第八話・本を出すと言うコト(自費出版編)
書いてみます。一人暮らしをしたころに同人誌仲間ができました。アニメやコミック雑誌の巻末の読者向けの告知コーナーで知りました。私の場合は、内容はなんでもありの「よろず」 といわれる分野で、小説、イラスト、漫画、詩作など本当になんでもあり。在籍しているうちに在籍仲間から個人誌つくったよということで郵送で送付されてきます。会友の住所録が普通にあった時代です。
気に入った作風の人には直接交渉して購入させてもらうこともありました。私の周囲にはそういった趣味で話せる人はいませんでしたので珍しい気分でいました。重ねて書きますがネットがない昔の時期です。だから郵便局はよく利用していました。
そのうちに私も個人で本を作ってみようという思いが強くなり、最初はコピー誌を作りました。見様見真似です。誌面でしか会えない人とも実際に会う機会もあって、その時に教えてもらった通りに原稿をそろえ、同人誌専門の印刷会社にお願いしてオフセットで作りました。大体三十冊から印刷していただけ、冊数が多いほど安くなります。
同人誌即売会に出たこともありますが、誰も足を止めて観てくれないという哀しい経験を積んだだけです。在庫を抱えるのやイヤ、持って帰るのもイヤ、というわけで周囲の売り子さんに自作品を配りきり、身一つで帰ったりしました。さっぱりしましたが、即売会はあわないと思って全くやらなくなりました。
後年、これは出版したいなと思う作品がありまして、この時、何気なく新聞に送ったら地方版に掲載されました。当時亡叔父が自費出版の文集を新聞に送ったら掲載され、読者を獲得したという話を聞いていたからです。
送料だけ切手で送ってくださったら無料で本を送りますという読者広告コーナーでした。新聞の朝刊に掲載されるという威力は強くすぐに反応はありました。それと本代無料が大きかったと思います。
丁寧に「お願いします」 と書いて申し込んでくださるのが大半ですが、切手も同封せずハガキでぐちゃぐちゃの鉛筆書きで送ってくれという人もいました。世の中いろいろな人がいるなあと思いましたが、そういう人でも切手代を負担して無料で差し上げました。そういう人はそれきりでおしまいです。丁寧な申し込みをしてくださった人はほぼ全員が感想をかいてくださいました。今でもその時の手紙を大事に持っています。今読み返しても拙い素人の作品なのに優しい人がいるものです。今も尚、その時の嬉しさを思い出して創作のモチベーションを保っています。
でも所詮素人なので、在庫もたくさん余ってしまい、即売会も行かないので結局ゴミ出しの日に捨てました。今その時のペンネームや作品名を検索すると個人経営らしき貸出図書館で貸し出し可能らしいです。どこでどう流れ着いたのかわかりませんが、まだ読んでくださる人がいるなら嬉しいことです。
せっかく書いたものだしということで尊敬していた某作家先生に送付しました。大それたことをしたものです。すると自筆の返事が来て、出した本人の私が逆に驚愕したこともあります。その時の葉書も宝物にしています。そんなこんなで目立たぬ私とて、創作をすることでできた出会い、思い出を大切にしています。
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あとがき::本を出版する際に、創作を趣味としない人に無理に依頼するとどういうことになるか、またアマチュア作家に対する世間的な評価の話もイラクサで書いています。ご参考までに。
(イラクサのかたびらの第七話、作家や作家志望は変人が多い?
⇒ https://ncode.syosetu.com/n1775fi/7/ )