不穏な気配
僕たちは一角獣を傷付けないで薬の材料だけもらう予定だ。
それはニアも同じなため、一緒に協力して探すことになった。
今は一角獣探しの準備をしているところだ。
ニアが僕たちのほうに視線を向ける。
「……ずいぶん持ち物が少ないみたいだけど、それで大丈夫なの?」
「僕はレベル1で力もないからたくさんの荷物は持てないんだ。だからなるべく現地調達ですませようと思って」
「荷物くらいわたしが持ちますのに」
「ライムにだけ重いものを持たせるわけにはいかないよ」
確かにライムの方が力はあるから僕よりもたくさん持てるだろう。
だからってさすがにそれに甘えるわけにはいかないよね。
「はいはい、のろけるのはそれくらいにしなさいよ」
ライムが首を傾げる。
「のろけるってなんですか?」
「そ、それは……。つまり、仲いいところをアタシに見せつけないでって意味よ」
「わたしとカインさんはそんなに仲良く見えちゃうってこと? えへへー、なんだか照れちゃうなー」
ライムが両手を頬に当ててクネクネと体を踊らせている。
なんかそんな風にされると僕まで恥ずかしくなってくるんだけど……。
「見えるもなにも、アンタたちは最初からずっと仲いいじゃない……。
というか、そもそもレベル1でS級クエストに来るとかなにを考えてるのよ」
「このクエストならバトルをしないでも平気だから、僕でも大丈夫かなって」
「それはまあ、確かにそうだけど……。でもその方が難しいのは知ってるんでしょ。ユニコーンを捕獲した経験はあるの?」
「捕まえたことはないかな。会ったことならあるんだけど」
「会えただけでも大したものよ。このアタシだって捕獲はまだ2回しかないくらいなんだから」
「2回も捕獲できたの? それはすごいね」
一角獣は警戒心が高く、人間が近づくだけで逃げ出してしまう。
それに一角獣自体がモンスターとしてかなり強い。
うまく近づけたとしても、激しい反撃にあって返り討ちにされてしまうことが多いんだ。
一角獣のクエストがS級なのは発見の難しさもあるけど、戦いになった時の強さも含まれてるんだよね。
そんな一角獣を生け捕りにしたとなれば、それだけで有名冒険者の仲間入りだ。
「やっぱりさすがはS級ハンターのニアだね」
「ふふん。まあそれほどでもあるけどね」
「ほう、女子供どもは一緒に行動するつもりか」
ハンターたちが二階から降りてきた。
すでに準備をしていたみたいで、全員装備を整えている。
「ずいぶん重武装ね。恥知らずは恥知らずのままなのね」
「くくく……。まあお前たちはゆっくりとモンスター探しをしてればいいさ」
「アンタ達こそアタシの邪魔しないでよ」
ニアが釘を刺したけど、ハンターたちはニヤニヤ笑うだけで何も答えなかった。
そのまま外に出ていく。
「なにか嫌な感じね」
ニアがハンターたちの出て行った扉を見ながらつぶやいた。




