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エルフの約定

 カインたちが水浴びしているあいだ、ボクはエルフの長老だという大樹の真下に残っていた。


『よく来た、管理者の末裔よ』


 頭の中に意味が伝わってくる。

 人間のような言葉でもなく、じいちゃんのようなテレパシーでもない、不思議な感覚だ。


「よくわからないけど、じいちゃんがエルフの森にいったら長老を話をしてこいといってたから」


『先代の管理者か……。息災にしているか?』


「元気かってこと? 最近はあんまり外に出ないかなあ」


 元々竜の里に引きこもってて外に出ることはほとんどなかったけど、最近は動かないことも多い。

 特にボクに竜の里の管理を任せてからは、姿を現さないこととすらあるほどだ。

 ボクたちは純粋な生命じゃないから死という概念もないらしいけど、さすがに心配になるかな。


『それにしても、竜が人の姿をして訪れるとはな。永く生きてきたが初めてのことだ』


「そうなんだ。人化の術はじいちゃんに教えてもらったんだけど」


『人の前に姿を現すため一時的に人の姿となることはある。しかし常に人の姿になりたいと思う竜は初めてだ』


「ボクは人間が好きだからね」


 人間は色々なことを考えていて面白い。

 ずっと変化がないボクらとは大違いだ。


『共にいた人間は虹の継承者であろう。どのような力を授かった』


「そういえば虹の欠片を取りに来たんだっけ。なんか丸い石みたいな物になったけど」


『虹の宝玉。すべての色をひとつにまとめる証。それが次の時代ということか』


 なにかを納得したみたいだ。

 そういえばじいちゃんもなんかそんなことをいっていたっけ。

 難しくてよくわからなかったけど。


『竜が我のところに来たということは、次の勇者が現れたということ。新しい時代が始まるということだ』


「そうなの? ボクはたまたまカレに頼まれてきただけなんだけど」


『それがこの世界を維持する者によって定められた運命。我らの意志に関わらず、時が来れば巡り会うようになっている』


「……うーん、じいちゃんと同じで長生きしてる人はいうことが難しいよ……」


『案ずることはない。いずれわかるときが来る。森を守るが我が定め。虹を守るが竜の定めということだ』


 やっぱりよくわからない。


『それよりも注意すべきことがある。いつの時代も虹の力を狙う者はいた。自らに仇なす前に排除しようとする者。その力を我が物にしようとする者。世界そのものを敵視する者。此度もまた現れるだろう』


「難しい話は分からないけど……。カレを傷つけようとする奴がいるのなら、ボクは許さないよ」


『虹を守るが竜の定め。失えば世界の維持に綻びが生まれる。油断せぬことだ』


 じいちゃんが話をしにいけといってたのはこのためなのかな。

 カレを狙う奴がいるのなら確かに許せない。

 ボクはゆっくりとうなずいた。


 ◇


 泉で魔力を提供していると夜になってしまったため、今夜はエルフの里で一泊させてもらうことになった。


 そして次の日の朝。

 昨日水浴びした泉が美しく輝いている。

 昨日の時点でもだいぶキレイだったけど、今はその比じゃない。

 七色に輝いていて、まるで虹が泉の中に溶けだしたみたいだ。


「ふわあ、すごいキレイですねえ……」


 ライムが感嘆のため息をもらす。


「これが生命の水よ」


 マナが教えてくれた。


「泉の真ん中で水浴びをすることで、魔力が泉の中に溶け出したのよ」


 なるほど。それで僕の協力が必要だったんだ。


「あれ、でも待って。水浴びをするだけでいいのなら、別にマナたちに僕の魔力を上げる必要はなかったんじゃ……」


「ふふ、そんなの決まってるじゃない。アナタは目の前においしいご飯があったらどうする?」


「もちろん食べます!」


 勢いよく答えたのはライムだ。

 マナもニコリと笑みを見せる。


「つまりそういうことよ」


 そういって、イタズラっぽく微笑んだ。

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