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ただより高いものはない

「それで、わざわざ護衛を二人も連れてまで儂に会いに来た理由を尋ねてもいいかね」


「ライムに依頼をした人がどんな人なのか見てみたいと思いまして」


 そう答えると、おじいさんは目を細めながらうなずいた。


「ほう、その目で直接確認しようというわけか。それで、その目で見て儂はどう映ったのかな」


「千年苔を必要としているとのことだったので、もしかしたらと思ってたんですけど。やっぱり予想通りでした」


 千年苔は特殊な素材だ。

 それを使った薬となると数は限られる。

 しかも依頼人は高齢のおじいさんということだったから、どういう薬が必要なのかは想像できていた。

 そして実際におじいさんをこの目で見て、僕の想像が正しかったことを確認した。

 

 さっそく持ってきた荷物を下ろすと、テーブルを借りて調合をはじめる。

 乾燥させた千年苔を取り出し、アルフォードさんに頼んで分けてもらったポーションと共に調合する。

 下準備は事前に終えてあったから、調合はすぐに終わった。


「はい、どうぞ。依頼の品は千年苔とのことでしたが、これでいいですか?」


「まさかこの場で調合するとは。ではいただくとしよう」


 受け取ったおじいさんが薬を口に含む。

 すると、驚いたように目を見開いた。


「これは……、全身に力がみなぎってくるのが、素人の儂でもハッキリとわかる。今まで様々な薬を試してきたが、これほどのものは初めてだ。薬の効果は素材の鮮度に左右されるもの。てっきり千年苔はどこかで買い付けてきたのかと思ったが、もしかして、直接採取してきたのか……?」


「ええ、ちょうど別の用事がありましたので、そのついでに手に入れてきました」


「依頼してからほんの数日しか経っていないのだぞ……。それにこれは、まるで儂のために作られたかのような薬だ……。もしかして、はじめから儂のことを知っていたのか?」


「いえ、お会いするのは今日が初めてだと思います。でも千年苔を必要としている人ということである程度は症状が絞れていました。そして今こうして直接会ったことでどこが悪いのかわかりましたから」


「一目見ただけで見抜いたというのか。それに、この素材となっているポーションはどこで?」


「ええっと……」


 さすがにアルフォードさんに頼んで手に入れたなんていったら迷惑がかかっちゃうかな……。


「知人に頼んで手に入れてもらったんです」


「こいつはただのポーションじゃない。表には決して出回らない王家御用達の特別なもの。そいつをあっさりと手に入れ、さらには儂に献上しようというわけか」


 えっ、そうだったんだ。

 そんなにすごいものだとは思わなかった。

 アルフォードさんに薬の調合用にポーションをひとつわけて欲しいって頼んだんだけど。

 あとで改めてお礼を言っておかないといけないな。


「まったく、大した品だよ。やはりカイン殿は評判通りということか。ちなみにこれでいくらなのかね」


「えっと、そうですね……」


 千年苔はアダマンタイマイの甲羅を取るときに一緒に手に入れたものだ。

 だから手間もかかっていない。

 ポーションも貰い物だから、元手はゼロだ。


 なので、実はこの薬を作るのにほとんどお金はかかってないんだよね。

 材料費と、加工の手間賃。

 あとは旅費の足しになる分くらいを加えた金額を提案した。


 それでも普通の薬に比べたら割高になっちゃったけど。

 値段を聞いて、おじいさんはものすごく驚いた。


「そんなに安くていいのか?」


 えっ、僕にとっては結構な大金なんだけど。

 やっぱりこのおじいさんはお金持ちなのかな。


「僕としてはそれで十分です。薬を売って儲けることが目的ではないので」


「なるほど。この世にはただより高い物はないというからな。それでは、儲け以外の見返りとはなんだね」


「ライムがずいぶんよくしてもらったみたいなので。これからも仲良くしれもらえたらと思いまして」


 そういうと周囲がざわついた。

 おじいさんはキョトンするように目を丸くしたあと、急に大声で笑い出した。


「がははははは! 仲良くしよう、ときたか。そいつは断れないな。そこの嬢ちゃんが儂たちとなにをしたのかは聞いているのだろう?」


「え? ええ、まあ……」


 あれ、なんか様子がちょっとおかしいような。

 さっきは僕を襲おうとしたところを止めただけ、っていってたけど……。


「もしかしてライム、なにか失礼なこととかしたの?」


 ライムに直接聞いてみたけど、ニコッと笑顔になるだけだった。


「なにもないです。ちょっと一緒に遊んでもらっただけです」


「がははははは! 嬢ちゃんにまでそういわれては、こっちからいうことはなにもないわな。これからもぜひ儂らと仲良くしてもらえるとありがたい。儂らにできることならなんでもいってくれ。カイン殿には大きな借りができたからな。何かあったら必ず力になると約束しよう」


 差し出されたおじいさんの手を握る。

 意外に強い力に僕は少し驚いた。


 この年でこんなに若々しい手をしてるなんて。

 引退したどこかの商会の会長かなと思ってたけど、もしかしたら僕が思っている以上に偉い人なのかもしれないね。


「ところでライム。本当はなにをしたのか、あとでちゃんと聞かせてね」


「うう……。わかりました……嘘ついてごめんなさい……」


 ライムががっくりとうなだれた。

 僕のために何かをしてくれるのはうれしいけど、危ないことはしてほしくないからね。

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