ライムにとっては普通のこと◇
「大丈夫です! 痛くしませんし、すぐに終わりますから!」
ライムがまったく信用ならないことをいいながら僕を押し倒した。
玄関前で抱きついたときもそうだったけど、意外に力が強いため僕なんかではとてもふりほどけなかった。
ゴールデンスライムは取得経験値が高い。
ということはつまり、ライムのレベルも高いってことなんだろう。
さすが世界で唯一のSSSS級モンスターだ。
なんていってる場合じゃない。
そうこうしてるあいだに、はあはあと息の荒くなったライムが迫ってくる。
体もなんだかちょっと溶けていて、せっかく作った服の形が崩れてしまっていた。
「痛いのは最初だけです。すぐに気持ちよくなりますから、わたしに任せて目を閉じててください」
「そ、そんなのダメだって!」
僕はとっさに腕を伸ばす。
そのせいで突き飛ばすような格好になってしまったんだ。
でもライムは離れることなく、それどころか逆に僕の手がライムの体にうずもれてしまった。
どうやら興奮で形が崩れていただけじゃなく、やわらかくなっていたみたいだ。
なんていうか、ゼリーの中に手を入れるみたいな感じだ。
「ひぁっ!?」
ライムの口からかわいい声がもれる。
「い、いきなりわたしの中に手を入れないでくださいぃ」
「あ、ご、ごめんっ!」
あわてて腕を引き抜こうと力を込める。
だけどすっぽりとはまってしまったため、引き抜こうとしてもなかなかうまくいかなかった。
ライムには悪いけど、ここは少し強引に力を込めて抜くことにしよう。
僕が体を動かすたびに、ライムの口から声が漏れる。
「あはははは! かかか、カインさん、それくすぐったいですう……!」
「ご、ごめん! でも少しだけガマンして。もう少しだから……」
「にゃははははは! らめっ、笑いすぎてお腹苦しいですぅ……!」
ライムの笑い声が家の中にこだまする。
でもそのおかげで僕の手も残り少しのところまで来ていた。
「早く、早くしてください……! くすぐったすぎてもうダメですう……!」
「頑張って、もう少しだから……!」
「あはははは! もっ、もうだめっ、はやくらしてくださいいいいいいいっ!!」
僕が手を引き抜くと同時にライムの声もひときわ甲高く響いた。
そのまま荒い吐息と共に床に横たわった。
力なくうなだれたまま、少しだけ不満そうに僕を見る。
「もう……いきなりこんなことするなんて、カインさんはいつも強引です……」
「ご、ごめん。大丈夫だった?」
なにがいつもなのかわからなかったけど、とにかく僕は謝った。
なにしろ僕の手がライムの中に入ってしまったんだ。
スライムだからかライムの体内はやわらかくて全然痛みを感じなかったけど、ライムはそうじゃないかもしれない。
心配だったけど、ライムはほほえんだ。
「ふふ、冗談です。わたしも痛くはなかったです。きっと相手がカインさんだからでしょうね。カインさんはわたしにとっての特別ですので……」
上気した表情でうっとりと僕を見つめてくる。
どうやら本当に気にしていないみたいだった。
ゴールデンスライムにとってはこれくらいは普通のことなのかもしれないね。
タイトルに◇のある話は修正版になります。
詳しくはあらすじ、または活動報告の方をごらんください。