王都への帰還
馬車に乗ること約2日。
僕らは王都に帰ってきた。
行きと帰りで合計4日かな。
最初の予定だと短くても30日と思ってだけに、ずいぶん早く帰ってきてしまったことになる。
アルフォードさんにもそれくらいの帰還で帰ると伝えていたため、先にアルフォードさんの館に帰ってきていた僕らを見てものすごく驚いた。
「もう帰ってきたのかね!? まさかとは思ったのだが、本当だとは……」
「ええ、予定よりもだいぶ早くなってしまいましたけど」
「それにしたって、この早さではほとんど往復の時間だけではないのか……? カイン君のことだ、目的のものは手に入れたのだろう」
「ええ、もちろんです。エルのおかげでだいぶ早く着きましたので」
「エルフの森への行き方はじいちゃんに教えてもらってたからね」
エルもどこか自慢げにそう話す。
「エル君が……。なるほど、彼女なら、そういうこともあり得るのか……」
エルの正体はエルダードラゴンが女の子の姿になったものだ。
アルフォードさんもそのことは知っているから、そこに関係があることに気がついたんだろう。
口に出さなかったのは、きっと周りの人に聞かれないようにするためじゃないかな。
アルフォードさんはそういうところにはきちんと気を使ってくれる人だからね。
僕がそのことに感銘を受けていると、見知った人影が駆け込んできた。
「カイン殿!」
銀色の髪をひるがえせてきたのは、シルヴィアだった。
「こんなに早く帰ってくるとは思っていなかったぞ」
「ああ、うん。予定よりだいぶ早くなっちゃってね」
「それはなによりだ。エルフの森に向かうとのことだったが、きちんと行けたのか?」
「もちろん大丈夫だったよ。これがその生命の水なんだ」
ダミアンさんに作ってもらった容器を取り出す。
ふたを開けると、輝くような水がなみなみと入っていた。
よかった。ちゃんと魔力を失わずに持ってこれたみたいだ。
普通の容器だとエルフの魔力は失われちゃうらしいからね。
そのためこうしてわざわざ専門の容器を作ってもらったんだよね。
シルヴィアとアルフォードさんも興味深そうに生命の水をのぞき込んでいる。
「これが生命の水か……。見るのは初めてではないが、以前に見たものよりもはるかにたくさんの魔力を秘めているのがわかるな」
「やっぱり取ってきたばかりだからかもしれませんね」
「私は初めて見ました。こんなに力強いものだったのですね」
シルヴィアも感慨深そうにうなずいている。
「そういえばニアは?」
いつもならシルヴィアと一緒に来てくれそうなんだけど。
「あのちびっ子なら、モンスター討伐でまだ帰ってきていないぞ」
そういえばどこかの村で農作物を荒らすモンスターが出たから退治しに行くっていってたっけ。
ニアほどレベルが高い冒険者でも時間がかかってるってことは、それだけ大変な相手なんだろう。
きっと頑張ってるんだね。
「出発前に聞いた話だと、もう二、三日はかかりそうな感じだったな。先ほどちびっ子宛に、カイン殿がすでに戻られたと手紙を送らせたところだ。きっと悔しがり、急いで帰ってくることだろう」
そういいながらシルヴィアが含み笑いのようなものを浮かべていた。
わざわざ手紙を書いてあげるなんて、やっぱり二人は仲がいいなあ。
ふと視線を感じて振り返ると、離れたところからフィアが顔だけをのぞかせて僕の方を見ていた。
目が合うと物陰に慌てて隠れてしまう。
けど、やがて恐る恐る顔だけをのぞかせてこっちを見てきた。
「あ、あの、お帰りなさいませ……!」
そういえばフィアはなんだか調子が悪いみたいで、僕に対する態度がぎこちないというか、なんか避けてるみたいなんだよね。
まだどこか距離を感じたけど、でも前に比べたら少しはマシになっている気がする。
それにせっかく声をかけてくれたんだから、ちゃんと挨拶を返さないとね。
「うん、ただいま、フィア」
そう挨拶した直後にフィアがばたーんと床に倒れた。
「ああっ、ただいまなんてまるでワタクシとカイン様が夫婦みたいで胸が高鳴るではないですかっ!」
そんなことを床に向かって叫んでいる。
……やっぱりまだ調子が悪いみたいだなあ。
「……むむっ」
そんなフィアを見てライムも眉をひそめた。
「カインさんと夫婦になるのはわたしですよ。泥棒猫は今のうちに処分しましょう」
「そんな怖いこといったらダメだよ……」
まだ自然の中にいた影響が残ってるのかなあ……。
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