おまえ、マジで男だな!◇
ライムがクラインに僕と出会ったときの話をはじめた。
「わたしが傷ついて倒れていたところに、偶然カインさんが通りかかって……。そのときに、クエストで必要だったはずの薬をわたしに使ってくれたんです」
「まさか、カインがクエストを失敗した理由って……」
「ライムに使ってあげちゃったからなんだ」
「一角獣の万能薬って結構な値がするはずだろ……」
「そうだけど、アイテムならまた手に入れればいいからね。でも命はそうはいかないでしょ」
そんなことは比べるまでもない。
クラインもはっとしたように表情を変えた。
「……そうだな、すまん。一瞬でも驚いた俺が間違ってた。万能薬はそのためにあるんだからな。カイン、おまえはやっぱり俺が見込んだ男なだけはあるな。
ライムはそれがきっかけでカインのところに来たってわけか」
「はいそうです! この命はカインさんに助けられたのだから、カインさんのために使わなくてはと思いまして」
「そんなこと気にしなくていいのに」
「そういうわけにはいきません! それに、カインさんには初めての種付けも奪われてしまいましたし」
「たね、つけ……?」
クラインが戸惑いながら聞き返す。
この話題はまずい、と思ったけどライムの口のほうが早かった。
「カインさんは普段は優しいのに、いざというときはすっごく強引で、激しくて……。初めて会ったときからカインさんのことは大好きでしたけど、今ではすっかりカインさんのことが大大大好きなんです!」
うっとりとしながら語るライム。
ああ、うん。何度も経験したからわかる。これはダメだ。もう無理。言い訳のしようがない。
僕があきらめていると、クラインがニカッと笑顔になって親指を立てた。
「おまえ、マジで男だな!」
やっぱりとんでもない誤解を招いてるなあ……。
詳しい事情を話すとライムの正体まで話さなければならなくなる。
さすがにそういうわけにはいかないので、けっきょく誤解されたままだった。
しかたがないのでそのままで必要なものを買おうとしたんだけど、会計のときになって所持金がわずかに足りないことがわかった。
いつも一人分しか買わないから、ライムとの二人分の予算を間違えていたんだよね。
「カインはお得意さまだから別にツケでもいいぞ」
クラインはそういってくれたけど、そういうわけにはやっぱりいかない。
親しき仲にも礼儀ありっていうしね。
「そういう真面目なところは相変わらずだな。
そういえば町の広場で何かイベントをやるっていってたから、いってみれば小遣い稼ぎくらいならできるんじゃないか」
イベントかあ。
ここはアーストの町とは違って人も多いから、そういったこともたまに開催されている。
何か手伝うこともあるかもしれないし、行ってみようかな。