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ユニコーンとだって仲良くなれるよ

 アタシは目の前の光景を呆然と見ていた。

 人とユニコーンが楽しそうにふれあっている。

 それどころか話しかけ、意志の疎通をしているようにすら見える。

 こんな光景があり得るのだろうか。


 まだユニコーンの存在が人間に知られる前ならあり得たのかもしれないだろう。

 何百年と昔ならあり得たのかもしれない光景。

 でも現代ではあり得ないはずの光景。


 そんな偉業を成し遂げられる人を、アタシは一人だけ知っている。

 いや、そんな人は世界中を探しても、きっと一人しかいないだろう。


☆☆☆


 なぜかライムはじゃれてくる一角獣を敵視していたけど、まずは本来の目的をすませることにした。


「悪いんだけど、また少し角を削らせてもらってもいいかな」


 お願いすると、一角獣が頭を下げる。

 ちょうど角が僕の目の前に来る位置になった。

 やっぱり僕の言葉がわかるみたいだね。


 螺旋状の角は近くでも見るととても美しい。

 観賞用として人気があるといわれるのもわかるかな。


 前回少し削らせてもらったところを見ると、傷はもうふさがっていた。

 やっぱり治癒力はそうとう高いみたいだ。


 ナイフを当てて削るように動かす。

 今回の依頼は一人分だからそんなに量もいらない。

 だいたいこれくらいかな、というところで止めることにした。


「うん。ありがとう」


 お礼を言うと一角獣が小さく鳴いた。


「それじゃあ次はニアの番だね」


「え、アタシもいいの?」


「もちろんだよ。ここまで手伝ってもらったんだし」


「アタシまだなにもしてない気がするけど……」


 そういいながら一角獣に近づく。

 ニアが手を伸ばすと、一角獣はふいっと首を背けてしまった。


「うっ、やっぱりアタシじゃダメなのね……」


「ニアにも分けてあげてくれないかな。少しだけでいいからさ」


 一角獣が僕をじっと見つめた後、再びこっちを向いて、ニアに向けて角を差し出した。


「本当にアンタのいうことなら聞くのね……。ユニコーンが人間の言葉を理解してるってだけでも驚きなのに……」


 ニアが恐る恐る角に手を伸ばす。

 その表面を優しい手つきでなでた。


「本当にキレイな角……」


「角を見るのは初めてなの?」


「こんなに近くでゆっくりと見るのははじめてよ。いつもは姿を消した状態で角を削り、気づかれる前にすぐに離れてたから」


 確かに警戒心の強い一角獣だとすぐに逃げちゃうからね。

 ゆっくりと見る時間はないかもしれない。


 ニアが目を細めて一角獣に見とれている。

 その表情がしだいに曇りはじめた。


「でも、この美しさのせいで人間に狙われるようになったってのは皮肉な話よね」


「そうだね……。昔はたくさんいたらしいけど」


 一角獣が乱獲されたのは万能薬としての力だけじゃない。

 その美しさから観賞用としての人気も高いんだ。


 ニアはその後もしばらく一角獣の角をなでていた。

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