プロローグ
――これは夢だ。悪夢と言ってもいい。
体中が痛い、当然だ 先ほど散々殴られたせいだ。
空腹のあまり外にあったゴミ箱を漁っていた所を男に見つかり、捕まったところで暴行された。
相手が殴り疲れた隙を見てなんとか逃げ出し、元居たゴミ捨て場に戻ってきた所で力尽きるように倒れた。
――このまま眠ればこの悪夢から解放されるだろうか…
そこら中が痛む体、空腹からくる苛立ち、何もかもが嫌だ。そう思い、ゆっくりと目を瞑る。
だが悪夢は逃がさないと言わんばかりに足音を響かせた。
――さっきの男が追いかけて来たんだろうか?
だとしてもこっちは逃げる気力も動く体力も残ってはいない。
――もうどうにでもしてくれ。
そう思っているとそいつは目の前で立ち止まって何か話しかけてきた。
「――?」
声の雰囲気から察するに、どうやらさっきの男ではないらしいが…残念だったな、何を言ってるのかさっぱりわからないんだ。
「――――?」
しつこいな…何を言ってるのかわからないんだから返答出来るわけがないだろう。
「――――?」
「うる…せぇ…ぞ…何言って…んのか…わかん、ねぇんだよ」
「っ!」
なんだ?随分驚いたな。だが、俺もその後の言葉で驚くことになった
「その髪の色…その言葉…お前…まさか…」
今こいつが喋ったのは紛れもない日本語だった。あまりの驚きに目を開ける。
右目は顔が腫れていて開かず、左目はぼやけて男か女かもわからないぐらいだった、声からして男だとは分かるが…
「アンタ…は…いった、い?」
そう、今まで会った人には誰も言葉が通じなかった、何を言われてるのかさえも分からなかったのに、この男だけは日本語を喋っている…
「あー…すぐに答えてやってもいいんだが、まずはお前の状態をなんとかしてからの方がいいんじゃないか?酷い見た目だぜ?」
「俺には…傷を、治す薬…も金も、無い。」
「…依頼で捕まえに来ただけだったが…これは依頼主には謝っとかねーとな…」
そう言うなり、ごそごそと音がしたと思ったら体を起こされた。
「まずはこれを…ってお前すげー軽いな、生きてるのが不思議なくらいだぞ…まあいい、これ飲めるか?毒とかじゃねーから安心しろ。」
ポンッと蓋を開ける音がして口元に何かを近付けてきた。
久しぶりに液体が口の中に入ってくる感覚がしてそれを一気に飲もうとし、咽る。
「そんな状態じゃ無理もないが、ゆっくり飲みな。」
苦みのあるそれは、本来は吐き出したくなる物だったが、久しぶりに胃に入ってくるのが嬉しくて体がもっと寄越せと言っている。
自分がどれだけ飢えて居るのかよくわかった瞬間だ。
「よし、飲めたな、即効性は無いが、効果は問題ない薬だ。」
「なん、でここまで…する?」
正直ここまでする理由がわからない、こんなぼろ雑巾状態の誰かもわからない奴に薬を飲ませるなんて俺だってしないだろう。
「どうもお前とは同郷みたいだからな、その誼って所かな?」
同郷?今こいつは同郷と言ったのか?
「さて、俺もお前に聞きたいことがあるが、それはお前も同じだと思う、だがここは場所が悪い、臭いもなかなかに酷いしな、そこで提案だが、一度俺が借りてる宿に来る気はあるか?」
正直考えるのも面倒だったため「ああ」とだけ答える。
「わかった、とは言え今のお前の見た目は拾って帰るにしてもあまりにも薄汚いからな、少し隠させて貰うぞ。」
そう言って布で包まれて持ち上げられる。
「少し揺れるが、しばらくじっとしてろよ。」
――それが意識が飛ぶ直前に聞いた言葉だった。
どうも 作者です。この作品は処女作な上に頭の中で唐突に出力された内容しか書かない為、この後の展開は作者にもわかりません 最悪はプロローグから次の話が出るかは作者のやる気次第という感じなので一切期待しないでお待ち下さいw