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おいしい料理に勝る武器はなし?

 竜の鱗で鍋を作ってほしい。

 そう伝えたら、スミスさんの目が丸くなった。


「は? 鍋? 鍋ってあれか、料理するときに使うあれか?」


「そうです。その鍋です」


 竜の鱗ならどんなに強火でも焦げ付かなくなるし、炒め物もからっと炒めることができる。

 軽くて丈夫で火の通りもいい、理想の鍋ができあがるはずだ。


「色々考えたんですけど、そもそも剣技スキルもない僕が強い剣を持ったところで当てられるとも思えないですし、鎧なんて着たら重さで動けなくなっちゃいます。

 だから武器は必要ないんです。料理に使える鍋のほうがよっぽど僕らしいんじゃないかと思いまして」


 僕には武器なんて必要ないし、ライムは下手な武器より自分自身をオリハルコンにしたほうが強い。

 それよりも、よく火が通るようになり、いっさい焦げ付かなくなる竜鱗の鍋のほうが僕にとってはありがたいんだ。

 もっとも、スミスさんにはそれが信じられないみたいだった。


「鍋? 鍋だと? 世界最高峰の素材を使って作るのが、焦げ付かないだけの料理用の鍋だって……?」


 つぶやく声が震えている。

 やがて肩まで震わせると、天井に向けて大声を発しはじめた。


「……くくく、がはははははははっ!!」


 スミスさんが今日一番の大声で笑い出した。


「そいつはいい、最高じゃねえか!

 竜鱗の鍋なんてこの世界で誰も作ったことないだろう。俺がその世界で最初の鍛冶師になるってわけだ。それでこそこの町にきたかいがあるってもんだ! こんなものお上品な騎士様どもじゃ絶対に思いつかないだろうからな!

 いいぜ、任せとけ! この俺が腕によりをかけて世界最高の鍋を作ってやる!!」


「はい、よろしくお願いします」


 スミスさんの腕は僕もよく知っている。

 世界最高の鍋を作るといってくれたのなら、本当に世界最高の鍋を作ってくれるだろう。


「しかし念のためにもう一度確認するぜ。一度素材にしちまったらもう取り戻せねえ。中には『解体』のスキルを持ってるやつもいるらしいが、基本的に材料にした素材は返ってこない。料理用の鍋にしていいんだな」


「ぜひお願いします。レベル1の僕が最強の剣を持ってたって使いこなせないですから」


 強い武器を使って敵を倒すことよりも大切なことが今の僕にはある。


「美味しい料理を待ってくれてる人もいるからね」


「カインさん……」


 ライムがデレデレになって僕を見つめる。

 たぶん美味しい料理と聞いてガマンできなくなったんだろう。

 その顔はゆるみきっていて、まるで溶けた氷のように……って本当に溶けてる溶けてる!


 慌ててライムの肩をつかんで体の向きを変えると、スミスさんの反対方向を向かせた。

 溶けてる顔なんて見せたら正体がばれちゃうよ。


「おーおー、朝っぱらから見せつけてくれるねえ。かーっ、俺もあと10歳若けりゃみせつけてやるんだがなあ」


 なんか勘違いしたような声が聞こえてくる。

 ちょうど僕から見てライムの顔とスミスさんの頭の位置が重なっているけど……。

 なにを勘違いされてるんだろう。

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