もっとたくさん教えてください◇
「もう、カインさんったら、繁殖期になったら教えてくださいっていったのに……いつも強引なんですから……」
ライムがうっとりとした笑みを浮かべて僕を見る。
見た目はものすごくかわいい美少女だから、そんな表情をされるだけで理性を失ってしまいそうだ。
ダメだダメだ。なにを考えてるんだ僕は。
ライムはまだなんていうか、人間社会のことをよくわかっていない子供みたいなものなんだ。
だからそんなことがいえるだけ。
それにつけ込むことは、無知を利用して騙すようなものだ。
なにも知らない子どもをだますなんて、最低最悪の行為じゃないか。
「いや、えっと、ごめん。交尾をしたいとかそういうつもりはないんだけど……」
そもそも僕とライムは別々の場所で寝てたはずなのに、なぜかライムが僕のとなりにいたのが最大の理由な気がするんだけど。
ライムがゆっくりと首を振る。
「イジワルいってごめんなさい。本当はカインさんの体温を感じることができて、すごくうれしかったんです。でも……」
僕を見つめる表情が少しだけ拗ねたものに変わった。
「今日も種付けしてくれなかったですね。早くカインさんと繁殖したいです」
相変わらずすごいことを平気でいってくる。
僕のほうが恥ずかしくなって目をそらしてしまった。
「えっとだから、それはその……、そういうことは、人間はもっと準備というか、段階を経てするものなんだよ。だからその、まだできないんだ……」
まだというか、本当にそんな日が来るのかわからないんだけど……。
ライムが微笑みを浮かべる。
「そうなんですね。急がせてしまってごめんなさい。まだ人間のことをよく知らないので……。人間のこと、カインさんのこと、もっとたくさん教えてください」
「う、うん。それはもちろんだよ」
僕はすぐにうなずいた。
ちゃんと正しい知識を教えないと、後々大変なことになりそうだからね。




