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自由の風騎士団の実力

 果ての草原はのどかで見晴らしもいい。

 歩くだけで気分が晴れるような、気持ちのいい草原だ。


「カインさんとお散歩楽しいですね!」


 となりを歩くライムが声を弾ませた。

 それにライムはモンスターだからか、町の中にいるよりも、こういう自然の中のほうが元気になるみたいなんだよね。


 その気持ちは僕にもわかる。

 このあたりは気楽に歩けるから楽しいんだよね。


 最初はどこか緊張気味に規則正しく行進していた騎士団の足取りも、わずかにだけど軽くなりはじめていた。


「お前たち、足取りが乱れているぞ! 王都騎士団の一員であることを忘れるな!」


 すかさずシルヴィアの喝が飛ぶ。

 わずかに乱れていた足音が、すぐに規則正しいものに変わった。

 さすがよく見ているなあ。


「だけど、ちょっと厳しすぎないかなあ。草原は広いし、一日中気を張って歩いてたら目的地に着くころには疲れちゃいそうだけど」


 独り言のつもりだったんだけど、シルヴィアの目が軽く僕をにらんだ。


「騎士団には騎士団のやり方がある。口出ししないでもらおう」


「ああ、ごめんね。オルベリクさんに言ったつもりはなかったんだけど……」


 どうやら独り言を聞かれてしまったみたいだ。


 シルヴィアは僕を軽くひと睨みしてから戻っていった。


 それにしても、これだけの人数が集まってる中で、僕の独り言を聞き逃さないなんて、すごく耳がいいんだな。

 もしかしたら騎士としてだけじゃなくて、斥候としてのスキルも持っているのかもしれないね。


 さらにしばらく進んだころ、騎士団の歩みが急に止まった。


「全軍止まれ! 三列に並んで迎撃態勢!」


 シルヴィアの号令が響く。

 どうやらモンスターが現れたみたいだ。


 号令に合わせて騎士たちが三列に並ぶ。

 前列が盾を構えて壁を作り、後ろの二列が剣と槍を構える防御寄りの構えだ。

 どんな相手なんだろうか。

 僕たちは騎士団の後ろにいるため、ここからだと相手の姿は見えない。

 そうしていると、ライムが鼻を引くつかせた。


「くんくん。この匂いはコカトリスですね。10匹くらいいます」


「ああ、なるほど。それで防御陣形なのか」


 コカトリスは、鶏の体に蛇のしっぽを持つモンスターだ。

 石化の魔力を持っていて、嘴でつつかれたり、蛇のしっぽにかまれると石化してしまう。

 恐ろしいモンスターだけど、油断さえしなければ負ける相手じゃない。


「憶するな! 危険なモンスターだが、訓練通りにやれば勝てない相手ではない! 盾隊、前へ!」


 シルヴィアの号令に合わせて、盾を持った騎士たちがじりじりと前進していく。


 その様子を後ろから観察していると、となりでライムが何やらソワソワしはじめた。

 よく見たら口の形がちょっと溶けて崩れている。


「コカトリスって美味しいんですよねぇ……。じゅるり」


 どうやら味を想像して変身がちょっと溶けていたみたいだ。

 まあコカトリスっていっても、石化の呪いを持つだけの鶏だからね。

 食べればただの鶏肉だ。


「わたしたちは戦闘に参加しなくていいんですか?」


「今回は騎士の人たちの訓練みたいなものだからね。僕たちは後ろから見守っていようか」


「わかりました。カインさんがそういうなら。……うぅ。お肉……」


 そういいながらも、名残惜しそうな目でコカトリス達のほうを見ている。

 やっぱり諦めきれないみたいだね。


 僕たちが話しているあいだにも、騎士団のほうでは戦いが進行していた。

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