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武道大会第4回戦

 武道大会の第四回戦は、準々決勝ということだった。

 試合会場も前回のように4つに分けたものじゃなくて、まるまるひとつを使って行われるみたいだった。


「カインの兄さん、ライムの姐さん、頑張ってくださいっす!」


 エッジの応援を受けながら会場への入り口を抜ける。

 外に出ると同時に、周囲から一斉に歓声が響きわたった。

 前回よりもはるかに大きい。

 音が壁となって周囲から迫ってくるような感じだ。


「きたぞ、アレが今大会のダークホース、カインとオリーブペアか」

「あのオリーブって女がほとんど一人で倒してきたらしい」

「そんな強そうには見えないけど……ていうかめちゃくちゃ美人じゃないか」

「男の子の方も強そうには見えないけど、よく見るとかわいくてタイプかも」


 なんだか色々噂されているなあ。

 とりあえず、ライムが疑われているわけではないので、そこは安心かな。

 この大会に出る人は強い人が多いからね。

 ライムも強いけど、それだけだとさすがにそこまで目立つわけじゃないみたいだ。


「うわー、今日は昨日よりも人間がいっぱいいますねー」


 ライムがキョロキョロと観客席を見渡している。

 これだけの人に見られているのかと思うと、僕もなんだか緊張してきたなあ。


 会場の中央へと歩いていくうちに、反対側のゲートから対戦相手も姿を現した。

 同時に、僕たちの時の倍以上も大きな歓声が響き、観客の興奮も最高潮に達した。


「来たぞ! 風使いのミストレードだ!」

「確か前回の準優勝者なんだろ。前回優勝者が出ていない今回は、一番の優勝候補のはずだ」

「お前の勝ちに全財産賭けてるんだ。頼むぞ!」


 どうやらかなり強い人みたいだ。

 だけど、相手の人には不思議なことがあった。


 相手の人と会場の中央で向かい合う。

 ローブを身にまとった若い魔術師だ。

 僕は気になっていたことをたずねた。


「あの、お一人なんですか?」


 そう。

 現れたのは一人だけだったんだ。


 この大会はタッグ戦だ。

 普通は、僕とライムが一緒に出場しているように、二人一組で参加するはずなんだけど……。


 魔術師のミストレードさんが口元にさわやかな笑みを浮かべる。


「確かにこの大会は二人一組だ。でも申請すれば一人で参加しても構わないんだよ」


「そうなんですか?」


「もちろん、そんなことをするのは私だけなんだけどね」


 ミストレードさんがさわやかな笑みと共に手を差し出す。


「君たちのことは聞いているよ。初参加なのにとんでもなく強いんだってね」


「そんなことはないですけど」


「ははは、ここまで勝ち上がっておきながらずいぶん謙虚だな。今までは君たちのことを話に聞くだけだったが、こうして目の前にすることで、底知れない力を持っているのを改めて感じるよ。そこの女の子からはもちろん、君からもね」


 ライムはともかく、僕にはなんの力もないんだけど……。


「今日はお互い、いい試合にしよう」


「そうですね。よろしくお願いします」


 僕らは握手をかわすと、選手入場口の手前に引かれた開始線まで戻っていった。


 二人一組の大会に一人で出ても、確かに問題はないかもしれない。

 でもわざわざそんなハンデを取る人なんて、普通はいないよね。

 なのにあの人は一人で準々決勝まで勝ち進んできて、しかも優勝候補なんていわれている。


 きっとものすごく強い人なんだろう。


「ライム、気をつけてね」


 心配になってそうつぶやくと、ライムは笑顔でぐっと両手を握りしめて見せた。


「ご心配ありがとうございます! でもわたしは人間ごときには負けませんよ!」


 頼もしいことをいってくれる。

 ライムはいつだって前向きで、弱ったところを見せたりしない。

 そういうところは僕も見習わないといけないよね。

 まあ、実際に強いから言えるのかもしれないけど。


「それでは、試合開始!!」


 開始の合図と共に、会場中に大きな銅鑼の音が響きわたった。

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