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Operation Soul~若者達の幽霊退治~  作者: 杉之浦翔大朗
第一章 Soul Research Institute
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1 作戦開始

※この小説では、死を扱っています。

 なお、この小説はフィクションですので、登場する人物・団体・名称・事件等は実在のものとは、一切関係ありません。

 

 そこは駅から五分ほど歩いた所にある、三階建ての古いビルだった。

 ビルの上には、「玉籠(たまごもり)技研」と書かれたぼろい看板が掛かっている。

 月収五十万という破格の条件にまんまと釣られ、さらに書類選考のみで受かって浮かれていたのを、杉野は今になって後悔してきた。


「地図では、ここであってるはずだけど……」


 杉野はそう呟きながら、顎に手を当てて考え込んだ。

 すると、一人のチャラい男が横から話しかけてきた。


「君もここに受かったん?」


 がらの悪そうなのに絡まれたと思っていた杉野は、予想外の内容に反応が遅れた。


「……そうですけど、そちらも?」


「おう! 俺は坂田ってんだ! 今日からよろしくな!」


「えーっと、杉野です。 よろしくお願いします」


 声の大きさにビビりながらも、何とか自己紹介を返す。

 中々に暑苦しい男だ。

 あまり人と話すのが得意ではなかった杉野は、少々気圧(けお)されてしまった


「よろー! んで、杉野君はどこ中なん?」


「玉籠中ですけど……」


「俺も俺も! それじゃあさぁ、体育の梅田っち覚えとる? あいつ、厳しかったよなぁ」


「ああ、覚えてますよ。僕もよく怒られたんで」


「マジで!? 杉野君って真面目そうに見えるけど、実は不良なん?


「いえ、ただ単に遅刻が多かっただけですよ。あと、呼び捨てでいいっすよ。君付けってあんまり慣れてなくて……」


「そう? そんじゃ、遠慮なく呼ばせてもらうわ! ……それにしても、ぼろいビルだよな~。こんなとこに月給五十万も出せる余裕があるんかね?」


「そうですねぇ」


 まさに、自分もさっきまで同じことを考えていた杉野が無意識に同意していると、後ろから誰かの声が聞こえた。


「五十万くらい、君らの価値に比べたら安いもんじゃわい」


 また新手が来たのかと思い、杉野達が振り返ってみると、そこには白衣を着て丸眼鏡をかけた老人だった。


「爺さんも受かったんか?」


「何を言っとる、ワシはここのボスじゃ」


 驚いた坂田は、申し訳なさそうに笑いながら謝った。


「いや~すんませんねぇ。まさか社長さんにこんなすぐ会えるとは思いませんで……」


「よいよい、若者はそれくらいでいいんじゃよ。そんなことよりも、もう中に入りなさい、君ら以外の子達はもう10分も前に着いておるからのぅ」


 それを聞いて、杉野達は慌てて老人と一緒にビルに入った。



 ビルに入り、杉野達は老人の後に続いて、エレベーターへ乗り込んだ。

 全員乗り込んだのを確認すると、老人は地下一階へ行くボタンを押した。


「あの、上に行くんじゃないんですか?」


 てっきり二階か三階で入社式か何かやるのだろうと思っていた杉野が老人に疑問を投げかける。


「いや、地下で研修をやるんじゃよ」


 そう老人が答えたので、それ以上聞くのはよした。



 エレベーターが動いてから止まるまでは、思いのほか長かった。

 ふと、階数を示す液晶を見てみると地下一階を表示している。

 地下一階にしては、深いような気がした。

 実質、地下五階分は降りた気分だ。

 技研とか書いてあったし、特殊な部屋か何かがあるのだろうか。

 杉野が多少の違和感を覚えたところで、エレベーターの鉄扉が開き、老人がそそくさと降りたので、杉野達もそれに続いた。



 エレベーターの外に出ると、埃っぽい匂いが鼻をついた。

 コンクリ丸出しの壁に囲まれた、そこまで広くない部屋には薄暗い照明の明かりに埃が浮かんでいる。

 最初は暗くてよく見えなかったが、よく目を凝らしてみると、奥の方に金属製の仰々しい扉があった。

 気づくと、坂田と老人の二人が大きな扉の前まで進んでいたので、杉野は小走りで二人の元へ急いだ。



 近くで扉をよく見てみると、いくつかの機械がポン付けされているのに気が付いた。


「よく見て覚えるんじゃよ」


 そう、老人が言ったので、二人はその一挙一動を見逃さないように集中した。


 老人はまず最初に、扉の右側に付いている板のような機械に右手を置いた。

 すると、扉の上のほうから「ポン」と軽い電子音が鳴った。

 次に扉の中央の小さな覗き窓を覗くと、また電子音が鳴る。

 続けざまに、扉の左側に付けられたインターホンへこう呟いた。


「SOUL」


 すると、また電子音が鳴り、覗き窓の右隣にキーパッドが現れる。


「今日のコードは……確か……」


 老人が何かぶつぶつ言いながらキーパッドを叩くと、電子音と共に鍵の開く音がした。


「今ので覚えたか?」


 老人が問うと、二人は自信がなさそうに頷いた。


「もし分からなくなったら、先輩に教えてもらうといい」


 そう言うと、扉を開けて奥に進んだ。



 扉を抜けた先には細い廊下が続いており、いくらか進むと壁の一部に四角い金属のフレームが付いているのが見えた。


「金属製の物を持っていたら、ここに入れるんじゃよ」


 そう言うと、フレームの横にある四角い穴を指し示した。

 よく見ると、中でベルトコンベアーが動いている。

 杉野は買ってもらったばかりの腕時計とスマホを、坂田はスマホと似合わない女物のネックレスをその穴に入れた。



 まず老人が、フレームの下をくぐるとけたたましいブザー音が鳴り響いた。


「おっと、これを出すのを忘れていた。失敬、失敬」


 そう言うと、白衣のポケットから古い懐中時計を取り出した。

 老人に続いて、杉野が恐る恐るフレームをくぐると、特に何も起こらず、すんなりと通れてしまった。

 その後に、少しためらいがちに坂田がくぐるも、やはり何も鳴らない。

 二人がホッと一安心していると、老人はそそくさと先に進んでいたので、二人は出口側の穴から自分達の持ち物を回収して、老人の後を追った。



 少し進むと、またエレベーターが見えてきた。

 老人はエレベーターを呼ぶ前に、二人へこう尋ねた。


「これに乗ったら、もう後戻りはできんよ。君らに問おう、我々の組織に加わる覚悟はあるかい?」


 そう言われて、先に頷いたのは坂田だった。

 杉野は少し怖気づき、かなり遅れて頷く。

 杉野達の決意を見て、老人はにやりと笑い、エレベーターを呼び出した。


「よろしい。 では、君達は今この瞬間から我々の仲間だ。 歓迎しよう」


 老人が言い終わるや否や、エレベーターの扉が開いた。

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