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昨夜のことは一生忘れません

 酔っていたんだ。

 すべてはお酒が悪い。

 だから、僕はもう一生お酒は飲まないと固く誓った。




 朝起きると僕はベッドの中にいた。

 額を押さえながら体を起こす。

 ちょっと頭が痛いから二日酔いかもしれない。


 僕のとなりにはライムも寝ていて、すごく幸せそうな寝顔を浮かべていた。

 布団をかぶっているせいで見えないけど、感触からどうやら僕の腕にしっかりと抱きついているみたいだ。

 寝顔のまま僕の体に頬をすり寄せてくる。


 思わず微笑ましくなってしまうけど、腕を捕まれたままだと僕は起きられない。

 起こさないようにゆっくり腕を離そうとしたけど、がっちり捕まれていて身動きがとれなかった。

 うーん。仕方がない。起こすのもかわいそうだし、しばらくこのままでいよう。


 それにしても、お酒に弱いのを忘れてたとはいえ、こんなに弱かったとは思わなかったな。

 僕はステータスが低いからアルコール耐性も低いんだよね。

 そのせいでほんの少しのアルコールでも酔いが回っちゃうんだ。


 おかげで昨夜の記憶もあんまりない。

 昨夜はライムと、まあその……色々したあとソファで眠っちゃったことまではなんとなく覚えてるんだけど……。

 ソファで寝たはずなのに、どうしてベッドに移動しているのか思い出せなかった。

 あのあと、いったいどうしたんだっけ……?


 それにもうひとつ気になることがある。

 腕に当たるライムの感触から、どうやらライムは服を着ていないのがわかった。

 そこまではよくあることだ。

 ……いや、よくあったら困るんだけど、とにかくそこまでなら今さら驚くことじゃない。


 不思議なのは、ライムの感触がずいぶんとなま温かいというか、妙に肌が密着しているというか、まるで僕まで服を着ていないような気がするというか……。


「……いやいや、そんなまさか、あるわけないよねそんなこと……」


 ゆっくりと布団をめくる。

 そこには、裸のライムが、同じく裸の僕に抱きついていた。


「………………。えっと、これは、まさか……」


 ライムが裸になってるのはいつものことだけど、なんで僕まで……?

 混乱する僕の横で、ライムが目を覚ました。


「あ、カインさん、おはようございます……」


「ああ、うん。おはよう。えっと、ちょっと聞きたいんだけど、昨日僕たちって……」


 ライムはきょとんとしたあと、頬をほんのりと赤く染めて恥ずかしそうに小さく笑った。


「昨日はカインさんと一緒になれてとてもうれしかったです……。えへへ……」


「え、その反応はどういう意味!? どうして僕たちベッドで寝てるの!?」


「カインさんが、そういうことはソファじゃなくてベッドでするものだから、といって、わたしを運んでくれたじゃないですか……。服も、その時に……」


 ふとベッドのそばにあるイスを見ると、ライムが着ていた赤いドレスが掛けられていた。

 僕の服も当然にように重ねられている。


 ソファじゃなくてベッドでする、お互い裸になったする事といえば……。


「僕たち昨日ベッドでなにしたの!?」


「あの、えっと、それは……、わ、わたしお水とってきますねっ」


 早口でそう告げると、小走りで台所へと向かっていった。

 まるで逃げるかのように。

 そんな反応は、今までのライムには一度もなかった。


「そ、そんなはずないよね……。僕にそんな度胸ある訳ないし、昨日はお酒を飲んでいたせいで少しだけ積極的になっていただけで、記憶もないし、なぜか裸になってただけだから……」


 言い聞かせてもよくわからない汗がだらだらと流れてくる。

 台所に向かっていたライムが急に足を止めると、はにかむような笑みで振り返った。


「カインさん、昨日はありがとうございました。あんなにステキな夜は初めてで、思い出すだけでもまだ胸がドキドキしてしまいます」


「そ、そうなんだ……」


「はい、この思い出は一生の宝物です!」


 その笑顔はまさしく恋する乙女そのもので、それ以上僕はなにも言えなくなってしまった。

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