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生命の器

 エルのおかげで生命の水を手に入れる方法はなんとかなりそうだった。

 次の問題は、持って帰る方法だ。


「そのまま持ってきたらダメなんですか?」


「生命の水は特殊な容器に入れないと、すぐに魔力を失ってしまうんだ。その状態でも普通の素材よりはるかに高い魔力があるんだけど、今回必要なのは魔力を失っていないほうの水だからね」


「へえ、そうだったんだ」


 エルも驚いている。

 そこまでは知らなかったみたいだね。

 まあ僕らみたいに生命の水なんて必要なかっただろうし。


 いや、そもそも必要ならエルフの森に直接行って手に入れればいいだけだから、持ち帰る必要のほうがなかったのかもしれないね。


「だから、そのために専用の器を作らないといけないんだ」


「じゃあさっそく作りにいきましょう!」


「その前に材料を手に入れないとだね。普通の金属じゃ作れない特別なものだから」


「きんぞくですか? じゃあ山で石探しですか?」


 簡単にいうライムに思わず苦笑してしまった。


「さすがに僕らの手だけで鉱山を掘るのは大変だからね。それよりもせっかく王都にきてるんだから、こっちで買うほうがいいかな」


 もしかしたらライムとエルの力があれば鉱山も簡単に掘れるのかもしれなかったけど、簡単に手に入る方法があるならそのほうがいいよね。




 そういうわけで僕らがやってきたのは、カイゼルさんの家だった。

 カイゼルさんは、元々の依頼である「不老不死の薬」を依頼してきた人だ。

 まあ実際に不老不死の薬なんて作れないから、カイゼルさんの病を治すための薬を作るんだけど。


 かなり大きな商会の会長でもあるため、その家もかなり大きい。

 当然ものすごく忙しいはずなんだけど、僕らの突然の訪問にも関わらず、カイゼルさんは快く中に入れてくれた。


「よお、よくきたな。依頼のほうは順調か」


 カイゼルさんの部屋に通された僕らは、さっそくそんな挨拶を受けた。

 若々しくて、大きな商会の会長とは思えないほど気さくな人だ。


 そういえば千年苔を依頼してきたおじいさんも、高齢とは思えないほど若々しい人だった。

 活力に満ちているというか、すごく元気なんだよね。

 大勢の人を率いる立場にある人っていうのは、みんなそういう特徴があるのかもしれないな。


 もっとも、カイゼルさんはそう見えないだけで、実際はかなり重い病気を患っている。

 このままならあと半年の命といわれている。

 そのために、その病気を治すための薬を作っているところなんだ。


「おかげさまで思ったよりも順調ですね。このままなら意外と早く薬をお渡しできそうです」


「ほう。さすがだな」


 カイゼルさんが興味深そうに身を乗り出してくる。


「てっきり他の連中のように無理だと断りにきたか、期限を延ばしてもらうよう頼みにきたのかと思っていたが。不老不死は無理なのではなかったのか」


「不老不死は無理ですが、カイゼルさんの病気を治す薬なら作れそうなんです」


「まだ依頼してから十日も経っていないのに、もうそこまで目処がついているのか。やはりさすがだな」


「いえ、僕の力ではありません。フィアに協力してもらっているんです」


 フィアはなるべく他の人に見つからないようにしてるから、その名前を出すのは普通なら控えるところだけど。

 でも、カイゼルさんから依頼されているはずだから、むしろ協力してると伝えたほうが話も伝わりやすくていいかなと思う。

 そう思ったんだけど、カイゼルさんは意外そうな反応をした。


「そのフィアっていうのは、カインのとなりにいるキレイな子のことか?」


 そういえばカイゼルさんはライムを知らないんだっけ。


 以前にここに来たときは、もしかしたらライムを探しているかもしれないと思ってライムの姿は隠していた。

 だけど今はその心配がないとわかっているので、ライムも一緒にいる。

 ついでにエルも一緒にきてもらっていた。


 だからカイゼルさんがこの二人を知らないのは不思議じゃない。

 でも、フィアを知らないのは意外だった。

 てっきりフィアはカイゼルさんから依頼を受けたと思っていたんだけど、もしかしたら違ったのかな?


 フィアにまちがえられたライムが不機嫌な顔になる。


「わたしをあんなのと一緒にしないでください。わたしにはライムっていうカインさんからもらった大切な名前があるんです」


「そうか。それはすまなかったな」


 カイゼルさんが快活な笑みを見せる。


「ところで、そちらのショートカットの君の名前も聞いてもいいか?」


「ボク? ボクはエルだよ」


「なるほど、ライムとエルか。それにしても、こんなにキレイな子を二人も連れて歩くなんて、カインもなかなかやるじゃないか」


「よくいわれますけど、別に二人とはそういう関係じゃないというか……」


「そうなんです! わたしとカインさんは夫婦なんですよ!」


「ボクとカインは友達だよ」


 ライムが僕の腕を取るように抱きつき、エルが薄く微笑を浮かべる。


「はははは! まったくうらやましい限りだな!」


 カイゼルさんが楽しそうな笑い声を響かせる。

 ここからどう誤解を解いたらいいのか、僕は心の中で頭を抱えていた。

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