武闘大会
「ここがなんとか大会ってところの会場ですかー!」
集まった人の多さを見てライムが歓声を上げる。
今僕らは武闘大会が開催される闘技場の前に来ていた。
さすがに人が多い。
前にも一度、ケープサイドでライムと祭りを見に行ったことがあったけど、比較にならないくらいこっちの方がにぎやかだった。
人の多さも、出店の数も、段違いに多い。
エルも興味深そうに周囲を見渡している。
「ボクも一度このあたりに来たんだけど、その時はここまで人間は多くなかったよ」
「もうすぐ本戦だから、人の数も多くなってるみたいだね」
本戦は明日からみたいで、今日は試合はない。
闘技場の入り口も閉まっていて中には入れなかった。
それにも関わらずこれだけの人が集まってるんだから、それだけ大きな大会ってことだよね。
「それにしても、こんなに集まるなんて、人間って戦うのが好きなんだね」
エルが少し不思議そうにつぶやく。
「戦うのが好きっていうか、まあ、見る分には危険もないからね。そういうのが好きな人はきっと楽しいんじゃないかな。それに武闘大会って普通は個人戦が多いんだけど、この大会は二人一組で参加するタッグ戦なんだ。その珍しさも人気の理由かもしれないね」
個人戦だと、それぞれの強さで勝敗が決まってしまう。
それはそれで面白いんだろうけど、二人組になれば連携や戦略なんかも生まれ、個々の実力を足した以上の力が発揮されることになる。
それが人気の理由のひとつでもあるみたいなんだ。
「二人一緒……ってことは、カインさんと一緒に出られるってことですか!?」
ライムが目を輝かせる。
僕は苦笑しながら首を振った。
「そうできればよかったんだけど、アルフォードさんの話だと予選は昨日で終わっちゃったみたいなんだ」
この大会はより多くの参加者を募っているため、予選の途中でも参加は可能だったらしいんだ。
どういう形式なのか詳しくは聞かなかったけど、一定回数以上勝てばいいみたいらしいね。
本戦の参加者も予選が終わるまで正確にはわからないから、本戦の組み合わせも予選が終わってからでないと組めないみたいなんだ。
今日一日休みなのもそういう作業があるからみたいなんだよね。
ただ、さすがに予選が終了したあとからの参加は出来ないみたいだった。
もし出場できるのなら、って思ってたんだけど、さすがに無理だったみたいだ。
そのことを説明すると、ライムがしょんぼりとうつむいた。
「そうなんですか。残念です」
「こればっかりはしかたないからね」
「じゃあこれからどうしましょうか」
「うーん。まあ、もともと参加する予定もなかったしね。今回は観戦だけにしようか」
「じゃあしばらくはカインさんとお出かけできますね!」
しばらくというか、ほとんど毎日ライムとはお出かけしてる気がするけど……。
とはいえ、用事はこれでなくなってしまった。
大会の優勝者が決まるまでは僕たちもやることがない。
ここのところ色々とあったから、しばらくは王都でゆっくりするのもいいかな。
そう思っていると、二人組の男性が僕たちのところにやってきて、勢いよく頭を下げた。
「「ライムの姐さん、こんちわーっす!」」
大きな声が周囲に響き渡った。
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