対ライム戦闘
駆けだしたアルフォードさんの剣がライムへと迫る。
伸ばしたライムの手がそれを受け止めたけど、勢いを殺しきれなかったのかそのまま後ろへ弾き飛ばされた。
ドラゴンの一撃ですら受け止められるライムを押しのけるなんて。
アルフォードさんがその場で立ち止まり、剣をおろす。
「これでも王都騎士団を率いる身なんだ。侮ってもらっては困るな」
アルフォードさんの言葉に、僕は自分の行いを恥じた。
ライムのせいでアルフォードさんがケガをするんじゃないかと思ってしまった。
アルフォードさんを弱いと思っていたんだ。
「申し訳ありませんアルフォードさん。王都騎士団総長様に失礼な態度を取ってしまいました」
「いやなに、私も年甲斐もなく取り乱してしまってすまない。しかしこれでも武人の端くれ。強い者と戦えると気持ちが高ぶってしまうのでね。今は騎士でもなんでもない、一人の戦士と思ってほしい」
そういってくれたのは、きっとアルフォードさんの優しさだろう。
身分を気にせず思いっきり戦ってほしいという気持ちの表れだ。
「ライム、やっぱり本気で戦ってほしい」
「いいんですか?」
ライムは純粋に疑問だから聞いたんだろう。
本気で戦ったら、もしかしたらケガだけではすまないかもしれないから。
でもその言葉はきっと、長い間訓練を積んできた騎士にとってはひどい侮辱になるかもしれないんだ。
だから僕はうなずいた。
「もちろんだよ。あ、でも、ケガはしないようにしてもらえると僕も安心できるけど……」
いくら侮辱になるからとはいえ、やっぱり危ないことはしてほしくないからね。
「つまりケガをしないように本気で戦えばいいんですね」
「まあ、言葉にすればそうかな……」
そんなに簡単なことじゃないと思うけど……。
「わかりました。任せてください!」
ライムが笑みを輝かせる。
そしてアルフォードさんの方を向いた。
その瞬間。
「……ッ!!」
アルフォードさんが顔色を変えて真後ろへと飛んだ。
同時に鎧や盾にいくつもの亀裂が走り、切り刻まれて地面に落ちていく。
アルフォードさんの足が地面に着いた頃には、装備品は手に持った剣だけになっていた。
「あれっ」
ライムが驚いたように声を上げる。
「剣も壊したつもりだったんですけど、よけられちゃいました」
「はは……。やはりライム君はすごいな……。かなり強力な加護魔法をかけたつもりだったんだが、これでも紙くず同然か……」
アルフォードさんが剣を構えたまま、冷や汗を垂らしてつぶやいた。
どうやら装備を壊したのはライムみたいだ。
といっても僕にはなにも見えなかったんだけど。
ライムはアルフォードさんの方を向いたまま立っているだけに見える。
動いてるものといえば、風もないのに揺れている髪くらいだ。
他にはなにも動いてないように見える。
あんな状態でどうやって攻撃したのかまったくわからない。
僕なんかがとても付いていけるレベルじゃなかった。
「それじゃあ次はもうちょっとだけ本気でいきますね」
ライムの言葉に、アルフォードさんが珍しく好戦的な笑みを浮かべた。
「ああ。望むところだ!」
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