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カインさんとキスがしたいです

 午前中は、スミスさんに鍋のお礼をしにいき、ついでに次のクエストに必要となる物を調達してきた。

 セーラから受けたクエストの準備をしないといけないからね。

 今回は西の草原に行くということだったから、他にも準備する物は多いんだ。


 そうやって僕が準備をしている時は、ライムは邪魔をしないように一人で静かにしていることが多い。


 窓から外を眺めて人間の勉強をしたり、僕の作業を楽しそうに見つめていたりする。

 だけど今日は違った。

 僕の正面まで近づいてくると、真剣な顔つきになった。


「カインさん、キスってなんですか」


 思いっきりむせてしまった。


「ごほっ、ごほっ!」


「だ、だいじょうぶですか!?」


「うん、大丈夫……。それより、それをどこで……?」


「鍛冶のおじさんに聞かれたんです。二人はもうキスくらいはすませたのかって」


 なにか二人で話してると思ったら……。

 スミスさんめ、よけいなことを……。

 端から見たら僕たちは同棲までしてる恋人同士なんだし、そうきかれるのは仕方ないのかもしれないけど。


「キスは、まあ、大したことじゃないよ。ライムは知らなくても平気なことかな」


「……ふーん。そうなんですか」


 ライムはそう答えたけど、明らかに納得がいっていない様子だった。

 とはいえ、僕としてはこれ以上教えられることはない。

 作業に戻った僕を見て、ライムはそれ以上聞き出すのをあきらめたらしい。


「ちょっとお出かけしてきます」


 そう告げると、家の外へと出て行ってしまった。

 僕から離れて一人で外に出るのは珍しいな。

 まあライムにもそろそろ友達くらいできてもおかしくないのかもしれない。

 それはとてもいいことだよね。うん。




 それからしばらくして、ライムが帰ってきた。


「カインさん!」


 玄関を開けて家に入ってくるなり僕に向かって飛びついてくる。

 そのまま満面の笑みを僕に近づけてくると……。


「ストップストップ! 近い近いって!」


 鼻先が触れ合うほどまで近づいてきた顔を押し返す。

 ライムはきょとんとした表情をしていた。


「どうしたんですか?」


「それは僕が聞きたいよ。いったいどうしたんだい」


 聞かなくても何となくわかるけど。

 ライムは元気よく手を挙げると、再び満面の笑みを浮かべた。


「はい! カインさんとキスがしたいです!」


 ……いったいどこで情報を仕入れてきたんだろう。


「セーラに聞いたら、キスというのは唇と唇をくっつけることだって教えてもらったんです。なのでセーラとキスしようとしたんですけど、なぜだかイヤがられてしまいまして……。そういうことはカインとしなさいよ、と」


 セーラのやつめ、ライムによけいなことを……。

 いや、その対応は間違ってないのか。

 もしセーラに彼氏がいて、その彼氏が僕にキスってなんですかと聞いてきたり、僕にキスしようとしてきたりしたら、きっと同じような対応をするだろう。


 ライムが真剣な表情になって僕に近づいてきた。


「カインさん、ひとつお聞きしたいことがあるんですけど、いいですか」


「うん、いいよ。どうしたの」


「この前のニアちゃんとのことなんですけど……」


 ニアの名前を出されて、なんのことを言っているのがすぐにわかった。

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