もうお戻りになられたんですか!?
ライムたちと道を歩いていくうちに朝日が昇りはじめた。
周囲が明るくなる。
やがて道の先に馬車が見えてきた。
エルがこの先に人間がいるって言ってたけど、あれがそうなのかな。
それになんだか見覚えがあると思ったら、僕たちが王都から乗ってきた馬車だった。
どうやら追いついちゃったみたいだね。
「せっかくだし乗せてもらおうか」
「うー、わたしはあの馬車って乗り物は好きではないです……」
「ボクはけっこう好きだよ。わざわざ馬なんかに引っ張って移動するなんていかにも人間らしいよね」
ライムが表情をしかめさせるけど、エルは楽しそうだった。
このあたりみたいな未舗装の道を走ると、馬車はかなり揺れるからね。
エルは平気みたいなんだけど、ライムは苦手みたいだ。
まあ乗り物が苦手な人っているからね。
ライムもそうなのかもしれない。
「すみませーん」
馬車に向かって声をかける。
しばらくして中から御者のおじさんが現れた。
まだ少し眠そうだから、さっきまで寝てたのかもしれないね。
「お休みのところ申し訳ありません」
そういうと、御者のおじさんも気さくに手を挙げた。
「ああ、気にしなくていいよ。旅人さんかい? 王都までなら乗せてあげられるが……」
対応が慣れてるところを見ると、こういうことはよくあるのかもしれない。
実際、道に迷ったり、徒歩で移動中の冒険者がたまたま出会った馬車に乗せてもらうことはよくあることだ。
僕も何度か助けてもらったことがあるからね。
なんだけど……。
「……って、カインさんじゃないですか!」
眠そうな表情を打ち消して御者のおじさんが驚いた。
「別れたのつい昨夜のことだったのに、もう追いついたんですか!? もしかして、夜通しずっと追いかけてきたんですか?」
「追いかけていたわけではないですけど、夜のあいだに移動していまして」
「それにしても追いつくのが早すぎるといいますか……。まさか、なにか問題でも?」
おじさんが心配してくれたけど、別にそういうわけじゃないんだよね。
「いえ、大丈夫です。そういうわけではないです。生命の水も手に入れましたし」
エルとライムもうなずく。
「エルフの森にもちゃんと行ってきたよ。初めてだったので楽しかったな」
「あいつらみんなカインさんのこと狙ってたのでわたしは許してません! まあ、果物は美味しかったので、そこは認めますけど……」
「そうだね、すごく美味しかったね。いくつかわけてもらってきたから、帰ったらそれを使ってなにか作ってみようか」
「カインさんの料理! あんなに美味しい果物をカインさんが料理したら、さらに美味しく……。考えただけでよだれが止まらないですぅ……」
ライムが恍惚とした表情を浮かべる。
リンゴとか蜜もたくさん詰まってて美味しかったし、アップルパイにするのがいいかな。
そんな僕らを、御者のおじさんはどこか呆然としながらみつめている。
「エルフの森に、一日とかからずに行って戻ってくるなんて……。はは……、アルフォード様の言っていたとおり、カイン様たちは本当にすごいお方なんですね……」
なんだかずいぶんと驚いていた。
まあこんなに早く着いたのもエルのおかげだからね。
僕もまさかこんなに早く帰ってこられるとは思ってなかったし、驚かれるのも無理はないよね。
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