鍛冶屋街にて
カイゼルさんの家を出た僕らは、今度は王都の中央からはずれた場所へと向かっていた。
「このあたりは人間が少ないですね」
ライムが周囲を見ながらつぶやく。
エルも周りを観察しながら楽しそうに話していた。
「ボクもこのあたりに一度きたけど、変わったことをしている人間が多かったよ」
「このあたりは鍛冶師の人が多い地域だからね」
鍛冶は金属を叩く音が屋外にも響くし、熱や煙もすごい。
だからどうしても周囲に影響がない場所に作られやすいんだ。
「鍛冶師っていうと、スミスさんみたいな人のことでしたっけ。真っ赤な金属をガンガン叩いてて楽しそうでした」
ライムが腕を振る真似をしながら楽しそうに話す。
「実はこのあたりは昔スミスさんが働いていたところらしくて、前に教えてもらった場所なんだ」
「鉄って、真っ赤になるまで熱してから軽く叩くと、壊れずに伸びるんだよね。それで色々な物を作るんだから、人間って面白いこと考えるよね」
エルも楽しそうにつぶやく。
「エルもよく知ってるね」
「いっぱい見て回ったからね」
王都についてからしばらく姿が見えなかったんだけど、こんなところまで知ってるなんて、本当に色々なところを見て回っていたんだね。
ちなみに、ドラゴンであるエルから見たら軽く叩いてるように感じるかもしれないけど、鍛冶師の人たちはみんな全力で叩いている。
だからみんなスミスさんみたいに体格の大きな人ばかりになるんだ。
「むー、なんでそこのドラゴンばっかりほめるんですか」
ライムが怒ったように僕の腕に抱きついた。
「わたしだってカインさんにほめられたいです」
「ええっ、そんなこといわれても……。ええと、でもライムも鍛冶師と聞いただけでよくすぐにスミスさんのことを思い出せたね」
いきなりほめてほしいといわれたので無理矢理そんなことをほめてみたいんだけど、ライムはにこーっと笑顔に変わった。
「カインさんと一緒にいったところは全部大切な思い出ですから!」
そういってますます強く抱きついてくる。
そうしていると、反対側の腕にエルが近寄ってきた。
「ライムにそうされると、キミはいつもうれしそうな、恥ずかしそうな、不思議な感情を浮かべてるよね」
「ええっ!?」
そういえばエルは人間の感情がある程度読めるんだっけ。
確かにこうやって抱きつかれるのは慣れてきたとはいえ、今でもすごく恥ずかしいけど……。
「カインさん、わたしに抱きつかれるとうれしいんですか?」
「いや、えっと……」
「わたしもカインさんに抱きつくのがとーってもうれしいんです!!」
そういって抱きつく力をますます強くさせる。
おかげでライムの色々なところが押しつけられてきて、その、なんというか、とても困る状況になっていた。
そんな僕を見てエルが興味深そうにのぞき込んでくる。
「あっ、またその感情が強くなったね。今のキミは人間が交尾を始める前の時に似ているけど」
「カインさん……♪」
ライムがうっとりとした目で僕を見つめてくる。
エルのせいでなんだかややこしいことになってきた……。
そう思っていたら、反対側の腕にエルも抱きついてきた。
「ボクもキミと一緒にいると人間の色々なことを知ることができるから、とても楽しいよ」
「あーっ、なんでドラゴンまで一緒に抱きついてるんですか! カインさんはわたしのものですよ!」
「でもボクがこうするとカレもうれしそうな感情があふれてくるよ」
「カインさん!?」
なぜだか怒られてしまった。
でもエルだってライムに負けないくらいの美少女だ。
そんな子にこうして抱きつかれたら、多少は意識してしまうのは仕方ないと思うんだ。
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