お手伝いさせてください
セーラの店を出た後は僕の家に戻ってきた。
ライムのおかげでクエストにかかる往復の移動時間がかなり短くなったから、そこまで長く家を空けていたわけじゃないんだけど、それでもとても懐かしい感じがした。
まるで数ヶ月ぶりな感じがする。
「なんだか帰ってきたって感じがしますね!」
ライムも同じ気持ちだったみたいで、家に入ると歓声を上げていた。
駆け足で部屋に入ると、くるりと僕を振り返る。
「カインさん、お帰りなさい!」
見てるこっちまで明るくなるような笑みだった。
ついさっきまで不機嫌だったけど、もうすっかり元に戻ったみたいだ。
「うん、ただいま」
つられるように僕も笑顔で答える。
えへへ、とライムがはにかんだ。
「この言葉、一緒に暮らしてるって感じがしてとっても好きです」
ライムはいつだって自分の感情に素直だ。
だから本気でそう思っているんだろう。
確かに僕たちは一緒に暮らしている。
でもそれだけだし、それ以上の意味なんてないとわかっているんだけど、ストレートにそういわれると恥ずかしくなって、つい視線を逸らしてしまった。
「と、とりあえず、ご飯にしようか」
「わーい、ごはんごはん~」
そそくさと台所に向かう僕を、ライムが両手を上げながらついてくる。
長時間馬車に揺られた後だからおなかも空いてるしね。
それに実は、鍛冶屋のスミスさんに頼んでいた竜鱗の鍋が完成していたんだ。
こんなに早くできるなんて思ってなかったからびっくりしたよ。
聞いてみたら、他の仕事を全部放り出して最優先で作ってくれたみたい。
竜の鱗を鍋にするなんて面白そうな仕事を早くやりたくて我慢なんかできるかよ! と楽しそうに語っていた。
そんなことして大丈夫なんですかと聞いてみたら、クライアントからはだいぶ怒られたけど大丈夫だ! と全然大丈夫じゃないことをいっていた。
そこまでして僕の依頼を優先してくれたのは本当にありがたいことだ。
今度お礼に何か作っていこうかな。
スミスさんの場合は、料理よりも珍しい素材とかのほうが喜びそうだけど。
鍋の出来はいうまでもなく、すばらしいものだった。
鱗一枚からこれだけのものができたのは、鉄に鱗の成分を混ぜて作ったかららしい。
竜の鱗の特性を引き継いでいるから、決して焦げ付くことがないし、火だけを具材に通してくれる。
これを使えばとてもからっと揚げられるんだ。
それに結構な大きさにもかかわらず、僕が片手で持ってもほとんど重さを感じない。
料理のさいには鍋を動かすことも多いから、軽いっていうのは結構重要なんだ。
だから、この鍋を使って料理をしたくてしかたがなかったんだ。
今ならきっと、すごくおいしい物が作れるはず。
せっかく鍋を使うんだから、揚げ物か炒め物がいいよね。
今ある材料から作るとなると……。
台所の材料を確認しながら、鍋を前にしてあれこれ悩んでいると、後ろからついてきていたライムがとなりにやってきた。
「わたしもカインさんのお手伝いがしたいです!」




