ニアの目標
「まったく! なんなのよまったく!」
ようやくライムから解放されたニアがまだ怒っていた。
どうやら子供扱いされるのがよっぽど嫌いみたいだね。
「それにしてもあのニアとこんなところで会えるなんて光栄だよ」
「有名な人なんですか?」
「僕たちのあいだではかなり話題になっててね。数々の高難度クエストをクリアしてるだけじゃなく、様々な新種のアイテムを発見したり、傷つけずに捕獲する方法なども次々に考案している。それに『レアドロップ』や『隠密』などのレアスキルも持ってるすごい人なんだ」
僕の説明に気を良くしたのか、ニアが再び自慢げな表情になった。
「ふふん。アンタはよくわかってるみたいね。アタシのすごさがわかったらもう子供扱いはやめることね」
「でもでも、ニアちゃんはとってもかわいいですよ」
「だからかわいいとかいうな! アタシの目標は美しくてカッコいい冒険家なのよ。だから……だからなでるな! 抱きつくな! ……ああもうなんでこんなに力が強いのよこの女は!」
再び抱きつかれたニアが暴れるけど、ライムの腕はびくともしなかった。
ライムは見た目の細腕に反して、ドラゴンもワンパンするほどのパワーを持ってるからね。
よっぽどの力自慢じゃないと逃げることは無理なんじゃないかな。
「わたしはかわいいっていわれると嬉しいのに、なんでニアちゃんはイヤがるの?」
「……アタシには目標としてる人がいるの」
逃げることをあきらめたニアが、仕方なくライムに抱きしめられたまま話しはじめた。
「その人もアタシと同じ素材ハンターらしいんだけど、S級クエストどころかSS級とか、そのもっと上のクエストとかも簡単にクリアしちゃうらしいの。アタシはその人に憧れて素材ハンターを目指してるのよ」
そういってから僕たちを見た。
「アンタたちもユニコーンの角を取りに来たんでしょ」
「うん、そうだよ」
「自分でいうのもなんだけど、ユニコーンを捕獲するのはかなり難しいわ。アナタたちもそれなりに有名な冒険者なんじゃないの?」
「全然そんなことはないよ。
そういえば自己紹介してなかったね。僕はカイン。こっちの子がライムだよ」
「よろしくねニアちゃん!」
ライムが元気いっぱいに挨拶をしたけれど、ニアは僕のことを驚きの目で見つめていた。
「カイン……? まさかそんな……」
僕をまじまじと見つめている。
「どうしたの? どこかであったこと会ったっけ?」
「ちょっと冒険者カードを見せなさ……見せてくれませんか」




