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納品クエスト

 アルフォードさんは午後から騎士団の仕事があるとのことなので、ご飯を食べたところで分かれることになった。


 そして僕たちは今、王都の中心街から外れた裏道を歩いていた。

 ライムがおじいさんから受けたという、千年苔の納品のために来ているんだ。

 それにしても……。


「なんだかだんだん寂れた雰囲気になってきたけど、本当にここであってるの?」


 不安になってたずねる。


「場所はあってますけど……」


 そう答えながら、不満そうに僕の腕に抱きついた。


「そこのドラゴンも一緒なんですね……」


「一人であちこち探検してたから、今度はキミたちと一緒に探検しようと思って」


「せっかくカインさんと二人きりでお出かけできると思ったのに」


「まあまあ、たまにはみんなでいくのも悪くないでしょ」


「たまにはというか……この街に来てからカインさんと二人きりになることってほとんどない気がします……」


 そうだっけ?

 そういわれればそうな気もするかな……?


 そんな感じでしばらく歩いていると、とある家の前で立ち止まった。


「ここですー」


 ライムが扉を開く。

 中は普通の家だったけど、入った瞬間、家の中にいた男の人たちがライムに向けて一斉に頭を下げた。


「「「ライム姐さん、ちーっす!」」」


「……えっ、なにこれ? どうしたの?」


「わ、わたしもわからないです」


 驚いた僕だったけど、ライムも困惑した様子だった。

 エルだけが面白そうに微笑を浮かべている。


「ここの人間はみんなライムに恐怖と尊敬を感じているね」


 尊敬はともかく、恐怖?


「なにしたの?」


「うーん、大したことはしてないです。カインさんを傷つけようとしていたので、そんなことはしないように止めただけです」


 ええっ、そんなことあったの?

 なんで僕が狙われてたんだろう。


「それについては誤解というか、手違いがあったのだよ」


 奥の部屋からおじいさんがやってきた。

 見たところ年齢はかなり高そうだったけど、その割には声や足腰もしっかりしている。

 それに妙に堂々としているというか、貫禄もあった。

 もしかしたらかなり偉い人なのかもしれないね。


「部下が勘違いしたようでな。申し訳ないことをした」


 そういって頭を下げた。

 僕が狙われる理由なんてわからないし、確かに勘違いなんだろうけど。


「カイン殿にはもう手を出さないよう部下にはいってある。同じ間違いはもう起きないだろう」


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」


 また周りの人たちが一斉に頭を下げた。

 そういえば一人変わった剣を持ってる人がいるけど、どこかで見たことがある気がする。

 誰だっけなあ。思い出せそうで思い出せない。


 まあ思い出せないものはしょうがない。

 それよりも、あのおじいさんはもしかして……。


「もしかして、あなたがライムに千年苔を依頼した方ですか?」


「そうだ。その様子だともう見つけてきたようだな」


 やっぱり予想通りだったみたいだ。

 もっとも、おじいさんの方は少し意外そうにしていた。


「てっきりお嬢さんが持ってくるものと思っていたが、まさか本人が姿を現すとは予想しなかったな」


 そういって、それからエルにも目を向けた。


「そちらもかわいらしいお嬢さんだが……。まさかこれほどの手練れを二人も抱えているとはな」


 そうつぶやく声は、かすかにだけど震えているような気がした。

 なんとなく汗もかいているように見える。

 ここは暑くもないし、汗をかく気温じゃないと思うんだけど。

 千年苔を依頼するくらいだし、やっぱりどこか体が悪いのかな?


 エルも不思議そうにおじいさんを見ていた。


「ボクとは初対面だと思うけど、どうしてそんなに怯えてるの?」


「……ふふふ、怯える、か。ずいぶん目がいいようだな。今では信じない者も多いが、儂がこの年まで生き長らえてこれたのは、臆病だったからなのだよ。だからお嬢さんのような者を見ると、どうしても怖くなってしまうのだ。気を悪くしたらすまないな」


 エルの見た目は、ボーイッシュな普通のかわいい女の子だ。

 その姿を見て怯えるなんて普通はないはず。


 もしかしておじいさんは、エルの正体に気が付いているのかも。

 さすがにドラゴンだってことまではわからないと思うけど、普通とは違うものを感じているのかもしれないね。


 アルフォードさんも、エルに最初に会ったときにただ者ではないのは感じていたみたいだし。

 やっぱりわかる人にはわかるものなのかなあ。

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