こんなのアタシでも見たことないわ
一角獣の万能薬は、一角獣の角を煎じることで作るんだ。
泉の水を借りて、さっそく調合することにした。
調合自体は簡単だからすぐに終わるけどね。
僕が準備をはじめると、ライムが興味深そうに近づいてきた。
「こうやってわたしを助けてくれた薬を作ってくれてたんですね」
「そうだね。材料さえあればすぐに作れるんだよ」
「わたしでも作れますか?」
「もちろんだよ。やってみる?」
「はい!」
材料をライムにわたし、手を取って作り方を教える。
といっても難しいことなんてなにもないんだけどね。
削った角をすり鉢で粉末状にすると、持ってきたいくつかの材料と合わせて水に溶かす。
後はよく混ぜてしばらく置いておくだけ。
やがて水の色が変わりはじめた。
「あっ、できてきました!」
ライムが声を上げる。
透き通った水が徐々に青みを帯びていき、やがて輝くような純白の色に変わった。
「すごい、とってもきれいです」
感嘆の声をもらす。
初めて見るとびっくりするよね。
僕も初めて作ったときは、こんなにきれいになるだなんて思わなくて驚いたよ。
でもニアはもう何度も作ってるから見慣れてるだろうけど。
と思ったら、ライムが作るところを見守っていたニアも驚いていた。
「どういうこと……。ユニコーンの万能薬って青色のはずでしょ? それがなんで白に変わるわけ……?」
そういわれて僕も驚いてしまう。
「えっ、一角獣の万能薬って白なんじゃないの? 僕が作るときはいつもこの色だけど……」
「そんなはずないわ。アタシが作るのはいつも青色だし、市場で出回ってる物も同じよ。こんな純白の薬なんて見たことも聞いたこともないわ」
「もしかして、わたしがなにか間違っちゃいましたか?」
ライムが不安そうな表情を浮かべる。
安心させるようにニアが首を振った。
「そばで見てたけどそれは平気よ。手順は完璧だった。ちょっと作ったそれ見せてくれないかしら」
ニアに作ったばかりの万能薬を渡す。
受け取ったニアは冒険者カードを取り出すと、鑑定のスキルを使用した。
これさえあればどこでもアイテムの鑑定ができるようになる便利なスキルだ。
とても便利だから僕も使えるようになりたいんだけど、B級以上の冒険者にだけ与えられる特別スキルなんだよね。
なんでもまだ試験段階だから、一部の人にしか開放してないんだって。
だから僕にはまだ使えないんだ。
しばらくしてニアのカードに鑑定の結果が表示された。
内容を見たニアが息をのむ。
「なにこれ……。魔力量が桁違いすぎる……。こんなの、みたことないわ……」
声が小刻みに震えている。
「こんなのはもう万能薬じゃないわ……。使い方によっては死者蘇生すらできる幻の霊薬よ」




