サイアクな日 1
歩き出した所で瞬きをした瞬間、おかしなものが視界に映った。
「屋台?こんな所に?」
というかこんな物あったか?歩き出す前には無かった気がするが…しかも台の上には品物のような物は何も無い。
店番は居る様だが…何故か骸骨が立っていた。
この先はゴミ捨て場だし、屋台を出すにも配置がおかしい。あまりにも奇妙だが、これは恐らく変に子供が入って来ないようにするためのオブジェかもしれないな…
そう無理矢理自分を納得させて骸骨から目を逸らそうとした時、目が無いはずのそれと目が合ったような気がした。
――単なる気のせいだ。さっさと通り過ぎてしまおう
足を少し早めて屋台を通り過ぎた…筈なのにまた屋台が視界の横にある、真っすぐ歩いたハズだ…先には何も無かったのにいつの間にか屋台の横を通っている、あまりにも奇妙な出来事に頭を悩ませていると、
――声を掛けられた。
「よう、ガキんちょ、人の顔をまじまじと眺めておいて挨拶もしないのか?」
「喋った!?」
「おいおい、骨が喋っちゃいけないなんて決まりでもあるのか?」
「それは…無いが…」
いや!?骨は普通喋らないだろ!?
「へへへ…そんなことはまあどうでもいいんだ」
いいのか…
「そんな事よりだ、今日はいい日だ、鳥は歌い、花は美しく咲いている…昼寝をするには最高の日だと思わないか?」
「まぁ…天気はいいな」
こいつと話しているとどうも調子が狂うな…
「それで?あんたは何なんだ?」
「どういう意味だい?」
「あんたは何者で、ここで何をしてるかって事だ」
「うん?オイラは見ての通りのスケルトンで、この屋台でバイトをしてるのさ」
「何も置かれてないし、こんな所でか?」
「今は休憩中だからさ、骨を休めてるんだ、スケルトンだけに」
「…」
「あれ?オイラの友人には大ウケする珠玉のネタだったんだけどなぁ」
その友人は趣味が悪いんじゃないだろうか?
「あー…まぁそんな顔をするな、お詫びついでに一つだけ助言をしてやるからよ」
「助言?」
「この先に出ればお前さんには恐らくサイアクな日になるだろう、でも諦めずにケツイさえ強く持っていればいずれ光も見えてくる筈さ」
「何の事だ?」
「へへへ…オイラが言えるのはここまでさ、さて、そろそろ休憩は終わりだ、冷やかしは行った行った!」
…結局何だったんだろうかこいつは。
「じゃあ、俺は行くから」
「せいぜい気を付けて行けよ、ガキんちょ」
去り際にそう言われ、ちょっとイラっと来た。
「そのガキ呼ばわりは止めろ!俺は…えっ?」
――振り返るとそこには何も無かった。
白昼夢でも見ていたのか、狐に化かされたとか?そんな感じで何も無い。
結構喋っていたような気がするが、太陽を見るにさっぱり時間が経っていないようだ。
変な出来事だったが考えてもしょうがないと思い、頭の隅に追いやった。
心は逸るが急いでもすぐにバテるため、ゆっくり歩きながら通りへ出る。
「は?」
眼前には広々と石畳が敷かれ、馬車が走っている、馬車と言っても明らかに馬ではない、でかい猫…と言うより虎?みたいのだったり、二本足で歩くトカゲ…羽根の無いドラゴンみたいな奴だったり――が引いている。一応馬も居る様だからそこは安心…なのか?
とんでもない光景に思わずその場にへたり込む。
これは…日本どころの話ではない、地球ですらないだろう。
目の前の現実を見せられて、理解した…理解してしまった…
その瞬間、内側から凄まじい感情が一気に噴き出てくる!
――コワイ!ココハドコ!?コワイ!ワカラナイ!カエリタイ!コワイ!コワイ!コワイ!
駄目だ…感情の抑えが利かない…理解できないことへの恐怖が、頼りになるモノも存在もない恐怖が、あらゆる恐怖がない交ぜになって体を襲ってくる。
パニックになればしょうがない事が最善の策に感じる。
「そっ…そうだ!最初に居た所へ戻ろう!そうすれば変な考えも光景も見なくてすむんだ!」
そうして震える足で何度も転びながら元来た道を走る。
「あそこにいればきっといい方法が浮かぶまで考えていられる!」
「あそこで…あんなところに戻って…どうするんだ…?」
息切れするほど必死に走ったことで少し落ち着いてきた。
何度も転んだから擦り傷だらけだ…痛い。
人って自分の理解の外にあるものにはとんでもない恐怖を覚えるものなんだと嫌って程実感できた…
正直なところ、頭は未だに元居た場所に戻りたがっているがあそこに居た所で現状は何も変わらない事も理解はしている。現状を変えるには自分から動くしかないのだ。
さっきは思わず逃げ出したが、何てことはない、人に尋ねればいいだけだ。
案外あっさり答えてくれるかもしれない。
うん、なんだかいける気がしてきた!しかし…俺はこんなに感情の起伏が激しかったか?ちょっとした事で一喜一憂している気がするが…
とにかく、最初に立てた目標を達成しに行こう!一度目よりは精神ダメージも低いはずだ…
勇気を持って再度大通りへ向かう、恐る恐る見てみるがやはりまだ恐怖感は残っている。
…が現状を何とかしなければこちらが先に参ってしまう、体の感覚的にもそう長くは動けない。
足をつねって痛みで恐怖を誤魔化す。
「よし、情報収集開始だ」
序盤に結構有名な某ゲームのキャラみたいな方が出てますが、名前が出てないのできっとそっくりさんか何かです。
ネタで出しただけなので以後この方は登場しませんw 怒られない…よね?