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普通はあんなことできないっすよ

 控え室に戻ってくるとすぐに、エッジが僕らのところに飛んでやってきた。


「さすがカインの兄さんっす! あのミストレード相手に圧勝じゃないですか!!」


「圧勝っていうか……僕はなにもしてないんだけどね」


 シルフたちのイタズラでミストレードさんの魔力が枯渇してしまっただけだ。

 しかもあれはイタズラというよりも、たんに友達を呼んだだけかもしれない。


 だから僕は本当になにもしていないんだけど、エッジはそんなことないと首を振った。


「なに言ってるんですか! 生身でシルフを止めるなんて人間業じゃないっすよ! それどころか相手の術を操ってさらにシルフを召還させ、相手を魔力切れにさせるなんて見たことも聞いたこともないっす!」


「いや、あれは僕がやったんじゃなくって、シルフが勝手に呼んだだけなんだけど……」


 たぶんシルフも、そんなことをしたのは初めてだったんだろう。

 だから術者が魔力切れで倒れるなんて知らなかったし、倒れたミストレードさんを見てあんなに心配したんだ。

 自分のせいであんなことになるなんて思わなかっただろうから、本当にショックだっただろうね。

 最後は笑顔で帰っていったから安心したよ。


 だけど、ライムはまだちょっと不満そうだった。


「カインさんはすごいですけど、すぐ浮気するのはどうかと思います」


「だからあれは浮気じゃないんだけど……」


「シルフどもとばっかり遊んでてずるいですー。わたしもカインさんと遊びたいですー」


 そういって、僕の腕をだだっ子のように引っ張りながらクルクルと周囲を回っている。

 シルフの時みたいに踊っているのかな。


「うん、わかったよ。今度はライムと遊ぼうか」


「わーい、ありがとうございます!」


 そういって回る速度がますます速くなっていく。

 そういえばライムとは色んなことをしたけど、こうやって純粋に遊ぶようなことはあんまりなかったかもしれない。

 落ち着いたらライムとどこかへ遊びに出かけるのもいいかもね。


 そうやってライムとクルクル回っていたら、ふとミストレードさんのことを思いだした。


「そういえば相手の人は大丈夫だったのかな」


 いちおう魔力を回復させる薬を飲ませたから、平気だとは思うんだけど。


「さっき聞いた話ですと、命に別状はないってことでした。相手を倒すだけじゃなく、助けたあとのことまで考えてるなんて、さすが懐がでかいっすね」


「そうですよ。カインさんはとっても優しくてすごいんですから!」


 相変わらず僕のことになると、ライムがうれしそうになる。

 そのことがなんとなくうれしいというか、恥ずかしいというか……。


 でも、ミストレードさんが無事ときいてほっとした。

 精霊にあんなに好かれる人なんて、なかなかいないだろうしね。


 ほっとしていると、急にライムが僕に顔を寄せてきた。

 なんだか眉をひそめて不満そうに僕を見ている。


「むむむ……」


「どうしたの?」


 ライムが僕に顔を寄せてくんくんと鼻を鳴らしている。


「今気がつきましたけど、カインさんからさっきのシルフの臭いがします……」


「ええっ。そうなの? というか、シルフの臭いってなに……?」


 物質的肉体をもたない精霊に、臭いなんてないはずだけど……。

 僕ら人間にはわからないだけで、ライムにはわかるなにかがあるのかな。


 あ、でも。

 そういえばシルフが、風の祝福をなんとかっていってたっけ。

 もしかしたらそれが関係してるのかな。


 そう言ったら、ライムがますます険しい表情になった。


「むむむー! カインさんはわたしのなんです! シルフどもなんかにあげませんからー!」


 そういって自分の体を僕にめいっぱいこすりつけてきた。


「えっと、いったいどうしたのライム……」


「わたしの臭いをこすりつけてるんです!」


 なんだか犬みたいというか、猫みたいというか……。

 どっちにしろ、ライムの色々な部分が僕に当たるからものすごく恥ずかしい……。

 しかも色んな人に見られてるし……。


 エッジも、「お二人とも仲良くてうらやましいっすね。自分もカイン兄さんみたいにでっかくなって、美人の奥さんを捕まえてみせるっす!」と意気込んでいた。


 目標があるのはいいことだけど、僕とライムはそういうんじゃないんだけどなあ……。

 と言ったところで、今の様子をみたら信じてもらえないのはわかっていたので、黙っていることにした。


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