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聖水の湧く泉

 ハンター達が外に出て少ししてから僕たちも一角獣探しに出かけた。


「ニアはどうやって一角獣を探してるの?」


 山道を歩きながら話しかける。


「アタシは姿を消して近づくのよ。それでバレないようにこっそりと角の一部を削り取ってくるの」


「姿を消す? そんなことできるの?」


 僕が驚くと、ニアがふふんと自慢げな表情になった。


「そうよ。驚くのも無理はないわよね。なにしろこのスキルが使えるのは世界でも数人しかいないんだから」


「もしかして姿がまったく見えなくなるやつですか? 昔それを使った人間に追いかけられたことがあります。姿だけじゃなくて気配まで完全に消えちゃうからすごく怖かったよ」


 懐かしそうに話すライムに、ニアが呆れた視線を向ける。


「気配遮断スキル持ちに追われるって……、それ完全にプロの暗殺者じゃない。アンタいったいなにやらかしたのよ」


「なにもしてないよ」


「なにもしてないのに追われる訳ないと思うけど。まあアンタの場合無自覚になにかやらかしてても不思議じゃないけど」


「ライムもよく逃げられたね。見破る方法とかあるの?」


「見つけるのは難しいですが、逃げるのなら簡単です。相手より速く走ればいいだけですから!」


 なるほど。とてもライムらしいね。


「確かに理屈ではそうだけど……。アンタ見かけによらずけっこう脳筋よね」


 呆れたようなニアの言葉に、ライムは首を傾げる。

 たぶん脳筋の意味が分からなかったのかな。

 まあ無理に教えることもないよね。




 話しているうちに予定の場所に到着した。

 まだ山の中だけど、一角獣はかなり遠くからでも人間の気配を察知して逃げてしまう。

 だから離れた場所から準備しないといけないんだ。


「まずは聖水で体を清めるのよ。ユニコーンは汚れたものを特に嫌うからね。アンタたちもそれくらい持ってきてるでしょ?」


「ああ、うん。ごめん。持ってきてないんだ」


「はあ!? 聖水がない!? それでどうやって近づくつもりなのよ」


 聖水は高位の司祭に清められた特別な水だ。

 清めてもらった直後はとても綺麗なんだけど、そのままだとすぐに汚れてしまう。

 だから専用の瓶に入れて保存しないといけない。

 これがけっこうな量になるし、とても重いんだよね。


「実は近くに綺麗な水の泉があってね。そこを利用しようと思って」


「聖水の湧く泉? そんなのあったかしら」


「実は前に来たときに見つけてね。よかったら案内するよ」




 そういうわけで、僕が先頭になって山の中を歩くと、急に視界の開けた場所に出た。

 山の木々に視界を制限されていた中で、そこだけが丸くぽっかりと切り取られたように開けている。

 丸い青空から朝日が射し込み、中央の泉に降り注いでいた。


「わあ、とってもキレイな場所ですね!」


 ライムが歓声を上げながら泉に向けて駆け出した。

 遅れてニアが驚いたように歩を進める。


「なにここ……。この山には何度か来たけど、こんな場所があるなんてはじめて知ったわ……」


「一角獣は清らかな水しか口にしない。ここに一角獣がいるなら、こういう綺麗な泉は必ず近くにあると思ったんだ」


「それは確かにそうなんだけど……」


「だから探したら、運良く見つかったんだよ。それに山の動物たちにも聞いたら教えてくれたし」


「動物に聞いた? 会話ができるの?」


「会話っていうか、なんとなくわかるって感じかな。泉の場所をたずねたら、そっちの方向を向いたりするから」


「でも、こんな開けた場所があったのならアタシが気が付かないはずがないわ。かといってこれだけの場所が急にできるわけもないし……」


「それならきっと、ここの守護者のおかげかもしれないね」


「守護者?」


 僕は中央の泉に向かった。

 泉の底まではっきりと見える透き通った泉だ。

 ライムはすでに服が濡れるのも気にせずに泉の中に入って遊んでいたけど、僕は泉の縁にかがんで、まずは守護者に許可を求めることにした。


「今日もここを少し借りるね」


 水に触れて小さくつぶやく。

 すると、透明な水が盛り上がった。

 それは徐々に姿を変え、やがて透き通った体に長い髪を持つ、美しい女性の姿になる。


「うわっ、いきなりなんですか?」


「まさか、ウンディーネ!? 四大精霊がどうしてこんなところに!」

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