異種間交配
「それで、どうして僕のところに?」
そういえば、僕と交尾したいみたいなことを言ってた気がしたけど……。
「カインさんは傷ついたわたしを助けてくれました」
「うん。そうだね」
確かにあのときのライムはすごく弱っていた。
だから恩返しにきた、ってことかな。
「わたし、今まで人間にずっと追われていたんです。出会う人はみんなわたしのことを殺そうとしてきて……」
「それは、そうかもしれないね……」
ゴールデンスライムは世界でも有数のレアモンスターだ。
倒すだけで100億もの経験値が手に入ると言われることもある。
冒険者協会がつけるモンスターランクは、世界でも唯一のSSSS級だ。
数百年にもなる歴史の中で、倒した数はたったの2体だけだから本当かどうかわからないけど、勇者と呼ばれる人たちはみんなレアモンスターを倒してレベルを上げたといわれてる。
だからゴールデンスライムを探してる人は世界中にいるんだ。
「あのときのわたしはもう疲れていて、逃げることさえできませんでした。わたしはここで捕まってしまうんだ。本気でそう思いました。でも、そんなのはイヤで……。だから神様に一生のお願いをしたんです。わたしに今日まで生きてきた意味を、幸せな思い出をくださいって……」
ライムが輝くような瞳で僕を見つめた。
「そこに現れたのがカインさんでした」
「それは……ただの偶然だよ」
実際それは本当にただの偶然だ。
もし神様が僕たちを出会わせたのだとしても、それ以上の意味はない。
レベル1でスキルもない無能力者の僕が誰かの運命の相手だなんて、なれるわけないよ。
でもライムは静かに首を振った。
「カインさんに会えたのは偶然かもしれません。神様はわたしのことなんか見てなくて、一生に一度のお願いも無視したかもしれないです。
でも、カインさんはわたしに優しくしてくれました。そんな人間ははじめてで、それでカインさんのことを好きになってしまったんです」
「そ、そうなんだ……」
つい恥ずかしくなって視線を逸らしてしまう。
こんなストレートに告白されたのは初めてだから、どうしていいかわからない。
そうしていると、ライムがもじもじと体をよじりはじめた。
「それに……優しくしてくれたと思ったら、急に体液をわたしの中に入れてきて……。こんな強引に種付けされるなんて思わなくて……そのギャップにキュンキュンしてしまったといいますか……」
……うん? なんか思ってたのとはちょっと違ってきたような?
「わたしの初めての種付けはカインさんに奪われてしまいましたし、そんなにわたしと繁殖したかったのかなって思ったら、とってもドキドキしちゃって……、もうこの人と交尾するしかないって思ったんです!」
「しないよ! 交尾なんてする訳ないよ!」
「でも、カインさんはわたしの体に強引に体液を注入したじゃないですか」
体液って、もしかして万能薬に混ぜた僕の血のことかな?
「あれはライムの傷を治すために必要だったから……」
「相手の体に自分の体液を流し込むことは生殖行為をしようって合図ですよね?」
「人間にそんな習慣はないよ!」
「でもでも、あのときからすっかり受精モードに入ってしまって……、今ではカインさんの匂いをかぐだけで細胞分裂が止まらないんです!」
「そんなこといわれても……」
「大丈夫です! 痛くしませんし、すぐに終わりますから!」
まったく信用ならないことをいいながら僕を押し倒した。