そんなに近いの!?
「エルフの森に行く時間のこと? それだったら数分もあれば着くんじゃないかな」
エルの言葉に僕は驚いてしまった。
「数分って、そんなに近いの!?」
「近いというか、普通に歩いていくんじゃなくて、竜の里みたいに隠れてるんだ」
「竜の里っていうと、果ての草原にあったやつのこと?」
果ての草原と呼ばれる広大な草原を一番奥まで進むと、それ以上どうやってもループして進めなくなる場所があるんだ。
これまでは、どうしてそんな場所があるのかわからなかったんだけど、実はエルたちが住む竜の里があったんだ。
竜の里は普通の人間では入れないみたいで、資格を持たない人が入ろうとしても気がつくと元の位置に戻っている。
そういう結界みたいなものが張られているみたいで、中に入るにはエルのようなエルダードラゴンに招いてもらう必要があるんだ。
僕が入ったときも、エルが一緒にいたから入れたんだし。
エルフの森も同じように隠れているという。
「つまり、ここにも結界が張られているってこと?」
「竜の里みたいに隠してるわけじゃなくて、人間の世界とは違う場所にあるって感じかな。だから結界があるっていうよりは、その世界への行き方を知らないと見つけられないって感じだと思うよ」
「じゃあ、正確にはここにあるってわけじゃないんだ」
「そうだね。ここからならエルフの森への道を作れるって感じかな」
なるほど、それで今までエルフの森がどこにあるのかはわからなかったんだ。
たまにエルフの森に迷い込んだ人がいるのは、なにかがきっかけになって偶然入り込んじゃったのかな。
「つまりどういうことですか?」
ライムが不思議そうに首を傾げている。
確かにちょっと難しい話だったからね。
「エルフたちは別の空間にいるってことだよ」
「なるほど……?」
なるべく一言で説明したつもりだったけど、やっぱりちょっと難しかったみたいだ。
「よくわかりませんが、わたしがエルフを一度も見たことなかったのもそれが理由なんですね」
「きっとそうだね」
なにしろ違う空間にいるのなら出会うはずがないからね。
「それじゃあエルフの森への入り口を開けるよ」
エルがそういうと、目の前の森の景色が丸いかたちに歪み、その奥に別の景色が映っていた。
まるで空間に穴があいているみたいだ。
その先は見たこともないほど美しい森だった。
周囲は空を遮るような薄暗い森が広がっているのに、穴の先からは光があふれてくる。
同じ森なのにまったく違う。
あれがエルフの森なのかな。
「それじゃ行くよ」
前を歩くエルに続いて僕たちも中へと入る。
たったの一歩で伝説のエルフの森に着いてしまった。
それにしても、30日の予定で荷物を持ってきたのに、ほとんど不要になっちゃったな。
足りなくて困るよりはマシだから別にいいんだけど。
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