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世界最強決定戦

 エルとの訓練を終えたアルフォードさんは、完全に疲労困憊だった。

 床に倒れこそしないものの、全身汗だくで座り込んでいる。


「いやまったく、カイン君の回りはすごいな……。今日の半日だけで、十年分の修行をした気がするよ……」


「お疲れさまです」


 アルフォードさんの気持ちもよくわかったので、僕は心からそう言った。

 きっと僕だったら開始早々に倒れていたはず。

 それくらい激しい訓練だったからね。


「これをどうぞ」


「ああ、すまない」


 用意しておいた水筒を渡すと、アルフォードさんが勢いよく飲みだした。

 一気に中身を飲み干して、空になった水筒を僕に戻してきた。


「ありがとう。体に染み渡る。これは、ただの水じゃないのか」


「普通の水じゃなくて、体力が回復する薬効を持たせてあります。疲れた体にもよく効くはずです」


「そいつはありがたい。しばらくは疲労で動けそうにないからな」


 座り込んだまま苦笑する。

 ずいぶん疲れているのは本当みたいだったけど、それだけ身のある訓練だったってことだよね。

 それはとてもよかったと思う。


 それにしても……。

 僕はエルの方を向いた。

 今はもう女の子の姿に戻っている。


「もしかしてエル、前より強くなってるんじゃない?」


「そういえばじいちゃんから竜の里を受け継いだときに、今までになかった力が流れ込んできたような感じがしたんだよね。もしかしたらそれでかなあ」


 不思議そうにつぶやくエルに、ライムが顔をしかめた。


「むっ、そんなドラゴンより私の方が強いんですからね。カインさんをお守りするのは私の仕事ですよ!」


 ライムが対抗意識を燃やしている。

 そんなライムに対して、エルが口を開く。


 エルは好奇心が旺盛だ。

 それは人間生活に対してだけじゃなく、その他のことに対してもそうなんだ。

 色々なことに対して興味を持ち、それを知りたいと思う気持ちが強い。


 だからきっと悪気はなかったんだと思う。

 エルがいつも通りの口調でその言葉を口にした。



「じゃあどっちが強いか試してみる?」



 ライムの顔から表情が消えた。


「……いいでしょう。どちらが上かちゃんと教えてあげないといけませんからね」


「前はボクが悪かったとはいえ、一度ライムに負けてるよね。実はあれ、ちょっとだけ……ムカついてたんだ」


 そういって二人が歩きはじめる。

 ゆっくりと、自然な様子で、まっすぐに距離が詰められていく。

 ただそれだけのはずなのに、なぜだか近寄ることさえできない異様な迫力が周囲に満ちていた。


 本気になった二人を前にして、僕もアルフォードさんもなにもできなかった。

 僕らが百人いたって本気になった二人を止めることはできない。

 できることは、見守ることだけ。


「あの、二人とも、ケガだけはしないように気をつけてね……」


「「わかりました」」


 二人の声が重なった瞬間、戦いがはじまった。




 ここでの訓練は非公開だったため他の誰にも見られてはいなかったんだけど、その音と振動はかなり遠くにまで聞こえていたみたいだった。

 そのせいで、訓練が終わったあと「大地割りのアルフォード」とか「アースクラッシャー」とか呼ばれるようになったとアルフォードさんが嘆いていた。

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