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S級ハンターニア

「モンスターを殺して当然とか、そんなのは三流以下の考えよ。恥ずかしいと思わないの?」


 小屋に入ってくるなりそう言い放ったのは13、4歳くらいのまだ小さな女の子だった。

 完全武装のハンターたち相手でも臆せずに真正面から向かっていく。


「殺すなんて誰でもできるのよ。生かして捕まえる方が何倍も難しいってわからないの? なのに強い自分カッコいいアピールとか笑っちゃうわよね。しかも自分じゃなくて武器が強いアピールとか。恥ずかしいを通り越して情けないわ。

 だいたい、あんたたちみたいな奴らのせいでユニコーンはこんなに絶滅寸前になったんでしょ。責任とって死ねばいいのに」


 いきなり言いたい放題だなあ。

 さすがのハンターたちも唖然としてるよ。


 女の子がそんなハンターたちを鼻で笑う。


「あら、何も言えなくなっちゃった? まあ勉強になってよかったじゃない。これを機に反省することね」


「いきなりすぎてビックリしてるだけじゃないかなあ」


 実際そうだったみたいで、我に返ったハンターたちが怒り出す。


「ガキのくせに生意気なこと言いやがって!」


「女だからって許してもらえるとか甘いこと思ってるんじゃないだろうな」


「そこまでいうくらいだ。当然俺たちよりも強いんだろ?」


 ハンターたちが武器を構える。

 半笑いの表情だからたぶん脅しのつもりだったんだろう。

 でも女の子は鼻で笑うだけだった。


「あったりまえでしょ。相手の実力もわからないなんて三流以下の四流だったみたいね」


「……。それ以上は冗談じゃすまねえぞ」


 ハンターたちの空気が変わった。

 明らかに本気の目つきだ。

 僕は慌ててお互いのあいだに割って入った。


「まあまあ、みんな落ち着いて。ケンカはよくないよ」


「なんだてめえは。関係ねえやつはすっこんでろ」


「そうよ。邪魔しないで。こういう奴らは一度痛い目みないとわからないんだから」


 お互い引く気はまったくないみたいだったけど、僕だってここで引き下がるわけにはいかない。


「ここでのケンカは禁止のはずでしょ。それに、君はもしかしたら、素材ハンターのニアじゃないかな?」


「あら、アタシのこと知ってるの?」


「うん、有名だからね」


「ニアだって……? まさか、S級ハンターのニアのことか!?」


 ハンターたちもざわめきだした。


「誰だそいつは?」


「知らないのか? 数々のS級クエストをこなし、その達成率は驚異の30%超えという、最近話題のハンターだよ」


「30%だって!?」


 ハンターの一人が驚きの声を上げた。

 冒険者協会が制定するS級クエストの基準は「失敗して当然」だ。

 それくらい危険で難しいという意味なんだ。

 そんなクエストを30%という高達成率でこなすのは世界でも数えるほどしかいないって聞いたことがある。


「しかも高難度のクエストばかりこなしているから経験値もたくさん稼いでいて、レベルは50を超えてるって噂だ」


「素材ハンターでありながら並の戦士職よりも強いっていうあれか」


 それが本当ならかなりすごいことだ。

 しかもまだ十代前半。まさに天才中の天才だね。

 自分の噂に気を良くしたニアが自慢げな表情で胸を張る。


「噂には尾ひれが付くものだけど、残念ながら今の話は全部本当なのよね。ちなみに今のレベルは54よ。アンタたちは見たところ、30代前半ってとこかしら?」


「……ちっ。S級ハンターと戦いになれば、さすがに無傷ってわけにはいかないか」


 ニアの推測が正しかったのか、ハンターたちが武器を納めた。


「クエスト前によけいな怪我をすることもねえ。ここは引き下がってやるよ」


「遠足がしたいなら勝手にしてろ。だが俺たちの邪魔はするんじゃねえぞ」


 ハンターたちが口々に悪態を付きながら二階に上がっていく。

 珍しく部屋がいっぱいだなと思ってたけど、彼らが使ってたからだったんだね。

 やがてニアが僕のほうを向いた。


「さっきは助けてくれてありがとう。戦えばアタシが勝つのは分かり切ってたけど、礼は一応言っておくわ」


 お礼を言ってるらしいんだけど、その口調は傲然としていた。

 13、4歳という年齢にしてはずいぶん背は低いから見上げる体勢になるんだけど、腕を組んで不敵な笑みを浮かべている。

 ライムが面白そうにニアに駆け寄った。


「あははー、ちっちゃいのに偉そうでかわいいですー」


「ちょっと頭をなでないで!」


 ニアが手を振り払う。

 けど、ライムはすぐにもう片方の手で抱きしめた。


「うわー、抱き心地も最高ですー」


「こら、ちょっと、抱きつくな!」


 ニアがライムの腕の中で暴れる。

 だけどその腕はびくともしなかった。


「な、なんでアタシの力でもふりほどけないの!? なんなのよこの女!」


「はわー、娘ができたらこういう感じなのかなあ。カインさんとの子供はこういう元気な女の子がいいです!」


「うん、その話はちょっと気が早いっていうか、ニアは子供というには少し大きすぎるっていうか、どっちにしろ今する話じゃないと思うかな」


 ライムに抱かれたままニアが「誰が子供ですってー!」と怒っていた。

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