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サイアクな日 3

 ――はい、おはようございます。


 今日も気持ちのいい朝が来ましたね、空は晴天、屋根の無い開放的な場所で起きたのは初めての経験です。

 嫌な臭いと視界いっぱいのゴミには本当にうんざりさせられますね!起きたらいつものベッドの上でした!なんて事はなかったようです。


「やっぱり夢じゃなかったのか…」


 回らない頭でよくこんな馬鹿な事を考えたものだなぁ…

 しばらくボーっとしていたらお腹が鳴った事で気が付いてしまった。

 昨日は自分の状態を気にしている場合ですら無かった為に忘れていたが、まだ何も食べていないという事実。

 それにこの体、どう見てもガリガリで何日も絶食していたような酷い見た目だ。

 空腹を認識してしまったからか、凄まじい飢餓感が襲ってきた。


 ――やばい、何か探さないと…


 立ち上がろうとした所で視界が歪んで転んだ。

 体を起こそうにも全く力が入らない。

 こんな状態で昨日は無理をして動いていたのだ、その反動が今来ている。――それでも、


「まだ、くたば、るわけには…」


 こんな唐突にわけのわからない所で目覚めて、わけのわからない内に死ぬなんてまっぴらだ。

 荒い息を吐きながら、震える足で立ち上がる。

 一歩出すだけで倒れそうになるのを気合で我慢する、たぶん倒れたら次に立ち上がるのはキツいだろう。

 立ち上がったまではいいが、問題はここにはゴミしかない事だ、何かないかとフラフラしながら歩いていると、視界の端に何か動いたものが映った気がした。

 見えた方にゆっくり近づいてみるとそこには一匹のバッタ?のような生き物がいた。

 黒に青という何とも気味の悪い色合いだ、正直触りたくないが、しかし、何かを腹に入れなくてはまともに動くことも出来ない…

 どうしようか考えているとバッタ?が動き出す。

 考えている暇はない、動きは遅いのですぐに捕まえられそうだ。

 そーっと近付き、両手で勢いよく取り押さえる。

 触った瞬間鳥肌が立った。

 ぱっと見は固そうな見た目なのに何故か表面がべたっとしている…

 それとこいつは何故か捕まってるのに変に暴れたりせず、普通に歩こうとのそのそ足を動かしているだけだ。

 捕まえたはいいが、すぐにでも投げ捨てて手を洗いたい気分にさせられる…こっ、こんなものを…

 固く目を瞑り、口を開け、震える手で掴んでいるものを口へ持っていく…


「くぁwせdrftgyふじこlp」


 ――最悪だった。


 嚙んだ瞬間どんなに空腹でもこれは絶対口に入れるなと脳が警告を発している、まして飲み込むなんてとんでもない!と。

 噛むのも辛い、飲み込むのも辛い、涙目で悶絶しながら口を押えて無理矢理胃に放り込む。

 胃ですら絶対に受け付けまいと押し戻そうと必死になっている。

 何度も上がってくるソレをひたすら飲み下す。

 必死の攻防は辛うじて勝てたようだが、油断するとすぐに出てきそうだ。

 今すぐに口を何度も漱いで口の中に残る嫌な感じだけでも無くしたいが残念なことに水も無い。

 どんな状態になってもこんな物二度と口にしないと心に強く決めて、横になる。

 食べたばかりなのとこの気持ち悪さとではすぐに動きたくない。

 少し時間を置き、気持ち悪さも薄れた頃、立ち上がって体を動かしてみる。

 …特に異常は無さそうだ、あんな見た目だし実は毒とかあるんじゃないかと思っていたがそうでもないらしい。

 一応、最悪ではあったが腹にモノを入れたことで少し動くだけの気力は出てきた。

 動けるうちに助けてくれる存在を探すなり食料を探すなりしないと詰みだ。

 今日で進展があればいいのだが…

 そう思いながら通りに出た俺は昨日行った道とは反対の方へ行くことにした。

 昨日の今日でまたあそこに行ったら今度は問答無用で捕りかねないからな。

 歩いてる途中で時折聞こえてくる声に耳を立てながら歩いているが、やはり分かりそうな言語で喋っている人は居ない。

 言葉は通じず、汚い浮浪児的な存在を助けてくれるような人物など存在するんだろうか…

 孤児院とかも頭に浮かんだが、昨日と今でそれらしい建物は見当たらない。

 途中、考え込みすぎて前方不注意になっていたらしく、何かにぶつかり尻もちをついた。


 ――どうやら人の足にぶつかってしまった様だ。


 ぶつかった人を見ると、身なりの良さそうな、周りの人とはちょっと雰囲気の違う感じがした。

 見上げた時にフードにしてた所が落ちて顔が出る。

 その瞬間ぶつかった人が凄く驚いた顔をしていた。

 周りも一瞬ザワッとしてこっちを見ている。

 なんだろう、とは思ったけれど、

 サッと立ち上がり、深くお辞儀をして、


「前方不注意でした!すみません!」


 反射的に謝ったら何故か場がシンとする。

 何か間違えたかと思って顔を上げてみると、周囲の人皆が驚いた顔をして固まっている。

 咄嗟に日本語で言ってしまったけど言葉が通じないだろうことは昨日の時点ですでにわかっているが、もしかしてお辞儀も通じないのだろうか?

 どうしたものかと思っていると、


「―――?」


うん、わからない。でも雰囲気は攻撃的な感じでは無い。

 静寂が解けた事で何やらざわざわし始めた。


 ――長居は無用だな。伝わったかは判らないが一応頭は下げた。


 顔が見えないように被り直し、そそくさとその場を離れるまでじっと見られていたが、誰も何かしようという様子は無いようで何事もなく離れることが出来た。

無事に離れられたという事で一瞬気が緩んでしまったのだろう、建物と建物の間に何かがあっても気が向かなかった。

 「ガァッ!?」

  唐突に頭に衝撃を受け、地面に倒れた所で俺はそのまま意識を持っていかれた。


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