フードファイターライム
さすが大食いのスキル持ちだ。
大食い大会が開始してからチャンピオンの独走は変わらないまま進行していき、参加者たちも脱落しはじめた。
目の前にはもう空になったお皿が20枚は積まれている。
そのあいだもライムはマイペースに食べ続けていた。
「うーん、これも美味しいです! おかわりくださーい!」
ライムが空になったお皿を持って手を挙げる。
目の前には空になった皿が10枚も積み重ねられていた。
しかもそのあいだ一切ペースを落とすことなく。
チャンピオンですら最初ほどの勢いでは食べられなくなっているのにも関わらずに、だ。
ついにチャンピオンとライムの二人だけが残り、ようやく観客も異常に気が付きはじめた。
チャンピオンも目を丸くしてライムを見つめていた。
「そんな細い体のどこにそれだけの量が入るのか……まさかあんたも『大食い』のスキル持ちなのか?」
「?」
ライムが首を傾げる。
まだ口の中に料理が残っていたからしゃべれないんだろう。
その仕草をどう思ったのか、チャンピオンがニヒルな笑みを浮かべる。
「ふっ。言葉は不要ということか。確かにそうだな。ならこれで勝負を決めよう」
チャンピオンが手を挙げる。
すると、皿の上に乗せられた巨大な骨付き肉が運ばれてきた。
子豚を一頭丸焼きにしたみたいな、かなりのボリュームだ。
その大きさに周囲からどよめきが広がる。
「こいつひとつで五人前はある巨大肉だ。この終盤でこれだけの量はキツいだろう。だが……!」
チャンピオンは肉を素手でつかむと、大口を開けてかぶりついた。
「チャンピオンがいったー! 見るだけで胸焼けしそうな量を前にしてもまったく怯むことなく、骨ごと食べる勢いだ!!」
司会の人もヒートアップする。
チャンピオンは普通の人の倍くらいは大きく口を開けて、一口で巨大な肉の塊の半分を飲み込んだ。
あれもスキルの力なのかな?
もぐもぐと口を動かし、やがて骨だけを皿の上に吐き出した。
さすがチャンピオンらしい豪快な食べ方だ。
一口で半分を食べ終えたチャンピオンがニヤリと笑う。
「悪いが俺の胃袋は底なしでな、どれだけ食べても腹がいっぱいになることはない。つまり俺の負けはないってことだ。苦しくなる前にリタイアしたほうが身のためだぞ」
そういえば、どれだけ食べても決して満腹になることのない人がいるって聞いたことがある。
もしそうなら、さすがのライムでも勝ち目はない。
ライムもたくさん食べるけど、さすがに無限ってわけじゃないからね。
このままだと賞金を得るどころか、逆に参加費を払うことになりそうだ。
まあご飯をいっぱい食べられてライムも満足してるみたいだからそれはいいんだけど。
他にお金を稼ぐ方法を見つける必要がありそうだなあ。




