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生命の水

 おじいさんの家を出たあとは、再び王都の中心街へと戻ってきた。


「このあとはどうするんですか? ご飯でも食べますか!?」


「ご飯は食べたばっかりだからまだかなあ」


「そうですか……」


 ライムが少し残念そうにうつむいた。

 練習場外の食堂で食べたばっかりだからね。

 さすがにまだ早いかな。


「次はフィアに頼まれている素材の二つ目、生命の水を探しに行こうと思うんだ」


「せいめいのみず、ですか?」


 ライムが首を傾げる。


「うん、そうだよ。エルフの森にあるといわれている、伝説の水なんだ」


「エルフですか。聞いたことはありますけど、会ったことはないですね」


「ライムでもそうなんだ」


 ライムは僕と出会う前は、自然の中で生きてきた。

 僕でも見たことないようなレアなモンスターとかにも会ってたりするんだけど、さすがにエルフはなかったみたいだ。


「森の中に住んでるとは聞いたことありますけど、どこにいるんでしょう」


「エルフの森にいるといわれてるけど、ほとんど伝説みたいな存在で詳しいことはなにもわかってないんだよね」


「カインさんでもわからないんですね」


「僕も行ったことはないからね。生命の水も、エルフの森にあるといわれているだけで、本当にあるのかどうかは行ってみないとわからないし」


 そもそもエルフの森だってどこにあるのかわからない。

 たぶんここだろうっていわれている地域はあるけど、それでも範囲はかなり広いんだ。


 それでも何年かに一度エルフの森にいったって人が出てくる。


 でもみんな「森で迷っていたら偶然たどり着いた」っていうだけで、正確な場所はわからないんだ。

 その迷ったっていう森もバラバラだし。


 それでも伝説だけは昔からある。

 エルフはみんな高い魔力を持ち、森と共に住み、人間を遙かに越えるほど長命で、美男美女ぞろい。

 そして、そこにある生命の水を口にすると、エルフと同じ魔力が得られるというんだ。


 もっとも、そういわれているだけで、本当にそんな力が手に入るかどうかはわからない。

 持って帰ってきたといわれる生命の水は確かにあるんだけど、それは高い魔力を含んでいる水っていうだけで、どこまで本当かは確認できない。

 もしかしたら、たまたま魔力がたまっただけの水って可能性もある。


 だからこれ以上はなにもわからないんだ。

 自分で手に入れて調べるしかない。

 だからこそ、生命の水は三つの素材の中でもっとも難しいんだ。


 僕がそうライムに話していると、エルが声を上げた。


「それってたしかエルフの森にあるやつだよね」


「えっ、知ってるの」


「ボクは見たことないんだけど、じいちゃんがそんなこといってるのを聞いたことがあったから」


「それじゃあエルフの森も、生命の水も本当にあるってこと?」


「そうだと思うけど、人間は知らないの?」


「僕たちの中ではエルフは伝説の存在みたいなものだよ」


「そうなんだ。昔は人間とエルフの交流もあったってじいちゃんはいってたけど、もうないのかな」


「エルのおじいさんは二千年以上も生きてるっていってたからね。それくらい昔だと、人間とエルフの交流もあったのかもしれないけど」


 それどころか、人間とエルフのあいだで生まれたハーフエルフなんて種族もいたなんていわれているくらいだからね。


 それにしても、エルのおじいさんがいってたってことは、エルフの森に生命の水があるのは間違いないみたいだ。

 それがわかっただけでもだいぶ助かる。

 本当にあるかどうかもわからないものを探すのは大変だからね。


「もしかして、エルフの森がどこにあるかも知ってたりする?」


 ちょっと期待してたずねたんだけど、エルは小さく首を振った。


「場所までは聞いたことないよ。森の中とはいってたけど、ボクもエルフには興味なかったから詳しくは聞かなかったなあ。ごめんね」


 まあエルは人間が大好きだからね。


「エルフの森に生命の水があるってわかっただけでも十分だよ。ありがとう。気にしないで」


「あとでじいちゃんに聞いてこようか?」


「えっ?」


 エルの言葉の意味が最初分からなくて、僕は戸惑ってしまった。


「エルフの森への行き方を知りたいんでしょ。たぶんじいちゃんなら知ってると思うから」


「それはありがたいけど、竜の里まで戻るとなるとかなり遠いんじゃ……」


「人間の足ならそうだけど、飛んでいけばすぐだよ」


 確かにエルの正体はエルダードラゴンだ。

 本来の姿に戻って飛んでいったら、あっという間かもしれない。


 あんまりエルに迷惑をかけたくはなかったけど、行き方がわからなくて困っているのも確かだ。


「えっと、それじゃあお願いしてもいいかな」


「うん、もちろんだよ」


 そういってエルが静かな微笑を浮かべてうなずいた。

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