第五話・ペンネームについて
ペンネームは現実の自分とちょっと違う演出ができる小物の一つです。プロ作家でも本名とまったく違う名前を付ける人は多いです。
私は創作をすること自体、母から嫌がられていましたが、出版社主催の歴史関係の雑誌なら良いと許可してくれたので投書していました。成績向上につながるという思惑でしょう。そこは一応会員制なのですが、その雑誌に昔の薬にまつわる事件を調べて応募したら正規に掲載され、お礼として出版済みの本を無料でもらったりしました。さて昔の雑誌は読者の交流コーナーがどこにでも巻末にあり、個人情報の概念がまだないので、住所氏名電話番号が全部掲載されていました。私も友人が欲しかったので「文通しましょうコーナー」 に名前を載せてもらいました。すると見知らぬ人から封書で手紙が来たものです。しかし「女性名」だからという理由で変な手紙が来ました。当時は歴女なんて言葉はなかったからです。女性名というだけで目立った。雑誌の中にある話題以外の文を書いてよこす。
「あなたの顔が見たいので写真を送ってください」
「結婚を前提におつきあいしてください」
……という手紙です。ついでに不幸の手紙も来ました。これも平成生まれの若い読者さんは知らないかもです。今でいうチェーンメールのようなものです。この手紙は不幸の手紙でこれと同じ文面を三日以内に五人もしくは十人に郵送すると不幸から逃れられますという手紙です。
いじめにあっていた中高時代にもよく来ていましたが、成人してからも雑誌に名前が載っただけでまた来るようになってうんざりしました。後年親に聞いてみると、母が私に不幸が来るといけないと思って分厚い電話帳から適当に名前を拾って送りつけていたそうです。母は迷信深く祈祷やらお告げを信じる人だったのでやったのでしょう。郵便局の人を儲けさせ、かつ、配達人を無駄に動かしたと言うだけの話です。全くもって愚かなことだと思います。
交際要求や不幸の手紙の件で私は母にすごく怒られました。なぜに手紙を受け取る私が怒られるのか……しかし反論できません。以来投書するときは男性名を名乗るようになりました。曽祖父の名前をアレンジして名乗りました。堅苦しい名前にすると浮ついた手紙は一切来なくなりました。それでよかった。私は男性名の方が気楽でいいやと思っていました。
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時代がずっと下って、パソコンを私も気楽に扱えるような平成二桁時代になりますと、小説家になろうなどでアカウントごとにペンネームを変える楽しさを知りました。このサイト以外にも「カクヨム」「エブリスタ」にも登録しましたが読者様が全く来られず退会しました。以来小説サイトはここ一筋です。
去年(令和元年秋の終わり)に四百字限定のショートショートという存在をしり、はまってしまってサイトに登録しました。このあたりで、パソコン上の名前は同じに統一しています。公募も公募ごとに名前を変えたりせず統一するようになりました。現在のふじたごうらこに至るまで十数個のペンネームは消滅しました。
以下はまとめです。
① ペンネームはプロの人みたいだから恐れ多いが、必要ですという話。
② 変な手紙が来るようになったため、男性名をペンネームにする過程。
③ ペンネームを持つことで今までと違う自分になれる快感も味わえる。
④ 複数のペンネームを持つことで、それぞれ文体を変えるという経験を積む。
⑤ アカウント統一、ついでにペンネームを統一する。当時は漢字名。
その後、某プロから作品を見ていただく機会があったが、内容よりもペンネームでダメ出しをくらう。第一印象が悪いらしい。誰でも読める名前にしなさいと言われ素直に従う。
⇒ ⇒ ⇒ かくして現在のペンネームになっています。はい、私、ふじたごうらこです。