第三の素材について
僕が声をかけただけで卒倒したフィアだったけど、やがて持ち直したみたいでよろよろと立ち上がった。
「その、ずいぶん早いお帰りですのね……。30日はかかるってお話でしたけど……」
「そのつもりだったんだけど、みんなのおかげで早く帰ってこれたんだ」
「そ、そうでしたの……。貴方が戻ってくるまでのあいだに術を解く予定だったのですが……」
「やっぱりまだ調子悪いの?」
詳しい話は聞いていないんだけど、フィアにはなにかの魔法がかかっているらしくて、そのせいで僕に対してだけこんな感じになってしまうみたいなんだ。
僕が戻ってくるまでに魔法を解いておくって話だったんだけど、予定よりもだいぶ早く帰ってきたから、まだ解けていないみたいだね。
心配になって近づくと、フィアの顔が真っ赤になった。
「そんな急に近づかないでください! 貴方のことを好きになってしまいますわよ!?」
「ええっ!?」
そんなことをいわれて驚いてしまう。
思わず後ろに下がると、フィアもほっとしたようにため息をついた。
顔色もだいぶ元に戻っている。
とはいえ、フィアとは今後の相談をしなければいけないんだよね。
「いちおう探していた素材のひとつである「生命の水」を採ってきたよ」
「それは、おめでとうございます……。本当に存在するかどうかも曖昧なものでしたのに、こんな簡単に手に入れてしまうなんて、やはりカイン様は、なんてすごいお方なのでしょう……。胸の高鳴りが収まりませんわ……」
やけに熱っぽい視線を送ってくる。
それから、はっとしたように我に返ると、振り払うように首を激しく振った。
「や、やはり、まだ術の影響が……」
「でも次の素材の打ち合わせをしないといけないし」
「そ、そうですわね……」
そういうわけでアルフォードさんに部屋を借りて、フィアと打ち合わせをすることにした。
僕の両となりにライムとエルが座り、正面にフィアが座った。
といっても、フィアは壁際までイスを後退させて、さらに顔も背けていた。
「そんなに離れたら話しにくいんじゃないかな」
「でも、カイン様のお顔をあまり近くで見つめると、まだ胸がドキドキしてしまうのです……」
「そ、そうなんだ……」
フィアはかなりの美人だ。
魔法の影響でこんな風になってるって話だったからフィアの本心ってわけではないと思うんだけど、やっぱり気になってしまう。
だからといって、あんなに離れていたら声も聞き取りにくい……。
でも僕が近づくわけにはいかないみたいだし……。
どうしたらいいかわからずに困っていると、となりでライムが立ち上がった。
「わかりました。それではわたしがかわりに話をします」
「ライムが?」
「カインさんの言葉をアイツに伝えてきますので、その答えを聞いたらカインさんにお伝えするんです」
なるほど。
それなら確かにフィアに近づかなくても話ができそうだ。
「それじゃあお願いしようかな。とりあえず、次の素材の手に入れる方法について聞いてくれるかな」
「わかりました!」
ライムがうなずくと、フィアの方に向かっていく。
伝言を聞いたフィアがライムに向かってなにかを話すと、ライムもすぐに僕のところに戻ってきた。
「なんていってた?」
「わたしとカインさんはお似合いの夫婦なのでアイツは潔く身を引くそうです」
「絶対そんなこと言ってないよね」
「だいたいそんなようなことを言っていました」
本当かなあ……。
フィアの方を見ると、両手で顔を覆うようにしてうつむいていた。
「ああっ、ライムさんだけ話すなんてずるいです! ワタクシもカイン様のお声が聞きたいですわっ!」
あ、やっぱり本当かもしれない……。
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