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サイアクな日 2

 よし、改めて見てみよう。

 道は2車線道路くらいある結構広い道だな、道沿いには建物があるけど、日本的な奴じゃない、テレビで見た海外の古い建物みたいなのがずーっと並んでいる。扉の前にマークの付いた木の看板がぶら下がってるのは日本でまず見ないせいか、なかなかに違和感がある。

 道の先を見ていくと、奥の方に特にでかい建物の一部が見える、あれは…まさか城…なのか?

 そんな感じでキョロキョロしていると、周りに居る人からなんだか視線を感じる?まぁこれだけ辺りを見渡していれば都会に来た田舎者みたいな感じに見られるのも仕方がない…


「あっ」

 そうだった、今どんな格好してるのか思い出した…


 傍から見れば誰もしないような汚い襤褸を纏っただけの子供だ、だからってこれを取ってしまえば裸になってしまう。

 交番のような所があればそこで事情を説明して何とかしてくれるかもしれないが、ここから見える所には残念ながら見当たらない。

 この視線に耐えながら進むしかない…少しでも視線から隠れるように襤褸をフードみたいにする、やっぱり嫌な臭いがする…

 来た道とルートを確認しながら石畳の上を裸足でぺたぺた歩く、砂利道とかじゃなくて本当によかった。

 しばらく歩いているが、嫌そうな顔で避けていく者、目が合うとサッ目を逸らし、その場を離れていく者、奇異な目で遠巻きに見ている者ばかりだ。

 とても話しかけられるような感じではない。


「もう、逃げたい…」


 ここまで徹底的に避けられると精神ダメージが半端じゃない…どうしたものかと歩いていると、目の前に大きな門が見えてきた。

 その門の両脇には鎧を付けて槍を持って立っている人がいる。――こういうのを衛兵って言うんだったか?

 衛兵と言えば町とかの治安を守る云わば警察みたいな人達のはずだ。

 あの人達なら話を聞いてくれるかもしれないな。

 そう思い、近付いていくとこちらを怪しい物を見付けたように見ている。

 十分に近付く前に向こうから声を掛けてくる。――槍を向けながら。


「―――!」

「は?」


 衛兵の喋っている言葉が全然わからなかった。


「―――――!」

「ちょ、ちょっと待ってください!お願いします!話を聞いて下さい!」


 言ってみたが、余計に怪しい目でこちらを見ながらもう一人を手招きして呼んでいる。

 

「―――」

「―――」

「―――?」

「―――」


 こちらを警戒しながら何か相談しているようだ、呼ばれたもう一人が少し難しい顔をしながら、


「―――?」


 先ほどの喋り方と違う気がするけどやはり分からない…


「えっと、出来れば誰か話の分かる方を知りませんか?それと可能であれば助けて欲しいのですが…」


 ダメ元でそう言いながら両手を上げて近付いたところ、


「―――――ッ!」

「ちょっと待っ!――がっ、はっ、」


 何事かを叫んだと思ったら宙を舞っていた。

 一瞬何をされたのかわからなかったが、石畳に体がぶつかった時の痛みで我に返った。

 やばい…思いっきり腹を突かれた事で息が出来ない、槍が体に刺さっていないから反対の方で突かれたらしい――クソっ!確かに最初から友好的な感じじゃなかったにしてもこれは、


「ゲホッ…手荒すぎ、る…だろ」


 痛みと息が出来ないのとでこのまま蹲っていたいが、こんな対応をしてくる連中だ、捕まれば何をされるかわかったもんじゃない…

 脂汗をかきながら、なんとか立ち上がると、


「―――っ!」

「―――」

「――――――!」

「――――!?」


 なんだかわからないが言い争いをしているようだ。

 

 ――逃げるなら今しかない。


 可能な限り気配を消すよう努めながら、少しずつ距離を取る。


「―――!!」


 気付かれてしまったが、ある程度距離は取れたし、少し時間があったので痛みこそ回復しきっていないが、呼吸は出来るようになった。

 痛みは可能な限り意識しないようにして走り出す、時折振り返りたくなるが、怖いので我慢する。

 大人と子供の足では真っすぐ逃げてはすぐに捕まってしまうだろうから時折見かける路地裏のような所を通る。

 あまり奥へ行くと道がわからなくなるので、近くの物陰に隠れて息を整える、小さい体は隠れるにはもってこいだ。

 後ろを見ていないため、追ってきているのか怪しい所だが念のために隠れながら移動する事にした。

 

※※※※※


 ――空はもう夜になる一歩手前くらいだ。


 あれからずっと隠れながら移動して、ゴミ捨て場に戻ってきた。

 ここに来るのは非常に癪だが、他に人に見つからなさそうな場所をまだ知らないから仕方が無い、と思うしかない。

 入口の門の前で座り膝を抱える。

 疲労が凄いし、擦り傷はヒリヒリするし、腹も鈍痛が残ってる、痣とかも出来てるかもしれない。

 現実逃避がてらふと空を見上げると、眼前にいっぱいの星空があった。

 視界を遮るものがない満点の星空は、住んでいた家の近くでは決して見られなかった光景だ。


「綺麗だ…」


 自然と出た自分の言葉にハッとして苦笑いを浮かべる。


「こんな状況でそんな事を思うなんて我ながら随分余裕だなぁ…」


 溜息と一緒に嫌な気持ちも吐き出してやる。


 ――まずはわかったことを整理しよう。

『1つ、何故かは不明だけど子供の体になっている。』

『2つ、地球に生息するとは思えない生物が存在している。』

『3つ、人通りの多さと城?があることを見ても大きな国かもしれない。』

『4つ、明らかに言語が違う。』


 …これって、考えれば考えるほど信じたくない推論にたどり着くのだが、自分で見てしまったのだからやはりこれは、


「別世界…異世界というべきか?」


 なんて笑えない冗談だろう。

 実はこれは全て悪い夢で、次に寝て覚めたらいつも通り部屋で目覚めて仕事に行っているかもしれない。

 体力が限界な事もあって瞼が重い…考えるのも面倒になってきた。

 明日になればきっと、


「きっと、元、どお…」

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