表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/362

これはまさかあのお方の……

 しばらく竜鱗の鍋を堪能したダミアンさんは、僕たちを工房の客室に案内してくれた。

 席に着くなり、顔がテーブルに当たりそうになるくらい深く頭を下げる。


「先ほどは追い出すような真似をしてすまなかった。俺がここの工房をまとめてるダミアンだ」


「そんな、頭を上げてください」


 あわててそういったんだけど、ダミアンさんは頭を下げたまま首を振った。


「あんたのことを見た目で侮っちまった。鍛冶師にとって大切なのは、槌を振る腕よりも、物を見る目だとあの人からもいわれていたのに」


「僕はそんなに大したことはないので、ダミアンさんの目は間違ってないと思いますけど……」


 実際あの鍋はスミスさんが作ったものであって、僕はなにもしていないし。

 ただのレベル1でスキルもない冒険者だ。


「いや、あの鍋には鍛冶師の技術のすべてが詰まっていた。どうでもいい人間相手にあんな仕事はしない。依頼人のことを深く尊敬し、最高の作品を届けたいと思う心がなければ、あそこまで妥協のない仕事はできないだろう」


 ダミアンさんはようやく顔を上げたけど、僕をまっすぐに見る瞳には真摯な光があった。


「あんたは、あれほどの職人にそこまで思われる人物ってことだ。それを見抜けなかったのは俺の力不足だ」


「よくわかりませんけど、カインさんはやっぱりすごいってことですね!」


 ライムがニコニコとうなずいている。

 いや、すごいのは僕じゃなくてスミスさんだと思うけど。

 なにしろ、王都で一番の腕を持つというダミアンさんにそこまでいわせるくらいなんだから。


「ところで、あの鍋を作ったのは誰なんだ」


「スミスさんです」


 僕が答えると、ダミアンさんが腕を組んで考え込む。


「そういえばここを紹介したってのもそのスミスといっていたか。しかしそんな名前の知り合いなんていないが……」


「そういえば王都にいたことは違う名前だっていってました。昔の名前までは教えてくれませんでしたけど」


「違う名前……? しかも、ここを紹介した……。ということは、もしかしてジェンドさんか!?」


 ダミアンさんが驚いたように立ち上がる。


「あの人は今どこにいるんだ!?」


「ええっと、すいません、昔の名前は聞いていないので……。それに事情があって、今いる場所を教えるわけにはいかないんです」


 スミスさんは、わけあって王都から僕たちの町に移動してきたっていってた。

 名前も変えているくらいだ。

 きっと他の人にも知られたくない事情があるはず。

 なのに、僕が勝手にスミスさんの場所を教えるわけにはいかないよね。


 勢いよく立ち上がったダミアンさんも、落ち着きを取り戻したように座り直した。


「そうか、そうだな……。あの人は王都に嫌気がさして出て行ったのだからな……」


「お力になれずすみません」


「いや、あんたが謝ることじゃない。あの人が元気にやってることはあの鍋を見ればわかるからな。

 それに、ジェンドさんは当時から百年に一度の天才なんていわれていたが、王都を離れて衰えるどころか、さらに腕が上がってるみたいだしな。俺も怠けてられねえ。あの人に追いつけるようさらに修行をしないと」


 そういうダミアンさんの笑顔は、スミスさんのものによく似た快活な笑みだった。

 もしかしたらダミアンさんは、スミスさんのお弟子さんなのかもしれないね。


「そういや驚きの連続ですっかり忘れてたが、あんたがうちにきた理由を聞いてなかったな」


「実は作ってもらいたいものがあるのですが……」


「おお、なんでもいってくれ。ジェンドさんの知り合いなら最優先で引き受けてやるよ!」


 力強くそういってくれた。

もし面白かったと思っていただけましたら、下の評価欄から評価していただけると嬉しいです!

また感想、レビューなども送れますので、一言でもいいのでもらえると大変励みになります♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました
「横暴幼馴染が勇者の資格を剥奪されたので、奴隷にして再教育してあげることにしました」
https://ncode.syosetu.com/n7380gb/

アーススターノベル様より9/14に書籍版が発売されます!
よろしくお願いします!
i000000
クリックすると特集ページに飛びます
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ