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完全な擬態

 僕が倒れてから数日が経った。


 あのあとしばらく王都にいたんだけど、カイゼルさんの薬を作ったりと色々な用事を済ませると、アーストの町へ戻ることにしたんだ。


 本当はもっと早く戻りたかったんだけど、あれだけの怪我をしたんだからしばらくは絶対安静だ、とシルヴィアにいわれて入院していたんだよね。

 毎日シルヴィアやニアがお見舞いに来てくれたから退屈はしなかったけど。


 そういえばどこかにいっていたエルもいつの間にか戻ってきていた。

 全部終わったからもう心配ないよ、といっていたけど、なんのことだったんだろう。

 それからしばらくして、またどこかに出かけていっちゃったんだけど。

 まあ、ふらっと現れて、ふらっといなくなるのがエルだから、あまり気にしてもしょうがないのかな。



 そういうわけで、町に帰る馬車の中には、僕とライムしかいなかった。

 ライムは当然のように僕にくっついていたけど、いつもなら満開のはずの笑顔を今日は曇らせている。

 自分の体を見下ろして眉根をひそめた。


「うーん、やっぱりこの服っていうのはなんだか苦手です。せっかくカインさんに抱きついてるのに、カインさんのことをあまり感じられません」


 そういって自分の服を邪魔そうにひっぱっている。


 僕が王都で休養を取っているあいだに、ライムの体にひとつ変化があった。

 変身能力がなくなったんだ。


 ある朝起きたらライムは裸の人間の姿になっていて、それ以上姿を変えることができなくなったと言っていた。

 そのおかげで、今まで変身能力で作っていた服も消えてしまったんだ。


 だから今は普通の服を着ている。

 まだちょっと慣れないみたいだけどね。


 それにしても、どうしていきなり変身できなくなったのか、ライムにはわからないみたいだった。


 ライムにわからないのなら僕にもその理由はわからない。

 でも可能性なら考えられる。


 ゴールデンスライムはなんにでもなれる。

 でもそれは、姿を似せるだけの擬態だ。

 あくまでも見た目を変えただけで、その中身はゴールデンスライムのままだった。


 だけどもしも。

 中身さえも変えるような擬態ができるのなら。

 なにかを強く願った結果、本来の自分を失ってしまうほどの完全な擬態が行えるのだとしたら。


 それは本当の意味での変身といえた。


 ライムは僕と生きることを強く願い、人間になった。

 ライムはライムになったんだ。


 とはいえ、いきなり自分の体が変わったらやっぱり不安になるはず。

 そう思ったんだけど、ライムは特に気にしていないみたいだった。


「どうせずっとカインさんと一緒なんですから、この姿のままでも平気です!」


 そういわれればそうなのかも知れないけど。


「でも、この服っていうのは、やっぱり落ち着かないです。どうしても着ないといけないんですか?」


「人間は普通は服を着ているからね」


「今だけでいいので裸になったらダメですか?」


「もちろんダメだよ!」


 服を脱ごうとしたライムを慌てて止める。

 姿は人間になったけど、中身はやっぱりライムのまま。

 危なっかしくて目が離せない。

 やっぱり僕がそばについてあげないとダメみたいだね。

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