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礼を言うのはこちらのほうだ

 僕は依頼の薬を作るために生命の水が必要なこと、そしてそのために特殊な器が必要なことを説明した。

 カイゼルさんが難しそうな顔でうなる。


「生命の水か……。噂には聞くが、俺でも見たことはないな。そもそも実在するものなのか?」


「エルフの森に存在することはほぼ間違いないです。信頼できる人からその情報を聞きましたので」


 なにしろエルのおじいさん……二千年以上を生きるエルダードラゴンの言葉だからね。

 信頼度は抜群だ。


「そうか。まあカインがいうのならそうなのだろう。それで、俺のところにきた用件はなんだ」


「生命の水を持ち帰るには特殊な器が必要なんです。それを作るためには魔力の豊富な金属が必要なのですが、カイゼルさんになら手配できるのではないかと思いまして」


「魔力が豊富な金属か……。それはたとえばミスリル銀などのことか?」


 ミスリル銀といえば大量の魔力を含むことで知られる金属だ。

 高純度のミスリル銀で作られた武器なら、実体がないゴーストタイプのモンスターにもダメージを与えられるほど。

 それだけのものなら、生命の器の材料としては申し分ない。


「そうですね。それで十分だと思います」


 カイゼルさんもうなずいた。


「わかった。ならすぐに手配させよう」


「ありがとうございます」


 僕がお礼をいうと、カイゼルさんが苦笑した。


「礼をいうのは俺のほうだろう。なにしろ俺の病気を治すための薬なんだからな」


 それは確かにそうだったかも。

 とはいえ僕の無理なお願いを聞いてもらえるのも確かだから、感謝をしないというわけにもいかないし……。

 うーん、難しいね。


「それでミスリル銀の手配にどれくらいかかりそうですか」


「そうだな、三日もあれば平気だろう」


「そんなに早いんですか」


 ミスリル銀は、オリハルコンなどの幻といわれる金属などに比べれば手には入りやすいほうだけど、それでも希少なことに変わりはない。

 そう簡単に手に入るものじゃないはずなんだけど……。


「数は少ないが、俺の商会で扱っている商品でもあるからな。伝手はある」


「そうなんですか。それは助かります」


「それが商売の秘訣だからな。それで物はどこに届ければいい」


 いわれて僕もどこにすればいいか悩んだ。

 なにしろ今は宿がない状態だからね。


「ええっと、それではアルフォードさんのところに届けてもらえますか」


 他に場所がないためそう伝えると、カイゼルさんの目が驚いたように見開いた。


「アルフォードって、もしかして騎士団総長のアルフォードか!?」


 カイゼルさんがこんなに驚くなんて珍しい。

 というか僕の記憶では初めてかもしれない。


「まさか騎士団総長とつながりがあるとはな……。おまえは本当に何者なんだ……?」


「別に普通の冒険者ですけど……」


「普通の冒険者は、騎士団と関わるようなことにはならない。ましてや騎士団総長ともなれば貴族中の貴族。王宮に仕入れをすることのある俺でも会うことは滅多にないぞ」


「僕は本当に偶然知り合っただけでして」


「確かにチャンスというのはたいてい偶然転がり込んでくるものだ。しかしそのチャンスを逃さずモノにできるだけの者が、果たしてどれほどいることか……」


「つまりカインさんはすごいってことですね!」


 僕がほめられたので、ライムが自分のことのように喜んだ。

 カイゼルさんも鷹揚にうなずく。


「そういうことだ。なあカイン、この件が終わったらうちで働かないか?」


「えっ?」


 突然の申し出に驚いてしまった。


「おまえほどの能力ならすぐにでも支店長クラスとして雇ってもいい。どうだ、悪い話ではないはずだが」


「ええと……」


 急な話だったので戸惑ってしまったけど、なんとか考えをまとめる。


「お誘いはうれしいのですが、僕なんかがカイゼルさんのお店で働いても迷惑なだけだと思いますし……。それに、僕は今の生活が性に合ってるんです」


 たくさんのお金はないけれど、なんとか暮らしていける程度には稼げているし、狭いけれど家もある。

 それに、僕の帰りを待っててくれる人がいるからね。


 カイゼルさんの商会は王都でもかなり大きなものだ。

 そこの支店長ともなればきっとかなり忙しいはず。


「だから申し訳ありませんけど……」


「そうか。せっかくのチャンスを俺はものにできなかったわけか。

 まあ無理強いできることではないからな。だが、気が変わったらいつでもいってくれ」


 なんだかものすごく残念がられている。

 そこまで僕のことを買ってくれるのはうれしいけど。僕自身は普通の冒険者だと思うんだけどなあ。

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