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Operation Soul~若者達の幽霊退治~  作者: 杉之浦翔大朗
第四章 UMA ATTACKS
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44 探索と遭遇

 昼飯を終え、軽くティータイムを挟んでから、午後の探索に乗り出す。



 まずは上陸した砂浜に戻り、島の外側を一周することになった。

 今回は燃料節約の為、戦車は置いていくこととなる。

 神谷が名残惜しそうに見つめていたが、お構いなしに引きづっていく。



 十分も歩くと、少し前まで乗っていた大発が見えてくる。


「意外と早かったねぇ。やっぱり、道が分かっていると楽だね」


 藤原が何か言っているが、杉野達の耳には入ってこない。

 正確には、暑さで頭がぼーっとして、それどころではないのだ。


「あづーい、暑すぎるー」


「藤原隊長、水をくだされー」


「もうダメ、暑すぎて死んじゃう」


 男三人が暑さにやられてグロッキーになっている中、意外なことに八坂は平気そうな顔で男共に呆れていた。


「あんたら、これくらいでへばるとかマジでウケるんですけど」


 というか、馬鹿にしている。


「なんで、八坂さんはそんなに平気そうにしてるの? こんな暑いのに」


 杉野が聞くと、八坂が得意げに答える。


「これくらい、東京のコンクリートジャングルに比べれば序の口よ」


 そう言いながらも、被っていた麦わら帽子を目深に被りなおす。

 八坂も女の子らしく日焼けには気を配るようだ。

 好きな子に負けられないと、杉野は着ていたTシャツの袖を捲り、首に掛けていたタオルを湖の水に漬けてから、頭に巻いた。

 少し臭いが、頭がヒンヤリとして気持ちいい。

 これなら、熱中症にならずに済みそうだ。

 いくらか元気を取り戻した杉野を先頭にして、一行は砂浜を進んで行く。



 しばらく、湖畔を歩いていくと、遠くの方に錆びついた倉庫が見えてきた。


「あれはなんでありますか?」


「うーん、何かの倉庫っぽいけど……」


 神谷の問いに、藤原は途中まで答えて、その先を言い淀んだ。

 そして、藤原が倉庫に近寄ると、窓から中を見て驚きの声を上げた。


「こ、これは!」


「ど、どうしたのでありますか!?」


 杉野達も気になって、藤原と同じように窓から中を覗いてみる。

 すると、巨大なカヌーのような飛行機が放置されているのが見えた。

 緑の機体に煤けた日の丸が描かれており、その飛行機が旧日本帝国軍の物であるということが分かる。


「いやはや、こいつは興味深い。こんな所に二式大艇があるとはね」


 そう呟いた藤原が、近くにあったサビサビの扉から中に入っていく。

 杉野も、藤原にくっついて一緒に入っていった神谷の後に続いて、中に入る。

 外からだと気づかなかったが、この場所は倉庫ではなく水上機用の格納庫だったようだ。

 その証拠に、建物の大部分に水が張ってあり、開きっぱなしになった大扉を通じて湖と繋がっていた。

 張られた水に浮かぶその水上機の胴体には、淡水とはいえ長年に渡り水に浸かり続けたせいなのか、所々に茶色い錆が付いていた。


「こりゃ、飛べねぇだろ」


 後ろから、坂田の残念そうな声が聞こえた。


「いや、エンジンさえ動けばいけるんじゃないかな。燃料がどっかに残ってればいいけど……」


 このまま放っとくと脱線してしまいそうなので、慌てて杉野が修正する。


「飛行機飛ばしてる場合じゃないっすよ! 今日はUMAを探しに来たんでしょう?」


「おっと、そうだったね。それじゃ、名残惜しいけど先に進みますかね」


 そして、元の道に戻り、島を一周するだけの退屈な旅を再開した。



 それから二十分も歩くと、スタート地点の大発が見えてきた。

 思いのほか、早めに終わってしまった旅の成果は水上機一機だけという、なんとも残念な結果となった。

 どうやらこの島では、UMAよりも兵器を見つける方が簡単なようだ。

 さすがに、このままでは終われないので、一旦、昼食をとった広場に戻り、小休憩を挟んでから探索を再開することにした。



 休憩中、行方不明になっていた神谷に色々と質問するのを忘れていた杉野達は、思い切ってあの時の事を聞いてみた。

 もちろん、大発から落ちた時の事だ。

 神谷が言うには、突然の揺れで大発から落ちてしまい、びっくりして浮かび上がれなかったらしく、危うく溺れ死ぬところだったらしい。

 何故助かったのか聞いてみると、本人もよく覚えていないようだ。

 なんでも、何者かに凄い勢いで引っ張られたとかで、気づいた時には砂浜に打ち上げられていたらしい。

 それからは、この広場を発見し、そこら辺に捨ててあったヘルメットに草や葉っぱをデコレートしてギリースーツ風にしたりして、遊んでいたという。

 まあ、何はともあれ無事で良かったねということで、神谷への質問会は平和的に終わった。



 休憩を終え、今度は島の奥を探索することになった。

 ただ、すでに午後四時を過ぎてしまっているため、あくまで偵察のみにとどめ、本格的な探索は明日に回す予定だ。

 少しばかし、バテ気味な杉野達だったが、帰ったらまた藤原のご飯が食べられるということで、残った気力と体力をふり絞って、島の奥へ歩き始めた。



 広場からいくらか歩くと、小さな小川が見えてきた。

 その小川の水はとても澄んでいて、川底にある小石の一つ一つがよく見える。

 ただ、川とはいっても魚などはいなく、イモリやカエルなどの小動物すら見当たらなかった

 藤原が背負っていたリュックからコップを取り出し、小川の水を掬うと、腰に付いてるハイテクな機械に注ぎ込んだ。


「ふむ、この水は飲めないね」


 どうやら、飲める水かどうかを調べる機械らしく、機械に付いている液晶にはテトロドトキシンやシガトキシンなどの毒物の名称が表示されている。


「ひえ~、こんな奇麗なのに飲めねぇのかよ!」


「見た目では分からないもんだよ。にしても、こんな淡水湖のど真ん中にあるような島の小川でフグ毒はともかくシガテラ毒みたいな海水魚しか持ってないような毒素が検出されるのは何故なんだ? もしや、淡水魚にもシガテラ毒が広まっているのか?」


 何やら、ぶつぶつ言い出した藤原を放っておいて、杉野達は先へ急ぐ。

 何かしらの手がかりを見つければ、帰って晩飯を食えるのだから、科学者の自問自答に付き合っている暇はないのだ。



 藤原を置いていってから、小川を伝って少し歩くと、今度は洞窟を発見した。

 大口を開けて、杉野達を誘っているようにも見えるその洞窟の中は、日が落ちてきたからなのかほとんど見えない。

 しかし、洞窟の上の方をよく見てみると無数の赤い瞳がぱちぱちと瞬きしていた。

 不思議に思った杉野が、藤原から支給されたマグライトで照らしてみると、そこには何匹もの蝙蝠がひしめきあっていた。

 その時、ライトの光を当てられてびっくりしたのか、大量の蝙蝠が夕日でオレンジ色に染まった空へと飛び立っていった。

 杉野達がその光景を見てぽかんとしていると、後ろから藤原の声がした。


「今、龍がいなかったか! 黒い龍が!」


「龍? あー、あれは蝙蝠ですよ」


 杉野が答えると、さっきまで喜々として蝙蝠の群れを見ていた藤原の表情から生気がなくなった。


「そんな、せっかくUMAを見つけたと思ったのに……」


 藤原が弱々しい声でそう呟くと、広場の方角へトボトボと歩いて行ってしまった。


「おいおい、杉野さんよぉ、適当に話を合わせとけばいいものを、そんな現実を叩きつけるようなことを言っちまったらかわいそうだぜ。それに、あのままにしときゃ、UMAだかUFOだかを捕まえたと思い込ませて、早めに終わらせることだってできたんだぜ」


 坂田に言われて、杉野は自分がさっき言ってしまった言葉を頭の中で繰り返して、深く後悔した。


「どっちにしろ、あの博士のことだから、龍に見える蝙蝠の群れってくらいじゃ騙せねぇだろうけどな」


「とりあえず、藤原さんの後を追わなくちゃ! あの人独りだけにしたら、何するか分かんないし」


 八坂がそう言いながら広場の方へ走っていくも、他の三人はその後をゆっくりと付いていくだけだ。


「大丈夫だろ。ショック受けてるっつっても、そんな変なことするような人には見えないし」


 坂田は無意識に藤原を信頼していた。

 それは、八尺様を殺してしまったことに対する自責の念なのか、それとも自分達の上司と比較してまともそうに見えているのか、あるいは他の理由なのか。

 その答えは、坂田自身にも分からなかった。

 ただ、神谷の妄信的な信頼とは違うのは確かだ。

 しかし、そんな坂田の藤原に対する信頼も、八坂が言ったある一言によって無惨に砕かれた。


「でも、あの人ってうちの博士の従弟なんでしょ? そんな人、信用できないって!」


 坂田と杉野は、未だに藤原を妄信している神谷を置いて、広場へと走り出した。



 洞窟から広場ヘはそんなに遠くはなかったのだが、意外なことにトボトボと力なく歩いていた藤原の方が先に着いていた。

 そして、何故か自分の戦車へ乗り込もうとしていたので、少し遅れてきた杉野と坂田が慌てて止める。

 どうにか、藤原を戦車から引きづり降ろすことに成功し、事情を聞いてみると、どうやら戦車で蝙蝠の群れを撃とうとしたらしい。


「なんで、そんな馬鹿なことをしようと思ったんですか?」


 杉野が理由を聞いてみると、藤原がぶつぶつと途切れるように答えた。


「蝙蝠は……嫌いなんだ……臭いし……紛らわしい」


 拗ねている子供のようになってしまった藤原を気遣って、八坂が言う。


「晩御飯とかテント立てるのとか私達がやっときますんで、藤原さんは少し休んでてください」


「ありがとう……じゃあ、お願いしようかな」


 藤原の答えを聞いて、八坂が他の三人へ指示を出していく。



 料理は八坂一人でやるらしいので、男共はテントを立てることになった。

 まずは、藤原の戦車に括り付けられていたテント一式を解き、広場の真ん中辺りまで持っていく。

 次は骨組みを組み立てるのだが、これがなかなかに難しく、男三人がかりで三十分もかかってしまった。

 そうこうしてるうちに、カレーのいい匂いがしてきた。

 それは、八坂の晩御飯がもうすぐ出来上がるという合図だ。

 テントを立てる前に、八坂から終わるまで晩御飯はお預けだと言われているので、早くしないといけない。

 一応、八坂用の一人用テントはもうすでに立て終わった。

 比較的簡単に立てられるAフレーム型テントだったので、そこまで時間はかからなかったのだ。

 しかし、杉野達、つまり男達四人が寝るテントは大きめのロッジ型テントだったため、立てるのに時間を要する。

 それでも、どうにかして晩御飯ができる直前に立て終わることができたのは、坂田の腕力でも杉野の主人公補正でもなく、神谷のキャンプ経験だろう。

 神谷は、子供の頃に父親と一緒に奥三河の方でキャンプをするのが日課だったので、こういうことには慣れていた。

 ただ、テントを立てるのは父親に任せっきりだったので、今回もほとんど指示役に専念していた。

 そのおかげで、他の二人に負担が集中してしまったが、結果的に早く終わったのだから、問題はないのだ。



 無事にテントを立て終わり、楽しみにしていた晩御飯を食す。

 今晩のメニューは「サバイバルカレー」。

 これは、少し前にエリックから教えてもらったメニューだ。

 このカレーが他と違うところは入れる具材だろう。

 どんな具材を使うのかというと、それはもうなんでも使う。

 そこらへんの雑草や木の実、果ては虫なども具材として使えるし、一見すると食えなさそうな木の皮などもよく煮れば食べられる。

 味に関しては心配ない、なぜなら全てがカレー味になるからだ。

 今回のサバイバルカレーは虫や木の皮などのゲテモノは入ってないが、シダやヤシの木の葉っぱ、ブルーベリーやクランベリー、砂浜で拾ったヤドカリなど色々と入っている。

 味は辛めのカレー味だが、ベリー系を噛むと酸っぱい味が口の中に広がる、なかなか個性的な味であった。

 ちなみに、毒性がないことは拾った時に藤原に確認してもらっているので、心配しなくても大丈夫だ。



 辛いカレーを食べ終わり、食器を片づけたら――今回は短期探索なので、紙皿を使っている――、今度は甘いデザートだ。

 今晩のデザートは「サバイバルジュース」。

 これは、ヤシの実から取れたジュースにブルーベリーを加え、ベリーを潰しながらよく混ぜただけのシンプルなジュースなのだが、これがまた美味い。

 スポーツドリンクのような素朴な味のヤシの実ジュースにブルーベリーの酸っぱさが加わることにより、夏の蒸し暑い夜にピッタリの飲み物になった。



 ご飯を食べて空腹を解消し、美味しいジュースを飲んで喉を潤した後は、入浴、といきたいところだが、今回はドラム缶風呂もシャワー付きのプレハブ小屋もないので、各自で濡れたタオルを使って身体を拭くだけとなった。

 もちろん、外で拭いたりはせず、テントの中でやる。

 でないと、蚊に刺されて、身体を拭くどころじゃなくなるからだ。

 ほんとはシャワーの一つでも浴びたかったのだが、そんな物が無人島にあるはずもないので、諦めるしかないだろう。

 せめて、明日にはUMAを捕まえて、その日のうちに帰れるように努力しようと、杉野達は心に決めた。



 身体を奇麗にしたら、後は寝るだけだ。

 こんなジャングルの中でも真夏の夜は蒸し暑く、寝苦しい。

 杉野もしばらくは寝返りを繰り返して、眠れない夜を過ごすことを覚悟していたが、疲れていたのか三十分ほどで眠れてしまったのだった。



 杉野が眠りについて一時間が過ぎた頃、テントの中でのそっと立ち上がった影が一つ。

 その影がテントから出ると、月明かりに照らされて、何者かがあきらかになった。

 影の正体は、男性陣の中で一番早く寝ついた神谷だった。

 神谷はトイレが近く、特に出先では緊張してしまい、いつもよりも酷くなる。

 この時も、久しぶりのキャンプで緊張してしまったのだ。

 それと、寝る前に冷たい飲み物を飲んで、腹を冷やしてしまったのも原因だろう。

 とにかく、早く用を足しにいかなければ、ダムが決壊してしまう。

 しかし、夜のジャングルには言いようのない怖さがある。

 何処からか聞こえてくる鳥の声、ガサガサと揺れる草木の音、暗闇に光る獣の目、その何もかもが小心者な神谷の行動を制限するのに十分な怖さだ。

 日々、幽霊退治に勤しむような神谷でも、得体の知れない物に対する恐怖心というのは人並みにあるのだ。

 獣除けに鳴らしているドビュッシーの『月の光』さえも、妙に不気味に感じてくる。

 しかし、このまま我慢していても、いつかは漏らしてしまう。

 神谷は勇気を出して、近くの茂みへ一歩踏み出した。



 茂みを突き進み、テントからだいぶ離れた所で用を足す。

 かなり我慢していたので、結構な勢いで出てしまい、神谷は少し恥ずかしくなってきた。

 さらに、放物線を描いて地面へ垂れ流されるそれが月明かりでキラキラと輝くので、神谷の羞恥心は頂点に達した。

 やっとの思いで出し切ると、社会の窓を閉めて、そそくさとその場を立ち去ろうとする。

 しかし、その試みは後ろから聞こえてきた物音のせいで、失敗した。

 恐る恐る、神谷が後ろを振り返ると、そこには小さな獣の影が見えた。

 月明かりのみだとよく見えなかったので、持ってきていたマグライトで照らしてみると、その影は小さな子狸だった。

 テントの近くで見た、暗闇に光る獣の目の正体だろうか。

 神谷がそんなことを考えているうちに、その子狸は何処かに逃げていってしまった。

 どうせなら、写真でも取っておけば良かったと後悔しながら、神谷は再び帰路に着いた。



 しばらく、ジャングルの中を進んでいると、『月の光』のメロディが聞こえてきた。

 広場に着いたのだ。

 見慣れた光景が見えてきたのと、癒し系の音楽の効果で、神谷は心底リラックスしてきた。

 今なら、すぐに寝つけるだろう。

 早速、テントに入ろうとすると、今度は頭上から音が聞こえた。

 今度はどんな獣がいるのだろうと、少しばかし期待しながら神谷が上を向くと、夜空にピカピカと煌めく円盤が浮かんでいた。


「なんだ、空飛ぶ円盤か」


 神谷がそう呟き、再びテントの入り口を開け、中へ入っていく。

 身体を半分、テントの中に入れたところで、自分がとんでもないことをしているのに気づいた。

 慌ててテントから出て、夜空を見上げると、幸運なことに円盤はまだ浮かんでいた。

 その円盤、所謂UFOはアダムスキー型といわれる物で、円盤の下側には白く光る三つの丸いライトのような物が付いており、上の方はドーム状になっていて、いくつかの窓が開いていた。

 そして、UFOからは先程も聞こえたピロピロという電子音が垂れ流されている。

 これはえらいことになったと思った神谷は、急いでテントに入ると、中で気持ちよく眠っていた杉野達を叩き起こした。


「なんだよ、起こすなよ。こっちは疲れてんだよ」


 坂田が文句を言いながら、渋々といった感じで起きてみると、神谷が興奮した様子で叫んだ。


「いやいや、寝てる場合じゃないんですってば! 出たんですよ!」


「何が?」


「UFOが!」


「あぁ、そう。じゃ、おやすみ」


 そう言って、坂田が布団を被ろうとしたので、神谷が布団を取り上げた。


「ちょっ、なにすんだよ!」


「冗談とかじゃなくて、ほんとのことなんですよ! いいから、早く外に出てきてください!」


 言いながら、坂田の腕を引っ張って、テントの外に連れ出す。


「ほら、いる……あれ?」


「なんだよ、なんもいねぇじゃねぇか」


 神谷が指差した先には、満点の星空と美しい三日月しかなかった。

 UFOどころか、鳥の一羽も飛んでない夜空を見て、神谷は落胆し、ついには地面に膝をついてしまった。


「なんの騒ぎですか……なに、この状況」


 少し遅れて起きてきた杉野が聞いてみる。


「いや、神谷がさぁ、UFOが出たとか言い出してよう」


「はあ、さいですか。それで、そのUFOは何処にいるので?」


「さあ?」


 杉野達がそんなやり取りをしていると、テントから寝ぼけ眼の藤原が出てきた。


「なんだい、こんな遅くに起こして。こっちは久しぶりのフィールドワークで疲れてるんだよ」


 少し不機嫌そうに言った藤原に、我に返った神谷が事情を説明する。

 すると、藤原の表情がだんだん険しくなってきた。


「えーっとね、僕らはUMAを捕まえにきたのであって、決してUFOを捕りにきたんじゃないんだ。それに、UFOなんていないんだよ。きっと、目の錯覚かなんかだ」


 そう、自分に言い聞かせるように答えると、テントの中に戻ってしまった。

 藤原に自分の発見を否定されて、絶望のどん底に落とされた神谷は、無言でテントに戻り、自分の布団にくるまって小さな声で泣くのであった。



 その夜、神谷は夢を見た。

 あのUFOに追いかけられる悪夢を……。

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