる。けどそれをすると流石にはしたないのでしません。

真っ直ぐに案内されたのは真正面から見て城の左奥。

一度中庭を通りまた門に着いた。その門の前に立っていたのは女性の門衛。

私を案内してくれた彼は右側に立っていた女性門衛に歩み寄り、「白家のご令嬢だ」と耳打ちするとくるっと私の方を向いて。

「ここからはこの者が御案内致します。では、私はこれで」

言うとあっさり立ち去ってしまった。

「あ、はい。ありがとう」

その後ろ姿に素直にお礼を言うと、彼は一瞬驚いたように振り返り目をキョトンとさせて、それでもハッと我に帰り一礼して去って行った。

「お嬢様。御案内致します。どうぞこちらへ」

今度は女性門衛が案内してくれるようだ。

「えぇ。ありがとう」

門が開かれて彼女を先導に歩く。

そして案内された場所は、実家の屋敷の数倍はあるような一室だった。

「えっと…」

「では、御用の際はそちらの呼び鈴を鳴らして下さい。お嬢様専属の者がこちらに参ります。先に到着している荷は箪笥の前に置いております。それでは失礼いたします」

そう言って彼女は部屋に足を踏み入れず去って行った。

残されたのは私と小蜜二人だけ。

「……凄い寝台、ですの」

「ですね。天幕まで付いてますよ」

「箪笥に化粧箱、鏡台、屏風に浴槽まで物凄い立派ですの」

「ですね。細工全てに金や螺鈿、瑠璃、真珠、銀、様々な光りものの飾りが光ってますよ」

「敷かれている絨毯、見た事のない程の鮮やかな白ですの」

「これ、北の大陸キリスタにしかいない動物の毛で出来てますよ」

「……小蜜。私達何故ここにいるんですの?」

「さぁ…」

思わず二人で立ち尽くしてしまう。

見た事もない豪華な部屋に入って良いのか、本当に尻込みしてしまう。

「…ここでこうしていても仕方ありませんし。確か明後日に謁見の間で今回の招集についての説明があるらしいですし、一先ず豪華な一室の気分を味わいましょう。ね、お嬢様」

「はいですの。ここまで来たらどうしようもないですの」

「そうですよ。あぁ、それからお嬢様。口調、戻ってますよ。お子様言葉は気を付けて下さいませ」

「…ごめんなさい。気を付けるわ」

荷解きを二人で終わらせて、折角なので豪華な椅子に座って二人で休むことにする。

「…お茶、入れてきましょうか」

「え?でも大丈夫なの?ここはハッキリ言って肉色の縄張りよ?」

「それはそうですけど。だからって遠慮していたら、危ないじゃないですか。ご飯が来ない可能性もありますし。肉色の縄張り(敵地)だからこそキチンと対策を練らなければ」

「そう、ね。うん。じゃあ、任せたわ」

「はいっ!それじゃあ、行って来ますねっ!」

そう言うが早いか動くが早いか。小蜜は副色姿だと言うのに素晴らしい速さで部屋を出て行った。

(ふぅ…暫くは副色姿が続くんですの。草色姿の方が楽なのに…我慢、ですの)

考えて、ぼーっと小蜜が戻ってくるのを待って数時間。

「…流石に遅すぎるわ」

あの速さで駆けて行ったのに、こんなに戻って来ないなんておかし過ぎる。

探しに行こう。

ゆっくりと席を立ち、部屋を出る。

…私達が案内されたこの部屋は本宮から一番遠い場所。奥の奥にある部屋で最早離れと言っても過言ではない。それは何の苦でもないが、こうして外に出ると流石に地図が欲しくなる。

部屋を一歩出て右、左と現在地を確認して、左にある扉は門衛がいるから外へ出る門なのだろうと理解した。

ならば、右だ。

一歩二歩と歩を進めて、曲がり角を曲がった所で、

「お黙りなさいっ!!」

急な金切声に思わず耳を塞いでしまった。

一体何事かと曲がり角から身を乗り出さずこっそり覗き見ると、そこには黄色の着物ワンピィスを着られた女性が誰かを怒鳴りつけていた。彼女の簪には家紋が…。

(キツネと稲穂の家紋…黄家のご令嬢ですの)

「草色の下民達がこのような高貴な場所で動き回るなどっ。恥を知るべきだわっ」

「も、申し訳ございませんっ。ですがっ」

「口答えですのっ!?この私にっ!?」

(…キツネなだけあって口と頭の回転が速過ぎですの。そもそも誰に向かって怒ってるんですの?)

耳を澄ませてみると、怯えているのは草色の娘が三名。その内一人が…あの声は小蜜ですの?

成程。他家のご令嬢に捕まっていたから、帰って来れなかったんですのね。

…助けに行かなければ、いけませんわね。

白い着物ワンピィスを軽く払って。ゆっくりと、歩を進めた。

(普通に行っては負けてしまうですの。…困った時は笑って誤魔化せって、文通していたオーマの令嬢が仰っていましたですの)

しずしずと進み、黄家令嬢の脇を擦り抜けて、私は彼女達の前に立った。

「誰よ、貴女っ…その白い着物、それにウサギの紋…貴女、白家の令嬢かしらっ!?」

「お初にお目にかかります。白家が娘、白藤にございます」

私が静かに手を組み頭を垂れると、黄家のご令嬢はツンと鼻を天に向けて持っていた扇子を大きく広げた。

「また草色のっ!由緒正しき城にこんなに草色が紛れ込んでいるなんてっ。まして全く躾もされていないっ!」

「躾…?」

「えぇ、そうよっ!貴女の所の使用人がよりによってこの私の前を横切ったんですのよっ!この黄家の令嬢である黄美おうみの目の前でっ!」

(……目の前で…?、ずっと目を閉じているのかと思っていましたが、もしかしてその目開いているんですの?だとしたら凄い糸目ですの…)

「貴女っ!今私を糸目と思いましたわねっ!?」

「………いえ、そのような事は…」

「キィーっ!!ちょっと目がぱっちりしてて、白いふわふわの髪をして、綺麗な白い肌をしているからってっ!!」

(……私、もしかして褒められてるんですの?)

「とにかくっ!とっととその下民達を連れてってしっかり躾をなさって下さいませっ!!失礼しますわっ!!キィーっ!!」

…言いたい事だけ言って立ち去ってしまわれたですの…。

お城で、あんなに声を張り上げて怒鳴れるなんて、凄い度胸ですの。

「お、お嬢様…」

声をかけられて、そう言えばと小蜜の事を思い出す。

振り返って、小蜜を見るとその手には小さなネズミ…ハムスターがいた。

「その子が?」

「そうです。黄家の令嬢の前を横切ってしまった娘です」

そっと近づきその手の中を覗くと、その小さな体を震わせて前足で涙を必死に拭っていた。

「まだ、幼い子ではなくて…?」

「そうなんです。お嬢様…」

「大丈夫よ、小蜜。その子も、そして後ろにいる者達も皆私の下へいらっしゃい」

「は、はいっ」

「畏まりましたっ」

私は彼女達を引き連れて、自室へと戻った。

自室へは小蜜が最後に入り、しっかりと鍵をかけた。

そんな小蜜からハムスターを受け取り、そのまま椅子へと腰かける。

「…これで大丈夫ですの。もう、貴女を草色と笑い飛ばす人はおりませんですの。さぁ、涙を拭いてですの」

ゆっくりと怖がらせない様に彼女の頭を撫で続けると、やがて泣き止んだ彼女は私の手の平から床へと飛び降りて距離をつけ、副色姿になった。

「「「助けて頂いてありがとうございます」」」

声が三つ重なる。その場にいたのは同じ顔をした女性三人。淡いクリーム色の髪を結い上げて、使用人用の着物を着ている。

「私は津軽。長女にございます」

「私は信濃。次女にございます」

「私は秋田。三女にございます」

草色は多産の家系が多い。三つ子であろうが最多七つ子であろうがあまり驚きはしない。ただ、副色姿が被るのは珍しいけれど。

「草色はただでさえ目を付けられやすいのだから、気を付けなくては駄目ですの」

ここは言い方が悪いかも知れないけれど、敵地に等しい。

少しでも気を抜いていたら苛められる。だから使用人と言う立場であるなら尚更気を付けなくてはいけないのだ。

「申し訳ございません。我々も本来草色の我々が城に勤められる訳がないと思いつつも、実際こうして勤められる機会を頂き浮かれていたのです」

「けれど、使用人の中でも末席も末席。肉色の使用人の中でも更に下僕の様な扱いを受けていて。仕事の量が追い付かず…」

「出来る限り時間を短縮せん為と草色、副色の姿を使い分けていたら」

「令嬢の前に飛び出してしまった、と言う事ですの?」

最後の言葉をとるように確認すると、三人は頷きそっと両膝をついた。地に三つ指をつき深々と頭を落とした。

その行動に私は慌てる。

「頭を上げなさい。白藤様は貴女方と同じく草色の姫です。恐ろしい処罰を与えたりなど致しません」

小蜜がそう言うと、彼女達三人は頭だけを上げて私を見た。

「処罰などしませんですの。むしろ貴女達が望むのであれば、私の下へ来ても構いませんし、城から去りたいのであれば私の里の就職先を斡旋するですの」

言うと彼女達の目にはみるみる涙が溜まって行き、そして盛大に泣いた。

余程怖い目に合ったんだ、と。改めてこの城が如何なる場所か身に沁みて解った気がした。

ポムポムポムッ。

三つの音が鳴って、三人が小さな三匹のハムスターになり、それでも泣いている。

きっと気が抜けたんだ。

私はその三匹をそっと手で掬って、ベッドの上に置いて三人の気が済むまで撫で続けた。

その後、泣き止んだ三人はそのままベッドで眠ってしまったので、私は小蜜に一つ仕事を依頼した。

この子達と同じような虐げられた草色の使用人はいないか、調べて来て欲しい、と。

小蜜は直ぐに了承してくれて、部屋を出て行った。

(…城は確かに肉色の勢力が強い場所ですの。でも、皇帝陛下は草色である私に優しかったですの。助けてくれたんですの。…草色のこの扱いは皇帝陛下の御意志ですの?それとも…)

過去に助けてくれた熊な陛下の姿を思い出し、城の現状と過去の姿が重ならず頭を抱えた。

翌日。

調査を終えた小蜜は紙を私に渡した。開くと、そこには城内の幹部やそこに従う下働きの更に下で働く奴隷のような扱いを受けている草色の人達の名前を書き記していた。

「どうやらこの城の肉色の使用人達の更にその下に草色の下僕がいて。その者達に仕事は全て押し付けていたようです。皆やつれていたり、体調を崩していたり、酷い人だとその口に出して言うのは憚られる様な事をされている女性も…」

「……なんてことですの。私達草色は例え肉色に敵う力はなくても皆技術力が特化しているですの。肉色の方々が着られている服は全て草色の民が作っていると言うのに…酷いですの…」

「どう、なされますか?お嬢様」

小蜜が心配そうに伺いをかけてくる。

私としては助けると言う選択肢しかない。けれど、そうなると草色と肉色が争う事になるかもしれない。

下手な事は出来ない。争いとなったら草色が肉色に敵う訳がないのだ。かと言って私達だって【人】なのだ。人としての尊厳を草色の民たちから失わせる訳にはいかない。

「明日、陛下との謁見でタイミングを見て聞いてみるですの。ひとまずその結果でどうなるか様子を見てみる、ですの」

「そう、ですね…。御無理はなさらないで下さいね。お嬢様。私はずっとお嬢様の味方ですからっ!」

「小蜜…ありがとうですの」

「あと、お嬢様。口調」

「あっ…ごめんなさい。ありがとう。小蜜」

二人で顔を突き合わせ微笑み合い、私達は明日の為に体を休める事にした。

そしてまた翌日。謁見の日。

私を迎えに来た家来が案内するまま部屋を出て、門を抜けて城の中央へと進む。

何度か角を曲がり、辿り着いた場所はとても広い空間で。中央に赤くて太い絨毯の道。その先には数段の階段があり一等高い所に玉座があった。

案内の兵士は入口の時点で足を止めていて、今は私一人。

既に玉座の段の前には、四人の女性がいた。

「草色の分際で一番最後の御登場ですわよ」

黒い長髪に黄色の挿し色が入った赤い着物姿の令嬢。目つきが鋭くその爪には真っ赤な爪紅。

「礼儀知らずってこう言う事を言うのよね、お姉様」

赤い着物姿の令嬢の側にいるのは、同じく赤い着物を着ているけれど何処か幼さが残る黒髪の令嬢。光の加減では黒髪がグレーや茶に見える不思議な髪色をしている。

「草色が同じ空間に居るだけで耐えられませんわっ!」

またもやキィー!と黄色の着物を振り乱し騒いでいるのは、一昨日の黄家の令嬢黄美様。

「……騒がしいですわ。陛下がいらっしゃるのです。お静かに」

ブルーグレーの髪を一本に結い上げた青いお着物を着てらっしゃる令嬢がそう言いながら彼女達を一瞥し、最後に私を見た。

(赤い着物…そして虎と梅の花の家紋の入った首飾り…あの方は紅家の高嶺たかね様ですの。その側にいるのは…山猫と杏の花の家紋の額飾り…ではあの方は赤家の月紅げっこう様ですの。確か紅家と赤家は親戚関係にあったはずですの。それからあの青いお着物のご令嬢は…腕輪に狼と椿の花の家紋…青家の千雪ちゆき様…。成程、五家の令嬢全てここに揃っているですの)

さっき何か言っていたようだけれど、気にしても意味はない。

私は歩を進め、彼女達の一番後ろに着いた。そしてにっこりと微笑む。文通相手の公爵家のご令嬢が仰ってたですの。笑顔は最大の武器で防御だって。

彼女達が何か言おうと口を開いたその時。

私が入った後に閉まったはずのドアが開かれた。私達は急ぎ絨毯から退き、膝をつく。

私の着物は白。汚さない様に気を付けなければ…と言えど皇城で着たない場所などないんだけども。

中央を颯爽と通り過ぎ、陛下はマントを翻して玉座についた。

「琳五家の令嬢達よ。良く集まってくれた」

私達はその声を聞いてから順番に陛下の前に出て膝を折る。

「そなたらを呼んだのは他でもない。皇帝の妻になり子を成して貰う為だ」

(後宮と言う場に呼んだからには、そうだろうなとは思っていたですの。…でも)

「順、人数は問わぬ。琳五家の血を継ぎ、皇帝の血を継ぎ、男児であれば見目は問わん。男児を多く産んだものには褒美を授けよう」

(私達は…子を産む道具ですの…?)

「これから毎日夜に足を運ぶ。決して逆らわずに受け入れろ。あぁ、それから白家の娘」

呼ばれるとは思わず真っ直ぐに陛下の目と目を合わせると。

陛下は笑った。

けど、それは私が知っている笑顔ではなくて。口の端だけを上げて私を嘲笑う。

「周りが煩くて琳五家を全て招集せねばならずそなたを呼んだが、草色に用はない。これから数年、大人しくしていろ。子が出来たら頃合いになったら帰してやる」

令嬢四人が私を見て一緒に嘲笑う。

何故だろう。ここは適地だと知っていた筈なのに、胸が痛い。

私は、きっとどこかで…。ううん、今はそれを気にしている場合ではないですの。

声をかけるタイミングは、きっと今だ。普通に会話しては負けてしまう。だったら…。

「陛下。発言を許可いただけますか?」

「なんだ?」

「その条件だと私に利点がありませんわ」

陛下を真似て口の端だけで笑う。そして、ダンッと床を足で叩いた。

「だって陛下の勝手で私を里から呼び寄せて、私は子を産まずにこの狭っ苦しい所に拘束されるんですのよ?なのに、大人しくしていろ?冗談じゃありませんわ」

ふんっ、と髪を払ってもう一度足を鳴らすと、陛下は何故か面白そうにまた笑う。

「ほう?ならば子を望むか?」

「いいえ?いりません。私が望むのはただ一つ。褒美ですわ」

「褒美?」

「えぇ。大人しくした暁には、琳五家から私達白家を除名して下さいませ」

「…除名だと?」

「私達、肉色と草色は相いれない存在ですから。そちらもその方が今後楽でしょう?いかがですか?」

「ほう…。いいだろう。面白い。では子が産まれ解散になった日には白家を除名しよう。それで良いか?」

「えぇ。ありがとうございます」

これで良い。これで私達はもうこの城に関わることはなくなる。

そして私はいなくなるまでの間に草色の民を私の下に集めなければ…。

これから令嬢四人は陛下と話しをするのだろうし、私は一礼して先に謁見の間を出た。

そのまま一人で後宮の自室まで、少し急ぎ足で戻る。

部屋につくと小蜜とハムスターの三つ子が出迎えてくれた。急いで後ろでに鍵を閉めて。

ずるずると扉を背に沈み込んだ。

「お嬢様っ!?」

「……何故、かしら…」

「え?」

「陛下に、お会い、したですの…。私の知っている陛下の姿、そのままで…。陛下は世継ぎを作る為に琳五家を招集した。それは想像していたんですの。でも実際に陛下を見たら…陛下に言われたら…胸がしくしく痛むんですの…苦しいんですの」

「お嬢様…」

「あの時の、口づけはなんだったんですの…?陛下が、草色を下に見る人だったなんて…じゃあ、あの時の優しい陛下は何だったんですの…?」

ボロボロと知らず涙が溢れていた。

「お嬢様…」

「「「白藤様…」」」

慌てて駆け寄り、小蜜が私を抱きしめてくれる。同じように三つ子が私の側に膝を折って手を握ってくれる。

「ごめんなさい…これから、私は皆の為に頑張らなきゃいけないのに…」

「いいんですよっ!泣きましょうっ!私達は、草色の民は皆、お嬢様のっ、ううん、白藤ちゃんの味方だよっ!!」

小蜜が幼い時のように私を呼んで。その優しさにまた涙が込み上げる。

どうしても、気持ちが前を向いてくれず。

私の知っている陛下と違う陛下の姿にショックが強過ぎて。

私は一日涙が枯れ果てるまで泣いた。

泣いて泣いて泣き腫らした私は、知らぬ間に眠りについていた。

だから、私は知らなかった。

その日の夜。

私の部屋の前に陛下が来ていた事に…。

赤い木の実は知恵を授けた~( ̄д ̄)

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