訓練場
アルフォードさんの家で朝食を食べたあとは、アルフォードさんの案内で騎士団の訓練場へとやってきた。
石造りの大きな建物で、中もかなり広い。
百人くらいなら楽に入れそうだ。
壁も城壁みたいな石積みで作られているから、ちょっとやそっとじゃ壊れないだろうし、本当に訓練のために造られた建物って感じだ。
騎士団全員で一斉に訓練できるようになっているのかもしれないね。
もっとも、今はその広い訓練場に僕らしかいないんだけど。
案内してくれたアルフォードさんに、僕とライムとエルの四人だけだ。
アルフォードさんの訓練のためにライムが相手をすることになったんだけど、それを他に人にまで見られるのはあまりよくないからね。
アルフォードさんが気を利かせて貸しきりにしてくれたんだ。
「今日は私のわがままに付き合ってもらってすまないな」
訓練用の武具をつけたアルフォードさんがすまなそうにそういった。
「いえ、いつもお世話になっていますから、これくらいなら構わないですよ」
実際部屋を貸してもらっただけではなく、その前にも何度かお世話になっている。
むしろなんのお返しもできていなかったから、それができてうれしいくらいだ。
「ドラゴンスレイヤーの称号を得たものの、それは私の実力によるものではない。私自身はまだまだ実力不足だからな。一度鍛え直したいと思っていたところなのだよ」
実際にドラゴンを倒したのはライムだ。
でもライムが倒したってことになると色々と騒ぎになる気がしたから、アルフォードさんに倒したことにしてもらったんだ。
そのおかげで「ドラゴンスレイヤー」の称号を叙勲されたみたいなんだよね。
でもそれはアルフォードさんの力によるものではない。
だから本人は認めていないみたいなんだ。
たとえ倒していなくても、部下を逃がすためにたった一人で立ち向かったことは本当なんだから、そこまで気にしなくてもいいと僕は思っているんだけど。
でもアルフォードさんはそう思っていないみたいなんだ。
その真面目なところがいかにも騎士団総長のアルフォードさんらしいといえばそうなんだけど、
「そういうわけなんだけど、ライム頼めるかな」
「わかりました!」
ライムが勢いよくうなずいてくれた。
「ライム君の実力は知っている。私も全力を出すため、本気でかかってきてほしい」
「……カインさん?」
ライムが僕を振り返って首を傾げた。
本当に本気で戦ってもいいんですか、という意味だろう。
もちろん本気で戦うべきなんだと思う。
でもライムが本当に本気で戦ったら、いくらアルフォードさんといえども無事ではすまないんじゃないかな……。
「えっと、ケガをさせない程度にがんばってね」
「わかりました」
ライムの軽快な返事に、アルフォードさんが苦笑を浮かべる。
「ケガをしない程度に、か。ならばこちらも気をつけなければいけないかな」
そういうと、口の中で何かをつぶやく。
急にその体が光に包まれた。
これはまさか、身体能力向上の魔法?
しかも体だけじゃなく、剣とか鎧とかも白く光り輝いている。
肉体だけでなく、武具強化の魔法まで使えるなんて。
そんなことは、騎士としてだけじゃなく、魔法使いとしても訓練していなければできないはず。
本当に相当訓練しているんだろう。
「いくぞっ!」
駆けだしたアルフォードさんの動きが僕には見えなかった。
一瞬にしてライムの正面に現れると、その勢いのまま振り下ろした剣がライムへと迫った。
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